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調達業務効率化のためのツールについて

1.      はじめに

調達業務の効率化を考える上でポイントとなるのは、①いかに最適なサプライヤーを選定するか、②その見積もり、調達の結果をどのような形でデータ化して管理するかと言う点です。今回はその2つの点で効果的な各種のサービスを紹介していきたいと思います。

2.      最適なサプライヤー選定のためのツール

ある製品、あるいはサービスを発注する際には、以前から取引のあるサプライヤーに問合せをして見積もり依頼を行うか、それが難しければ新たな取引先をいくつかを探して、見積もり依頼を行い、それがうまくいかなければまた新たなサプライヤーを探して見積もり依頼を行うというケースがほとんどではないでしょうか。初めて調達するもので発注先の当てがつかない場合、既存のサプライヤーに対して取り扱いを確認し、それが難しければ、新規サプライヤーを探すというようなステップを踏むことになり、非常に手間がかかります。この点を解決するのが下記2つのサービスです

①     見積アットディー:取り扱い可能性のあるサプライヤーへの見積もり依頼を一括で

まず最適なサプライヤー探しいう点で大きな効果を発揮するのが、ディ―コープの提供する見積アットディーです。下記のように多岐にわたる品目の中から見積もり条件を指定して見積もり依頼を行うと、それに適したサプライヤーに対して見積もり依頼が行われ、それに対する回答を受け取れると言う仕組みになっています。サプライヤー側の登録は無料で行うことができ、受注できる可能性のある案件に関して紹介を受けられる仕組みになっています。

 

最大の特徴は、見積もり条件を一度入力するだけで、登録しているサプライヤーに対して一括で見積もり依頼を行えると言う点にあります。通常、何かを発注すると言う際にはそれが日常的に発注をしていると言うものであれば今取引のあるサプライヤーに対して見積もりを行うことが通常かと思います。本体に普段あまり使わないもの注文をする場合には、どのサプライヤーに依頼を行えば良いのかと言うところがところから始める必要があります。このどちらの場合にも見積アットディーを使えば効果的なアプローチをすることが期待できます。

まず前者の日常的に発注していると言うような場合のものに関しては、改めてアットディー上で見積もり依頼を行うことで、その製品が最適な価格で購入されているのかどうかを知ることが可能で、同時に新規サプライヤーの方が最適価格であると言うことがわかった場合には、その切り替えまでをスムーズに行うことが出来ます。

後者の都度発注をするようなものに関して言うと、とりあえずこのような形のものが欲しいと言うレベルで入力をすれば、それに見合ったサプライヤーから見積もりが届くので、その中から最適と思われるサプライヤーを選ぶ、もしくは条件の指定が不十分だった場合には、いくつかのサプライヤーに対して再見積もり依頼などを行うことで、求めている条件にふさわしい製品を発注することが可能になります。

また、上記の過程についてはシステム上で他の担当者に対して案件の情報を共有することができるので、見積もり依頼の過程が共有され、見積もり業務が属人化することを防ぐ効果も期待できます。サプライヤーとのやりとりもこのシステム上で完結するような形になっており、メールを使った場合よりも効率的にコミュニケーションを図ることが可能です。

②     CADDiCADデータのアップロードで板金・切削加工の見積もり依頼

製造業の場合、部品点数が多岐にわたることが多く、サプライヤーに発注を行うだけでも膨大な時間がかかります。特に以前の発注履歴が残っていないようなものを注文する場合、まずは仕様の確定それからサプライヤー探し、見積もりと言う手順を踏んでそこからさらに品質の妥当性等を検証、最後にサプライヤー選定と言うことになると多くの手間と時間がかかります。またこのようなやりとりの多くが紙ベースで行われていると言う実態がありこの場合には管理と言う点でも膨大な手間がかかります。

このような業務の効率化を図ることが出来るのが製造業向けの受発注プラットフォームのCADDiです。このサービスの特徴はバイヤーから提供されたCADデータを基にAIで処理することによって協力工場を選定し、最適な価格での見積もりを提供する点にあります。まずバイヤーはCADDiのサービスサイト上で、CADデータをアップロードすることで見積もり依頼を行います。CADDiではこのデータを解析し、価格及び品質の点で最適なパートナーの加工工場を選択し、その価格データを基にした見積もりが提示されるという流れです。

サービスを利用する場合、発注頻度が少なく部品点数が多岐にわたるような工作機械のような例では特にメリットが大きいと考えられます。この場合、通常のケースだと一つ一つの部品に対して最適なサプライヤーを選定し見積もり業務を行う必要があります。しかもこのような工作機械の部品の場合、前回の発注から時間が経っている場合にはすでに以前のサプライヤーで取り扱いがないと言うようなことも十分に考えられます。そうなると1からサプライヤーを探すために労力がかかり、さらには調達にかかる時間が予測できないという問題も発生します。

この点、CADDiを利用した場合には、各部品のデータをまとめてアップロードすることで最適なサプライヤーの選定をCADDiのシステムの方で行ってもらえるため、多数の部品の見積業務が一度で済むという形で効率化が図れ、最大の売りであるコスト削減という部分の他に、バイヤー側の業務負荷軽減という面でも大きな成果を発揮します。

出典:キャディ株式会社HP

3.     見積もり取得後のデータ管理のためのツール

①     RFQクラウド:統一フォーマットでの見積もり管理を可能に

A1Aの提供する製造業向け見積もり管理システム、RF Qクラウドの最大の特徴は、システム上で標準見積もり形式を既存サプライヤーとの間で共有して管理することができると言う点にあります。

従来のケースで見積もり依頼を行うと、通常はその相手方のサプライヤーの書式で見積もりが発行されると言うパターンが多いかと思います。この場合、本来は必要であった情報が抜けている、あるいはサプライヤーごとに項目が異なっていて、横並びでの比較が難しいと言う問題があります。このようなケースで横並び比較を行いたい場合、情報共有のためには各サプライヤーからの見積もり結果をExcel等の表形式にまとめ直す作業等が必要となってきますが、この作業だけでも多くの労力がかかり、価格比較、品質の評価等の本質的な部分に割ける時間が少なくなってしまうというで課題が残ります。

この点を解消するために生まれたのが上記のRF Qクラウドで、バイヤーが指定した見積もり形式を選択して各サプライヤーに見積もり依頼を行うと、それに沿った形でサプライヤー側で入力が行われ見積もり発行が行われるという仕組みになっています。導入時には、標準見積もり形式のサプライヤー説明会を開催することでスムーズにシステムを導入するような形になっています。操作画面をシンプルに作成されており操作の間でつまずく事は無いかと考えられます。

上記の見積もり業務の効率化の他にRFQクラウドのもう一つのメリットは見積もりの過程をデータとして残すことが可能という点にあります。全体の見積価格データの蓄積はもちろんのこと。担当者の引継ぎがあった場合などでも過去の見積もり履歴を参照することで各サプライヤーと見積もり過程でどのようなやり取りがあったのかを把握することができ、スムーズな業務の移行が可能になると考えられます。

 

②     Leaner:間接費の全体像、費用削減効果を見える化

上述のようなサービスの活用、あるいは見積もりプロセスの徹底で個々のケースで見積もり業務が最適化されたといっても、金額面でどの程度効果がはっきされているか知る事は調達業務を評価するにあたって不可欠なステップですが、自社が他企業と比べてどの程度の調達の効率化が出来ているのかという点は把握が難しい部分です。

そこで効果を発揮するのが最後に紹介するLeaner(Leaner Technology提供)です。こちらのツールは主に間接材をターゲットにしており各品目での調達価格が適切かと言うことを分析することが出来るようになっています。特徴的なのは、各品目の支出状況が明らかになることだけではなく、類似企業比でその品目が適切な価格で調達されているのかという事まで明らかになる点です。もし当該品目で改善余地がある場合には、改善のためのアドバイスも参照できるようになっています。

 

上で紹介したような見積もりツールと組み合わせて使用することで振り返りを行えるようになり、Leanerを継続使用することによって、これらのデータを経年で分析することができることからどの程度の削減効果があったのかと言うことも明らかにすることができます。このような振り返りを通じて新たな削減余地がある項目がないかといったことを状況に応じて検討することが可能になります。

4.      おわりに

ここまで調達効率化のための4つのサービスについて簡単に紹介してきましたが、いずれのサービスも導入にあたって基幹システムとの連携などは必要なく、それ単独で機能するものとなっており、実際に導入する際のハードルは比較的低いものとなっています。新規サプライヤー開拓に課題を感じているなら見積@Dee、板金・切削加工発注の最適化を目指すならCADDi、既存の取引先との見積もり管理、データ蓄積であればRFQクラウド、調達コスト全体の把握、見直しならLeanerというように、各企業の抱える課題に合わせてそれぞれのサービスを検討してみてはいかがでしょうか。

藤本光佑

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。得意分野は決済事業、IoT、エネルギーなどの事業戦略の提案や、それに伴う調査