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インフルエンサーマーケティングの効果と注意点

  • インフルエンサーとインフルエンサーマーケティング

 昨今、“インフルエンサー”という言葉をよく聞くようになったと思います。語源の「influence」の通り大きな影響力を持つ人たちを指す言葉で、彼ら彼女らは主にYouTubeInstagramTwitter等のSNS等インターネットを主な活動領域としています。

多くの人の目に触れる動画やSNS上の投稿を通して、インフルエンサーが気に入った、あるいは愛用している製品・サービスを周知する効果が期待できるため、彼らの力をマーケティングに活用する企業も今や珍しくありません。企業による、インフルエンサーを活用したマーケティングを、“インフルエンサーマーケティング”と呼びます。

 

  • インフルエンサーマーケティングとその効果

 

 インフルエンサーマーケティングとは、企業の依頼を受けた “インフルエンサー”が、製品・サービスに関してSNS上のポジティブな投稿を行い、それを見たユーザーの消費行動に影響を与えることを目的とした手法です。

具体的な例として、写真の投稿をメインとするInstagramにおける、アパレル商品や化粧品等を使用・着用した写真を投稿の投稿等が挙げられます。一方で動画の投稿を主体とするYouTubeでは「〇〇社の新製品○○を使ってみた!」というような使用・レビューを中心とした動画が中心となっており、双方を活用するインフルエンサーも数多く存在します。

彼らの活動により期待できる効果は主に以下の3つです。

 

1)製品・サービスの認知

 最も多い活用例が、「製品・サービスの認知」です。具体的に言うと、販促対象となる製品・サービスをインフルエンサーに利用してもらい、使用感や気に入ったかどうか、といった点を口コミのような形でInstagramYouTube等に投稿してもらいます。

 フォロワー数の多いインフルエンサーの投稿であれば、単純にそれだけ多くの人の目に留まりますし、SNSにおける「拡散」効果も見込めることから、製品・サービスの認知という面において効果が見込めます。

 

(2)検討から購入への「後押し」

 製品・サービスの購入を検討する消費者に対して、その後押しをする効果も見込めます。SNS利用者のボリューム層である若年層にとって、製品・サービスの購入前にインターネット上で“口コミ”や評判の検索を行うことは珍しくなく、製品・サービス購入の目安となることも多々あります。そこで、知名度のある芸能人等や “インスタグラマー”、あるいは製品・サービスが該当する分野の専門家など、影響力・発信力を持つインフルエンサーにポジティブな口コミ・レビューを投稿してもらうことで、製品・サービスの購入を検討している潜在的消費者に対してアプローチすることができます。 

 

(3)新たな導線の確保による「購入数の上昇」

 (2)の内容とも少し重なりますが、3つ目の効果は「購入数の上昇」です。ここで申し上げたいのは単純に「インフルエンサーによるプロモーション=購入数の上昇」というようなことではなく、主にEC等の領域において顧客に新たな導線を提供できるということです。

 具体例を挙げると、ある化粧品のプロモーションを行うインフルエンサーが、その化粧品を使用する前と後の変化を写真として投稿した際に、ECにおけるその商品の購入ページへのリンクを貼ることができます。投稿を見て購入意欲の高まったユーザーは、そのリンクを介して1クリックで紹介された商品を購入することができます。

 インフルエンサーたちの主な活動領域がインターネットであるため、このように主にECの領域において新たな導線を確保することが可能となります。

 要約すると、効果的にインフルエンサーを活用すれば、製品・サービスの認知だけでなく、潜在的消費者へ購入を「後押し」することが可能で、新たな顧客導線も確保できるということになります。

 

  • インフルエンサー活用によるメリット

 上で述べた効果とは別に、インフルエンサーを起用すべきと考えられる理由もあります。

 

(1)ターゲット層に効果的にアプローチできる

 ほとんどの場合、インフルエンサーは(例えば「美容」「ファッション」というような)特定の分野についての活動・情報発信を行っております。インフルエンサーのフォロワーは、多くの場合インフルエンサーが活動する分野について関心の高い層であることが多いため、ターゲット層として想定される人々に効果的に情報発信が可能となるのです。

例えば、化粧品やメイクの方法について情報発信を行うインフルエンサーがいれば、当然そのフォロワーも化粧品やメイクといった分野に関心の高い層である可能性が高くなります。したがって、そのインフルエンサーがとある化粧品について情報発信を行えば、化粧品に関心の高い層を対象に情報発信が行える、ということになります。これらは所謂オールドメディアにおける広告とは明確に差別化できる点であり、インフルエンサーの活用により見込めるメリットの一つです。

 

(2)インターネット広告を嫌う消費者をターゲットにできる

 

 スマートフォンを使う人なら、もはや見ない日はないと言ってよいインターネット広告ですが、少なくともSNS上の広告は若年層に評判があまりよくありません。上記のデータで、インターネットやSNS上の「不快」「しつこい」等の評判も少なくありません。

 一方で、一部の業界では「インフルエンサーの言葉は親友の言葉に匹敵する」とも言われています。これは誇張した表現であるとしても、実際にSNS上で活動しているインフルエンサーは、従来の宣伝主体であった企業と比べてユーザーとの距離が近く、信頼関係を築き上げていることもあります。したがって、ユーザーはインフルエンサーの意見をより身近で信頼のできるものと考え、結果的に効果的なプロモーション足りえるのです。

 

  • インフルエンサー市場の拡大

  上記したようにインフルエンサーをうまく活用できれば様々な効果やメリットを享受可能であり、実際にその市場規模は拡大しています。

 デジタルインファクトの調査によれば、インフルエンサー全体の市場規模は2025年度に720億円に到達する見込みであり、Instagramだけに絞っても185億円に上ると予測されています。「インフルエンサー」という言葉そのものが使われ出したのが2007年ごろといわれており、わずか20年足らずで700億円を超える市場へと成長したのです。

 また、定性的な面からもこの市場が拡大すると考えられます。現在インフルエンサーの影響が及ぶ範囲は、インターネット(特にSNS)を頻繁に活用する、“デジタルネイティブ世代”に限定されます。“デジタルネイティブ”の割合は時間の経過とともに増加していきますので、長期的に見てインフルエンサーの影響力は大きくなると推測できます。

 将来的には、製品・サービスのプロモーションにおけるメインストリーム、とまではいかずとも、かなり有力な手段の一つとなる可能性があると考えられます。

 

  • 注意点・インフルエンサー選定のポイント

 

 ここまではインフルエンサーを活用することによる効果やメリットについて述べてきました。実際、有効に活用すれば非常に効果的なマーケティング施策となりうるインフルエンサーマーケティングですが、当然活用にあたって注意すべき点も多くあります。

 例えば、上で述べた「ターゲット層に効果的にアプローチできる」というのは大きなメリットの一つですが、それはプロモーションしたい製品・サービスとマッチしたインフルエンサーを選定した場合に限られます。また、インフルエンサーによる情報発信が消費者に「ステルスマーケティング」だと受け取られる、選定し契約したインフルエンサーが事件や不祥事等イメージダウンにつながる行いをする、等が原因で、所謂「炎上」につながる可能性もあります。

 以上のようなリスクを避け、マーケティングを効果的なものにするために重要なポイントは以下の通りです。

 

(1)最適なインフルエンサーの選定

 フォロワーが多い・すでに名の知れたインフルエンサーである=その製品にとって適したインフルエンサーとは限りません。どのようなフォロワーがいて普段はどのような投稿・活動を行っているのか、どのようなイメージを世間にもたれているのか、しっかりとしたリテラシーのある人間か、といった点を明確に確認する必要があります。もちろん、前提としてプロモーションする製品・サービスを愛用しているまたは気に入っているという点は欠かせません。

 

(2)活動に関するルールの設定

 インフルエンサーに限った点ではありませんが、ビジネス上の契約を結ぶ以上、明確にその活動内容を設定しておく必要があります。反社会的行動や、製品、及びその製造企業のイメージを損なうようなことを禁ずるのはもちろんですが、どの程度の裁量を与えるのか、といった点も明確にしておかなくてはなりません。ビジネスを行う上では当然のルールですが、インフルエンサーの強みはその「影響力・発信力」であるがゆえに、ちょっとした食い違いから望まない情報がSNSを通して世間に発信され、製品や企業のイメージを大きく損なうリスクもあります。

 

  • まとめ

 本記事では、インフルエンサーを活用したマーケティングやその効果・メリット、そして運用上の注意点について解説しました。

 「どの業界・業態でもインフルエンサーは活用できる!」というわけではありませんが、適切な運用を実施すれば、効果的なマーケティングを実施することができます。実際にインフルエンサーを活用する企業は年々増加しており、今ではインフルエンサーとして活動したい個人と、インフルエンサーを探す企業のマッチングを行うサービス等も展開されています。昨今主流となりつつあるECや、withコロナにより自宅で過ごす時間が増加したこと等もインフルエンサーマーケティングにとっては追い風になったといえます。一方で、運用を一歩間違えれば製品・企業のイメージを大きく損なうリスクも抱えており、適切なルールの設定が求められると考えます。

 今後、新たなマーケティング施策を導入したいと考える企業や、特定のターゲット層に対して効果的な情報発信を行いたい企業・店舗などにとって、インフルエンサーマーケティングが最適解となるかもしれません。ぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

【参考文献】

 

Insta Lab(2021)「インフルエンサーマーケティングとは? 基礎から応用まで5分で理解!」 

ウェブ部(2021)「インフルエンサーマーケティングの基本とWebにおける役割」

DENTSU TEC(2021)「ニューノーマル時代に加速するこれからの売上拡大手法『インフルエンサーコマース』成功のコツとは?」

AMBI(2021)「2025年には「720億円」市場に。インフルエンサーマーケティング関連企業の躍進」

LMND(2019)「ビューティー業界のインフルエンサーマーケティングにおける6つのトレンド」

visumo(2021)「インフルエンサーの意味とは? 定義やマーケティングに起用するメリットなどを解説」

web担当者Forum(2019)「ネット広告への強い嫌悪感、テレビや新聞の倍以上に。『しつこい』『邪魔』が3割超【JIAA調べ】」

 

高田匠唯

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト

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