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2021.04.13

【実践事例】KPI活用で生産効率向上

はじめに

以前のコラムでは、働き方改革の重要手段であるシステム活用事例を紹介しましたが、今回はもう一つの重要要素「KPI」紹介したいと思います。KPI、あるいは「Key Performance Indicator」は一般的に「業績管理」の主要手段として知られているが、実際働き方改革においてもとても重要です。KPIが設定されている場合、従業員は自然にKPIの達成に向けて行動をします。従って、KPIの設定方法により、従業員の行動が変わる訳です。合理的なKPIを設定することにより、問題発見や従業員の効率向上にはとても有効です。今回は実際の事例を通じてKPIの設定により働き方改革につながった事例を説明したいと思います。

ITアウトソーシングのA

背景

本拠がアメリカのA社は100名台のITアウトソーシング会社であり、主な業務は「ビジネスプロセスマネジメントアプリケーション」に対してサポートを提供することです。世界中の各国のクライアントがサービス対象であり、365日間無休で稼働をしていて、既存のリソースはギリギリクライアントの需要に満たしていました。しかし、契約に従い、サービス水準を維持した上で、翌年度に10%の値下げをする必要があり、既存従業員の効率向上が目先の課題となりました。

KPIの定義による問題発見と対策

 A社での従業員はモニタリングなどの基礎的な日常業務しか対応できない「L1コンサルタント」とバグの改修など高度な業務を含めて全て対応できる「L2コンサルタント」がおり、L1コンサルタントとL2コンサルタントで組成されたチームで各クライアントを対応しています。現状では各チームの稼働率がバラバラな状態です。下記図1が各チームのL1コンサルタントとL2コンサルタントの稼働であり、42%しか稼働してないものもいれば、240%稼働しているものもいました。普通に考えたら、チームの配置を変えれば、より効率よく回せるのではないかという結論になるが、A社ではそれがなかなかうまくいけなかったのです。なぜかというと、A社では従業員それぞれの「生産性」を評価するKPIがなく、各従業員の得意領域など知らずにむやみにチーム調整しても効果がよくなかったのです。

図1

 そこで、A社はまず生産性に関するKPIを定義することから着手しました。下記図2のように、生産性(Productivity)を「size/effort」、つまり「作業量/処理能力」に定義し、さらに作業量(size)を「Monitoring activity」、「Service」、「Problem tickets」、「ad hoc requests4種類に分類しました。そして処理能力を単純にL1L2それぞれの合計労働時間にしています。

図2

 

そして、こちらのKPIに基づいて、社内システムから稼働の実績データを分解すると、図1の稼働率実の詳細は下記図3になりました。

図3

 

このように、各チームコンサルタント配置、及び各コンサルタントが自分のタスクにどれほど時間かかっているか見えるようになります。そして、作業量に合わせて分析すれば、各従業員がどのタスクに得意するかも分かります。実際発生したとは異なるが、例えば、「Customer G」のチームは明らかに稼働率が所定をオーバーしている原因としては、「Monitoring」に時間かかっているからです。ただ、実際「Customer G」と「Customer A」の「Monitoring」作業量がそれほど変わらなく、なぜこの結果になっているかというと、「Customer G」チームのL1コンサルタントXさんが「Monitoring」に苦手だからです。これが分かればとてもシンプルな話になり、他チームの「Monitoring」得意なL1コンサルタントと入れ替えをすればよいのです。そして、Xさんは自分得意が「problem tickets」を対応すれば、全体がより効率のよい配置になります。

結果

このように、KPIを活用して、各従業員の「生産性」を見えるようになります。これに基づいて、「適材適所」というより効率的なチーム編成ができるようになり、全体の効率が著しく上昇し、既存業務から10人の従業員コストを削減でます。よって、契約通りクライアントの値下げに対応できるようになります。

機械メーカーのB

背景

B社は4000人を超える機械メーカーであり、以前から特に自社倉庫の効率が悪く、重点改善対象でした。特にフォークリフトに関して、従業員により倉庫から荷物もピックアップする効率大幅に異なっていました。それを改善するために、倉庫にカメラを設置し、映像の各フォークリフトの動線を分析しようとする試みもあったが、人間の目で動画を解析するしかなく、作業量があり得ないほど多く、うまくいっていなかったのです。そして、B社はよりよくフォークリフトの同線を分析し、そしてフォークリフトの効率向上ができる方法を模索していました。

KPIの定義と問題解決するための取り組み

B社の改善目標は明確となっていて、つまり「1人のスタッフが1日あたりピックアップする荷物」を多くすることでした。それを解明するには、まず「ピックアップ数//人」という指標を分解しなければなりません。そして、B社は下記図4のように「ピックアップ数//人」を分解しました。また、各指標のどこに絞って改善していくことも重要であり、B社は検討した結果、図4赤いKPIに絞ることにしました。その元となっているのが「移動距離」と「滞留時間」です。その理由として、1人のスタッフが1日あたりピックアップする荷物」を増やすのなら、「労働時間」を増やせばよいという考えもあるが、ただしそれだとコストも上がるので、「効率向上」ではありません。また、フォークリフトにたくさん積めば「1回あたりピックアップ数」が多くなるが、フォークリフトと荷物の大きさが変えられないので、これも実現できません。最後に、安全確保するため、フォークリフトの速度を上げることの禁止されているため、速く走らせることにより効率向上もできません。従って、フォークリフトの「移動距離」と「滞留時間」の短縮が重要なKPIとなります。

図4

 改善対象が絞られてから、問題はそれをどう実現するかになります。要するに、フォークリフトの動線をどのように図るというのが問題になります。GPSなども検討されていたが、結局精度が低く、フォークリフトが倉庫内の導入を追跡できませんでした。そしてB社が選んだのがRFIDでした。RFIDはよく会計などに活用されているが、近年倉庫などの位置計測にも活用されるようになりました。簡単な原理として、フォークリフトと倉庫内各所にRFID装置を設置し、三角測量方法でフォークリフトの位置のリアルタイムで計測します。室内の場合、GPSより精度が高く、計測結果も安定しています。

RFIDの導入により、B社倉庫のフォークリフトの走行動線、距離、滞留時間が図れるようになり、専門ソフトのシミュレーションにより最適のルートを算出することもできました。

結果

 ソフトのシミュレーションにより、倉庫内のレイアウト変更、最適な走行ルートをフォークリフト運転手に配布などにより、混雑解消、庫内事故減少、迷子減らしなど総合的な効果により、1拠点で30台のフォークリフトを削減しました。

終わりに

 今回紹介した事例はいずれもKPIによって門内の改善策を発見して、そして対策を打つことによって効率向上を図りました。新しい取り組みではないが、効率向上、業務改善などする際にKPIという視点も切口の一つという考えが参考になれればよいかと思います。

 

王 立云

アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
2016年上智大学大学院経営学部卒業、大手量販店入社。2018年当社入社、Consulting & Solution事業部にて戦略コンサルティング案件、BRP、RPAを始めた業務改善に伴うITコンサルティングなど、豊富な実績を有する。社内効率化のために、最適なソリューションをご提案いたします。