AC社長ブログ「ともに、つくる」vol.35

感謝

6月は当社の決算月にして創業月(6/30設立)、そして本日6月4日はithのアニバーサリーデイ(吉祥寺アトリエの開店日)です。また恥ずかしながら実は私の45回目の誕生日でもあります。

ということで、今日は個人的な話になりますが、私自身のこの一年を振り返ってみたいと思います。

 

この一年、メディアでは飲食と観光がフォーカスされがちですが、ithの属するブライダル産業、そしてアパレルやジュエリーの対面型小売の分野も同様にコロナによる甚大な被害を受けています。当社ではコンサル事業がいち早く回復したものの、昨年末以降ブランド事業は未だ苦しんでおり、先の見通せない状況が続きます。

改めてこの期間を振り返り、私にとってのキーワードは「忍耐」と「感謝」だったのかなと思いました。

 

忍耐

「吾十有五にして学に志す(志学)。 三十にして立つ(而立)。 四十にして惑はず(不惑)。 五十にして天命を知る(天命)。 六十にして耳順ふ(耳順)。 七十にして心の欲する所に従へども、矩を踰えず(従心)。」

私が若い頃から意識してきた孔子の言葉です。その通りに、若い頃は30歳までには自分一人で仕事を作り完結できるスキルを身につけたいとハードワークに勤しんでいましたし、40歳になる頃にはこの会社で仲間達と共に世界をもっと豊かにする仕事をしようと惑わなくなりました。

その間に多くの困難も経験しました。而立以前の困難はどちらかと言うと自分の能力不足が故のことが多く、悔しい気持ちで一杯でした。時には上司やクライアントへ自分の至らなさを癇癪としてぶつけてしまったこともありました。

不惑以前の困難は、創業後の数年間のように、事業を手がけるもなかなか上手くいかないという辛さが多かったと思います。その頃は仲間を責めたり、不遇を嘆いたりしましたが、少なくとも失敗は糧となり成長している実感はありました。

しかし、今回のコロナ禍はそれら困難と又違ったものでした。自分自身にも、仲間にも、誰にも落ち度はない中で、コロナウイルスは私たちの想像を超える暴れっぷりです。誰も責めることが出来ない、誰も将来を予測することが出来ない、それなのに確実に会社や自分は蝕まれていく、そんな困難を前にした時に私たちはどう対処すれば良いのでしょうか。

その時に、孔子の天命を考えました。私もそうだったのですが、多くの人が天命とは天から与えられる特別な使命と捉えています。しかし改めて孔子の伝記を読むと、孔子は五十代前半は活躍しますが後半からの十数年はむしろ不遇の亡命生活を強いられていました。

天命とはもしかしたら特別な使命なんかではなく、自分ではどうすることも出来ない運命、いわば天災のようなことを言っているのではないだろうか。その方が耳順と従心の文脈にも沿っている。私はそう考えるに至りました。四捨五入すれば五十の私にとってコロナ禍はこれから降りかかってくるであろう数多の天命の最初のもの。いつしか私はこの困難をそう捉えるようになりました。

成功するか失敗するかは環境に左右され、個人の能力や成果に依存する部分はとても僅かなものです。そうすると、 自分の力や想像を超えた禍の中で個人として出来ることは極めてシンプルで「不安や恐怖、口惜しさといった感情を受けとめながら、道を踏み外さず、未来を見据え、適切なテンポで歩くこと」ようは「忍耐」しかないのだと今は思え、日々を過ごしています。

 

感謝

では、その「忍耐」というシンプルな行動の源にあるのは何なのか。何が私を耐え忍ばせることが出来るのか。結局、私にとってのそれは仲間の存在なのだろうと思います。

会社を大海原を行く船に例えてみましょう。

私の場合は、ワンマン中小企業の社長であった父を反面教師にしたことや、創業当初に昔お世話になった方から告げられた(役員の不文律となっている)予言もあって、自分一人の力を過信しないということを心がけています。ですので、アーツアンドクラフツという船は初めから様々なパーツ(役割を担う人材)を集めながら航海してきました。

私自身が受け持つパーツは時期によって変化していますが、例えばその一つに「帆」の役割があります。順風の時は大きく張り、逆風の時は角度を自在に操作し常に風(会社で言えば資金)を集めることは私が会社に貢献できることの一つです。その他にも船には羅針盤やアンカー、舵、竜骨、舳先に掲げるシンボルまで様々なパーツが必要です。

多様な役割を担う仲間を得て、その仲間を信じることが、元来決して強い人間ではない私が、自らを律し、勇気づけることが出来る源です。

アーツアンドクラフツに集う多くの社員の存在がなければ、コロナ禍のような大きな困難へ私が真っ直ぐに向き合うことは出来ないでしょう。

また、ブレやすい私が踏み外さずに会社を経営できるのは創業から変わらず役員の存在があるからです。

45歳を迎えるにあたり、改めてですが、この船を構成するみんなに心からの「感謝」を表したいと思います。ありがとうございます。

 

希望

最後に、辛そうな話や湿っぽい話ばかりしてみんなに心配かけてはいけないので、少しだけ景気の良い話を。

ワクチンが予想よりも順調に広がりつつある中、ithの次の繁忙期までには社会もさすがに戻るでしょう。そうすると、この一年間で増えたオンラインと3エリアを含む12アトリエのフル稼働は大変な忙しさになりますよ。みんな今という時間を無為に過ごすことなく、顧客体験とものづくりの質を更に高める努力をしておいてくださいね。

6月1日にはシンガポール現地法人が設立されました。コロナで閉じた国境がオープンになり次第現地へ赴き、年内には海外一号アトリエのオープンに漕ぎ着けたいです。まさに世界の海へ出る第一歩が始まってます。

コンサルは2023年50名計画へ向けて着々と採用も進んでます。業界が活況の今を逃さずに、新たな仲間の獲得、新たなクライアントの開拓、新たなマネージャーのチャンス、新たなキャリアの構築を進めて、一気に上がっていきましょう。

ブランドの充実、海外展開、ビジネスプロフェッショナルの育成は当社の中期三大目標ですが、それらはコロナの期間も全く滞りありません。アフターコロナの飛躍へ向けて、私自身も希望に溢れる45歳の一年を期待しています。

 

宮﨑

「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。

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宮﨑晋之介

アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。