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3Mのデジタルマーケティング活用方法(BtoB領域におけるプライベートDMP&MAツールの活用事例)

 

デジタルマーケティングのBtoB事例をご紹介

 昨今、BtoC領域でのイメージが強いデジタルマーケティングは、BtoB領域でも重要視されてきています。本稿では、BtoBのデジタルマーケティングに関して、その必要性や、どのような取り組みが行われているのかを3Mの事例を基に紹介していきます。

 

3Mとは

 3Mは、日本を含めた世界70ヵ国でビジネス展開をしており、5つの事業部(「コンシューマー」「インダストリアル」「エレクトロニクス&エネルギー」「セーフティ&グラフィックス」「ヘルス」)を通じ、55000種類の製品を幅広く、顧客に提供しています。

 一般消費者にとって3Mというと、付せん紙や半透明のメンディングテープなどの「スコッチ」や「ポストイット」で知られていますが、実は同社売上の85%BtoB市場によるもので、産業向けのフィルム製品や粘着テープ、医療マスクなど法人向けの製品を数多く取り扱っています。

そんなBtoBが主体である3Mでは、数多くのデジタルマーケティング施策を取り行っています。

 

事例「統合」

組織の統合

 3Mは、BtoB向け製品のシェアを高めるために、これまでアプローチができていなかったリード(見込み顧客)へのアプローチが重要であると判断し、本格的にBtoBデジタルマーケティングに取り組み始めました。

 以前の3Mは、ウェブサイトを使った販売に積極的に取り組んでいませんでした。

 ウェブサイトでの販路は、直販サイトや大手の外部通販サイトの「アスクル」「Amazon.co.jp」のみで、直販サイトはコーポレートのマーケティング部門が担当し、大手通販サイトは製品群ごとに5つに分かれた各ビジネスユニットの営業担当者が担当をしており、ビジネスユニットが細かく分かれていたため、チャネル間でのデータ活用が行われず、全社横断的な販売戦略を描くことができていなかったのです。

 そこで、社内に分散していたウェブでの販売担当者を集約し、Eコマースプロジェクト部を新設する事で、全社横断的なウェブでの販売戦略を立てやすくしたのに加え、直販サイトを活用した複数の販売強化策の展開を可能にしました。

データの統合

 また、組織上での統合だけでなく、実際のデータ統合で活用されたのが、マーケティングクラウドソリューションである「activecore marketing cloud」です。

 この新規導入により、複数チャネルのデータのみならず、企業内に散在していたオンラインストアの行動ログとアンケートデータ、基幹データの商品マスタ、顧客マスタ、購入・サンプル請求明細を統合しました。また、セグメント分析やクラスタ分析を用いた会員組織の可視化や、施策シナリオごとに各会員に対してマーケティングオートメーションを実行したことで、課題であったウェブ行動ログと基幹データを統合した会員分析と、1to1レコメンドでロイヤルカスタマー醸成を可能にしました。

 具体的には、業種別、見込み会員別などでそれぞれの行動分析を通して、おすすめ商品や関連性の高い商品の情報提供を行うことによる、来訪喚起やアップセル・クロスセルの展開。また、顧客アクションに対する反響分析を通した会員LTV(顧客生涯価値)可視化の対応等が挙げられます。

https://www.activecore.jp/news/20150624/

 

事例「統合したデータの活用方法」

無料サンプルで見込み顧客の情報を獲得

 3M法人向けサイト「3MオンラインストアPRO」では、企業名や、部署名、連絡先等の登録を条件にして、販売している商品と同じものをサンプルとして無料配布しています。

 そこに「activecore marketing cloud」を活用し、自社サイトにプライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入する事で、リード(見込み顧客)のニーズを推定しメールや電話、営業担当者の訪問などプロモーションの多角的な展開を可能としました。

 それに併せ、リード(見込み顧客)からサンプル品への反応の聞きとりを通して、今後売れ筋になりそうな商品の早い段階での見極めを可能にすることで、多角的なプロモ―ションとの連携を駆使し、効果的なリード(見込み顧客)獲得を実現しました。

展示会で得た名刺の情報を徹底活用

 もう一つの取り組みとして、展示会をきっかけとしたネットとリアルの双方にまたがる販促が挙げられます。展示会に3Mが出展すると、数千人程度がブースに来場します。これまではそうした来場者の集まった名刺はアナログ情報かつ、膨大な量を理由に活用できていませんでした。

 その状況を解決するためきに、キャノン電子の子会社が展開する名刺の入力代行・管理サービス「アルテマブルー」を活用し名刺を電子データ化、展示会の翌日には来場者に電子メールを送り、そのメールから3Mのウェブサイトに訪問した来場者の過去に閲覧した3Mのウェブサイト履歴などをアクセス解析ツール「シナプス」を用いて分析し、それぞれの来場者が興味を持っている製品を明確にすることが可能となりました。

 これを元に作られたリード(見込み顧客)の連絡先リストと別途用意した企業情報データベースの情報を合わせ、各企業の売上高の高い順に並べる事により、コールセンターが優先順位の高い上位100人のリード(見込み顧客)に営業担当者の訪問を打診可能としています。その結果、アポ取得率48%の高数値を保っています。

 

事例「MAツールの活用」

MAツールの導入

 3Mは顧客に馴染みのある既存製品を売るだけでなく、新規製品も売れるようにしたいと考えていました。

 しかし、3Mの扱う商品を購買する顧客の若年化が進んでおり、デジタルに慣れ親しんだ世代である30代の若手に世代交代が成されているケースが多くなった事で、購買行動にも変化が生まれ、従来の方法である訪問を主体とした営業スタイルを顧客が好まない傾向にあります。さらには、3Mが有している商品数が約5万点にも上る為、多様な商品と個々の顧客に最適化されたマーケティングが困難でした。

 この問題を解決するために導入されたのが、MA(マーケティングオートメーション)ツール「Oracle Eloqua」でした。これにより、従来の営業方法に頼らない新規案件獲得の体制を構築したのです。

MAツールの活用場面

 BtoBの営業では、訪問営業を繰り返すなかで顧客との関係性を深め、受け取った課題に対して技術で応えるといったスタイルも重要です。しかし、そうした従来型のビジネスモデルが通用しないときに、デジタルマーケティングの力が発揮されます。

 例えば、顧客が自身の目的に沿った製品or企業を選定する際に、スリーエムであればその目的に沿った対応が可能であるという事を、顧客とのあらゆる接点を通して伝えられる仕組みが重要です。そのような場面でMAツールを活用する事で、どこでどのようなリード(見込み顧客)が生まれているのかを可視化可能にでき、最適な顧客へのアプローチが可能になります。

 また、従来の営業方法で成功している取引先であっても、ニーズを把握するために営業担当が訪問できる回数には限界があるため、MAツールを活用する事で顧客のニーズを導き出すことが可能になります。

 MAツールは新規顧客獲得だけでなく、既存顧客とのさらなる関係性強化にも重要な役割を果たします。また、データを蓄積していくことで、取引先の社内の別部門や異なる担当者が抱える新たなニーズを発見することも可能となります。

 

まとめ

 本稿でご紹介した通り、BtoC色の強いデジタルマーケティングもBtoB領域での活用が進んでいます。

 そこで重要なのは、データの一元的な管理とその統合されたデータの活用場面をうまく見極めることでしょう。

 本稿を参考に、BtoB企業でも、デジタルマーケティング導入を検討されてはいかがでしょうか。

 

【参考】

 

吉田暁壮

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。