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【初めての方へ】BtoBのSNSマーケティング(ツール選定までの流れ)

はじめに

 

最近SNS上の企業アカウントによる投稿で話題になることが多い気がします。スマホの普及やテレビ離れなどが要因となり、SNSも企業にとっての重要なマーケティング手法となっていることも大きいでしょう。

しかしながら私たちがプライベートのSNSで目にする多くの企業がBtoC企業であり、BtoB企業はあまり見かけません。

 ではBtoB企業にはSNSマーケティンは不向きなのでしょうか。私はそうは思いません。高額な商材の検討で意思決定の場面で有利になるのが、その商材が持っているブランド力であり、そのブランド力をSNSマーケティングによって高められるからです。テレビで見かけるBtoB企業のCMも、検討プロセスの中で「CMで見かけるあの会社だから」「CMを出しているような会社だから安心だろう」という判断を促すことを期待したブランディングと言えます。

日本にある多くのBtoB企業がSNSマーケティングに踏み出せずにいると思います。今回はこうしたBtoB企業のSNSマーケティングについて、SNS選定までの基本的な考え方・流れをを紹介したいと思います。

 

SNS選定までの流れ

 SNSマーケティングにおけるSNS選定までの流れは、運用目的の設定、ターゲット選定、SNS選定の順で進めていきます。実際に運用するまでの地味な段階ですが、重要な部分になりますので、運用の目的から1つずつ説明していきます。

 

①運用目的の設定

 

 一般的に、BtoBのビジネスでは、1顧客あたりの購入単価がBtoCよりも高額であることが多いです。そのため経済合理性の観点で論理的に購買を決定する必要があり、検討期間は長く、決裁フローも複雑になります。多くの場合は営業担当者の訪問、提案など受け、社内の複数人の決裁者からの承認を得てようやく契約が結ばれるため、商材によっては、検討から契約まで数年間かかることもあります。

 こうしたビジネス環境で、目的があいまいなままSNSの運用を開始してしまうと訴求効果が低くなったり、潜在ニーズの低い層を狙ってしまうことになったりしてしまいます。十分な成果を得るためにも、まずは目的を定めるところから始めるのが鉄則となります。特にBtoBにおいては、上述の通り、検討から契約・購入までが長期間になるため、長期的な観点での目的設定が大切になります。

 通常SNSマーケティングの目的としては、以下の5つが挙げられることが多いです。

 

 

 設定する目的はもちろん複数でもいいですが、運用し始めてから十分な成果が得られるように、自社の状況や課題を踏まえて適切な目的を選び設定しましょう。

 

②ターゲット選定

 

 運用の目的を設定したら、次はターゲットを選定します。自社の商品・サービスにあった適切なターゲットを選定し運用することで、訴求効果を高めることができます。

 BtoBにおいては、事業の顧客は自体は企業ですが、SNS運用の際には顧客の部署、部門などを検討し、発信することになります。そのため、ターゲットとなるのは企業ではなく、その企業に所属する企業内個人となります。

ターゲットが個人ということはBtoC同様、個人の行動を意識した運用が効果的になるので、ターゲット層が見えてきたら、ペルソナを設定します。「会社の新規の会計ソフトを検討していて、できるだけ操作が簡単なものを求めている経理部20代若手社員」などなるべく具体的に設定し、ペルソナの行動を意識したコンテンツを配信できるようにします。既に他のマーケティング施策でペルソナが設定されている場合はそれをSNS運用においても設定するといいでしょう。

 

③運用するSNS選び

 

 目的・ターゲットを設定したら今度はそれに合わせたSNSを選択します。機能やユーザー層を考慮して選択する必要があるので、各SNSについて知ることが大切です。まずはユーザーの年齢層についてみていきましょう。

 以下は日本国内での主要SNSの年代別ユーザー数のグラフです。

 

 LINEはすべての年代でトップとなっており、利用率は他のものと比べても圧倒的に高くなっています。また高年齢層においても利用率が6割を超えています。TwitterInstagramは、20代で8割弱の利用率を誇るが、年齢が上がるにつれ急激に利用率が下がり、60代ではFacebookに逆転されています。TikTokは10代で一定数のユーザーはいるものの、30代以上だと1桁台に留まっています。

 

Facebook

 他のSNSと比較するとビジネスでのつながりを目的とする人が多いSNSです。Facebookでの投稿内容は、繋がっている人にも表示され、また実名顔出しという点で、タイムライン上も堅実な人が多い傾向にあり、ビジネス関連の投稿をメインとして投稿する人もいます。SNSマーケティングとしてFacebookを利用している企業も多く、ベンチマークとして参考にしやすいため、初めての運用にも向いています。高い年代でも一定数の利用率を誇っており、ビジネス投稿も多いことを踏まえると、とっつきにくいビジネス関連のコンテンツでも受け入れられやすいSNSと言えるでしょう。職業やエリアでターゲティングして配信したり、サイトを訪問した人にリターゲティングしたりすることも可能となっていて、自社名や商品・サービスを何度も見せることによる認知獲得や想起などが期待できます。

 

Twitter

 匿名で利用する人が多く、投稿の内容もプライベートの内容が多いですが、一部本名、社名を公開してビジネス用途利用している人もいます。BtoB企業としてアカウントを運用する場合は、本名・職種・社名など、ビジネス関連の情報を公開して利用している人を意識した発信をするといいでしょう。また拡散力が強いSNSであり、ユーモアを交えた投稿でタイムラインを賑わせるなど、いわゆる“バズる”企業も多く、ネットニュース等にも取り上げられることもあるほどです。そのためうまく運用すれば、認知獲得、想起などに繋がりやすいと言えるでしょう。140字の字数制限によって短文での投稿になるため、たくさんの情報は載せられませんが、納めることができれば、短時間で情報が伝わりやすいのも特徴です。

 

Instagram

 写真や動画などを用いた投稿が前提となるSNSで、24時間で消える「ストーリーズ」という機能が人気となっています。商品のビジュアルに特徴がある場合など、写真や動画での紹介がとても有効です。自社の価値観や世界観など、文字では表現しにくいことも、伝わりやすく、ブランディングにも向いています。

 

TikTok

 TikTokは近年メジャーになってきたSNSですが、メインユーザーが10代と若く、若者をターゲットにしたBtoC以外ではビジネスに向いていません。

 

LINE

 利用者が最も多く年代層も偏っていないSNSであるが、基本的に店舗、飲食店をターゲットとした機能(クーポン、くじなど)が多くなっている。運用するとしても、ユーザーが公式アカウントを追加する必要があるため、元々興味を持ってくれている人やキャンペーンの参加者をターゲットにしますが、性質上キャンペーンがしづらいBtoB企業にとっては使いづらい印象です。

 

LinkedIn

 これまで紹介したSNSは、どれもプライベートユーザーがほとんどで、BtoB企業にとってはマーケティングしにくいと思うかもしれません。そんなBtoB企業の見込み客開拓におすすめなのがLinkedInです。

 国内ユーザーはいまだ200万人ながら、世界では7億人のユーザーを抱えるビジネスに特化したSNSで、実名・顔出しによる信頼性の高さも特徴となっています。勤務先や自身のキャリアなどを登録し、会社のページも作ることができるため、認知獲得や商品理解などに活用できます。Facebookとも似ていますが、ビジネス利用を前提とした利用者が多いのでプライベートな投稿はほとんどなく、BtoBのマーケティングにはもってこいのSNSです。実際に見識のあるマーケティング担当者たちの間では、見込み客を獲得して収益を上げるためのツールとして LinkedIn を活用するケースが次第に増えているといいます。

SNSマーケティングを考えているなら検討してみる価値は十分にあると思います。

 

おわりに

 

 SNSは老若男女問わず利用者が多いツールであるため、マーケティングの手段としてとても有効ですが、自社にあった適切な目的、適切なターゲットを設定しなければなりません。各SNSのユーザー層や特徴を把握し、設定した目的・ターゲットと照らし合わせて適切なSNSを選択することで初めてSNSマーケティングによる効果が期待できるのです。BtoB企業であれば基本的にはLinkedInがおすすめですが、自社にあったものを選ぶことが大切です。

 今後マーケティングにSNSを活用する企業は増加していくでしょう。もはやSNSマーケティングはBtoCだけのものではありません。コロナ渦で顧客とのタッチポイントが少ない状況においては尚更重要なマーケティング手法になってきています。現在SNSをやっていないBtoB企業は乗り遅れないよう是非チャレンジしてみてください。

 

 

 

【参考】

GP-ONLINE「SNSマーケティングとは?効果とBtoB企業向け運用のポイント」

SNS運用のヒントが見つかるメディアWE LOVE SOCIAL「BtoBのSNS運用の目的設定と活用事例」

OPENLOGI「SNSマーケティングとは|SNSの特性やマーケティング方法・事例を詳しく解説」

櫻井直緩

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト