AC社長ブログ「ともに、つくる」vol.14

良いものをつくり、良いものとして売る

本日は今期の新宿梅田福岡の出店へ向けて目下生産力強化に大忙しのジュエリー生産部の紹介です。

ithは全ての商品をお客様の一点ものとしてお仕立てしています。

一般的なブランドであれば商品毎にある程度の在庫を抱え、成約後に刻印を打ち納品という流れをとります。
対して、ithの場合は全ての商品にアレンジ(お客様による仕様変更)が入る為、一品々々オーダーを受けてから職人がつくります。

職人からすれば在庫商品であれば全く同じものを流れ作業的につくることが出来るので作業が楽ですが、一品々々異なる仕様に合わせてつくるithの商品は作業が面倒ですし高い技量が求められます。

結果的に、ithの場合は毎月の生産可能数(=販売可能数)を上げることが難しくなり、これまでも大変苦労してきました。

そんな訳で、出店により受注本数が増えることは大変喜ばしいことなのですが、生産部門は毎日の納品に加えて生産量向上の活動に追われる日々が暫く続きそうです。

ジュエリー生産部は生産グループと工房グループに分かれます。

生産Gは「今日も未来もお客様へith商品を必ず届ける」を使命に、工房Gと外部協力工場へ仕事を振り分け検品しアトリエへ納める全工程を管理するのが仕事です。

工房Gは「ithブランドの技術の向上と伝承」を使命とし、実際の制作の中でも特に修理や協力工場が出来ないもののリカバリー等を担い、また工場への指導も行っています。

私はithの商品は人の名前のつながりだと、よく言っています。

一般的なブランドの成約後の流れは、〇〇店から商品A一点の発注が入り、商品Aを〇〇店へ納品です。

ですがithでは、お客様Aさんの希望を担当のBさんが受け発注し職人Cさんがつくり検品Dさんが確認したものを、再びBさんを介してAさんへ納品となります。全て一点ものであるだけでなく、全工程がby nameなのです。

協力工場の職人達へ最初に伝えるのも、このことです。
これまでやってきた業界の仕事とithの仕事は全く異なるもの。その分良い工賃をお支払いもするし、何よりお客様を感じながらつくる仕事の意味を考えてもらいたいと話すと、殆どの職人は目が変わります。

今期からは生産力向上の一環として、工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組み始めました。
ジュエリー業界には未だに社内にパソコンが一台、主なやり取りはFAXのような工場が沢山あります。

ithは生産G、工房G、協力工場がオンラインで常時繋がり、ライブカメラで商品の細かな部分の話を営業を介さず現場と現場でリアルタイムに出来る環境を目指しています。
これまで親方の裁量の強かった現場がIT化することにより、様々なことが見える化されPDCAサイクルが回り始めてます。

先日ある工場の会長とお話しをした際のこと。その会長は現役の頃はジュエリー協会の重役でもあり、何十年と業界を引っ張ってきた我々の大先輩です。

会長曰く、バブルの頃までの業界は本当に良かった。だが、大手のメーカーは生産機能を海外へ移転し、今や国内に日本人の職人は僅かとなった。そして業界の市場規模は1/3になり、メインストリートには外資系のブランドだけが並ぶようになった。何でこうなったんだろうと。

私はこう思います。
ジュエリーのような嗜好品は、良いものをつくり、良いものとして売るのが本来の姿。
国内で良いものを丁寧につくり、それを国内外で良いものとしてしっかりと売る。業界全体がこの三十年かけてやってきたのは、これとは正反対のことだったのではないかと。

LVMHはじめヨーロッパのラグジュアリーブランドは今でも国内で良いものづくりをして、世界でそれを良いものとして売っています。明治や戦後の日本もそうやって伸びてきました。
私たちは、今日明日の短絡的な視野でなく、この先三十年の腹を決めて、良いものをつくり、良いものとして売る本来の姿を、またゼロから取り戻す必要があります。

良いものをつくる=Manufacturing
良いものとして売る=Marketing
長期的な視野で腹決めてやる=Management
ブランドはこの三つのMで構成されてます。そして根幹を成すのは勿論良いものづくりです。

ジュエリー生産部の今の努力が、ゆくゆくは日本のジュエリーづくりをも変える。私は真剣にそう思ってます。
一つ一つともにつくっていきましょう。

宮﨑

「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。

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宮﨑晋之介

アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。