RPAは日本市場に表れてから、数年もたっています。最初は金融業界などに活躍することが多かったが、普及になった今、多様な業界で活用されています。近年、製造業でもRPAを導入している事例が多く、しかも財務会計、人事などの業務のみならず、生産管理周りで活用する事例も増えています。以前のコラムでは、インターネット会社、不動産会社などの活用事例を紹介していましたが、今回は製造業の活用事例を紹介していきます。
今回紹介する企業は機械メーカーのA社で、従業員規模は500~1000人程度です。あるグループに所属しているが、A社は主に機械、及び各種機械の部品などを生産している工場です。今回は主に生産管理周りの活用事例を紹介していきます
A社が生産活動に使用されている各種部品は数万種類あります。これらの部品のほとんどが外部から仕入れています。そして、生産活動が正常に行えるように、部品の在庫数と生産計画のバランスをうまく管理する必要があります。部品在庫は生産活動の需要に満たさないと、部品の欠品となってしまい、最悪の場合生産ラインが止まることに陥ってしまいます。とは言え、あまりにも大量に抱えてしまったら、保管するにはスペースも必要ですし、管理コストもあがるので、それも好ましいことではないでしょう。簡単にいうと、部品在庫と生産の「受給バランス」を管理する必要があります。
では、A社はどのように管理しているかを紹介していきます。A社は自社の部品在庫管理システムがあるが、基本的に生産計画の需要に応じて各仕入先に自動発注、あるいは発注の担当者よりマニュアル発注が可能です。そして入荷したら、検品などもシステム上に反映します。ここまでは一般的な流れだが、問題は仕入先が納期通り納品できないことが多発しています。特に直近半導体関連の部品だと、納期がそもそも読めないケースが多く、生産に大きく影響をしています。その対策として、各担当者が各仕入先に納期回答を依頼して、仮に正常に納期できない場合、できるだけ精確な納品可能期日を仕入れ先からもらおうとしています。回答形式はExcelファイルになるが、各メーカーの回答結果を集めて整理し、システムに入力します。これによって、納期が遅れそうな部品があったら完全とはいえ、あらかじめ生産計画を調整するなどができるようになります。
納期回答依頼がすべて手作業で行っているが、部品の種類が多く、作業量が多いため、担当者の負担がとても大きいです。簡単にまとめると、マニュアル作業の流れは下記のようになります:
上記6つのステップがあり、特に「⑥回答結果をシステムに入力」の部品、データが普通に数千~万行があるため、時間がとてもかかります。また、「③「未納品リスト」を仕入先ごとに分割」と「④各仕入先にメール送付をし、回答を依頼」の部分、仕入先が数百あるため、手作業で分割、ファイル名変更、メール送付でもとても時間かかります。そのため、本来なら毎月4回回答依頼を行いたいが、一手不足で現在は月1回にとどまっている状況です。それでも毎月は150時間ほど本業務に取られています。
本業務を訳すと、つまり「システムからファイル出力」、「編集してメール送信」、「結果集計してシステム入力」という3つの段階に分けられますが、いずれもとてもRPAが得意する領域になります。また、大量重複業務であるため、それなりの効果が出ます。業務自体がRPAにとても向いているため、RPA化後のフローはほぼそのままになります:
上記のうち「⑦担当者が処理不能項目を手作業で対応」のみ手作業が必要だが、その理由としては、仕入れ先の回答がきちんとフォーマ通りになっていない場合、RPAが処理できないからです。A社のシステムに「納入品予定」を入力する際に(⑧)「2021/11/01」のようなフォーマットしか入力できないが、仕入れ先によって「11月1日」など漢字が入ったり、「2021/11/01」のように全角になったりする場合が発生するので、システムにそもそも入力できないです。もちろんRPAがそれを正しい形式に変換してシステム入力することも可能だが、すべて対応するにはパターンが多く、開発難易度が高い分、実際の量はそこまで多いわけではないので、イレギュラーを抽出して、手作業で対応することが一番コスパがよいと判断しました。
RPA化により、毎月150時間の業務が10時間以内に収まることができました。また、もともと月1回の業務が毎週行えるようになり、もともとこれを手作業で行うとしたら毎月600時間が必要になるでしょう。さらに、毎週行うことにより回答の実効性が大きく向上し、生産管理の効率もよくなりました。とても成功する事例ともいえるでしょう。
上記の事例は部品の仕入れ管理でしたが、人事、経理など一般的なバックアップオフィス業務以外、他にもRPA活躍できる製造業だけの業務はたくさんあります。例として:
上記のように、生産管理周りで、特にシステム操作が多い部分に対して、RPAが活躍できるところはとても多いでしょう。特に製造に必要な部品がとても多い機械メーカーや電子機器メーカーにとって、システム操作からある程度解放できるだけでとても大きい効率化になるでしょう。
今回はRPAが製造業における活用事例を紹介しました。製造業で導入検討中の企業さんにとって、少しでも参考になれれば幸いです。今後はまた他業界の事例も紹介していきたいと考えています。
アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
2016年上智大学大学院経営学部卒業、大手量販店入社。2018年当社入社、Consulting & Solution事業部にて戦略コンサルティング案件、BRP、RPAを始めた業務改善に伴うITコンサルティングなど、豊富な実績を有する。社内効率化のために、最適なソリューションをご提案いたします。