高齢化社会が進む中で、高齢者手続き支援と終活支援の重要性がますます高まっています。この分野には多くのビジネスチャンスが存在し、新規事業として参入することで社会貢献とビジネスの両立が可能です。本ブログでは、高齢者手続き支援と終活支援業界に新規参入するためのポイントや事例を紹介していきます。
高齢化社会が進む中で、高齢者手続き支援と終活支援の重要性が増しています。高齢者の安心した生活を実現するためには、日常生活のケアや医療・介護の提供、さらには終活準備のサポートが必要となってきます。これらの支援は、高齢者の身体的・精神的な健康を維持し、尊厳ある生活を送るために欠かせません。
高齢者手続き支援と終活支援には、以下のようなサービスがあります。
(ウェルエイジング経済フォーラムのカオスマップを参照。デジタル活用プレイヤについてはデジタル技術を活用してサービスを提供している企業を指す。)
これらのサービスは、高齢者の身体の状態やニーズに応じて提供されます。
近年、デジタル技術を活用した高齢者支援サービスが増えています。例えば、見守りサービスや健康管理アプリ、オンライン相談などが挙げられます。これらにより、自宅にいる高齢者に対しても必要な支援を十分に提供できるようになることで、生活の質の向上を図ることが可能になります。
高齢者手続き支援市場と終活支援市場には、多くのサービスが存在します。これらのサービスは、高齢者の生活の質を向上させるために欠かせないものですが、サービスを展開する上ではいくつかの課題を抱えています。
今回上げたサービスの中でもこの後に挙げる5つの領域においては市場規模が大きく、なおかつ課題が残っているため、新規参入の余地が大きいです。これらのサービスに参入し、課題を解決することで、他社にはない独自性を持つことができ、事業拡大を狙っていくことができます。
高齢者手続き支援市場には、高齢者住宅仲介、資産管理など、高齢者の生活の質を向上させるために欠かせないサービスを提供しています。
A.資産管理
高齢者の資産を適切に管理し、将来の生活を支えるためのサービスです。信託銀行やデジタル技術を活用した資産運用が注目されています。信託銀行は、高齢者の資産を管理し、適切な運用を行います。これにより、高齢者は安心して資産を預けることができます。また、デジタル技術を活用した資産運用アプリが増えており、高齢者は自宅にいながら資産の運用状況を確認し、適切なアドバイスを受けることができます。
課題:主要プレイヤーの信託銀行のサポートが限定的であり、他のサービスの追加利用が必要です。また、知識が豊富な専門家が少なく、契約トラブルが一部発生しています。他にも認知機能が低下した顧客は意思決定が難しく、詐欺などのトラブルや、資産の放置による損失が発生するケースもあります。
B.高齢者住宅仲介・身元保証
高齢者住宅仲介サービスは、高齢者が安心して生活できる住環境を見つけるための支援を行います。バリアフリー設計の住宅や、介護サービスが充実した施設の紹介などがあります。これにより、高齢者は自立した生活を続けることができます。バリアフリー設計の住宅は、高齢者が安全に生活できるように設計されており、介護サービスが充実した施設は、高齢者が必要なケアを受けながら生活することができます。
身元保証サービスは、高齢者が安心して生活できるようにするための重要なサービスです。例えば、一般社団法人終活協議会では、身元保証や健康相談、死後事務委任サポートなどを提供しています。身元保証契約を結び、緊急時や医療機関への入院時に身元保証を行います。また、健康相談やサポートを提供することで、高齢者の健康管理がより充実します。
課題:高齢者住宅仲介サービスにおける課題として仲介業者の紹介内容が実際と乖離していることにより、トラブルが発生しています。また、サービス品質が不均一であり、高齢者が適切な事業者を選定することが困難です。仲介業者の紹介内容が実際と異なる場合、高齢者が期待していたサービスを受けられず、トラブルが発生することがあります。身元保証サービスにおける課題としては、監督している省庁や法律による規制などがなく、判断能力の低下を狙って過剰請求を行うようなケースが発生していることが挙げられます。
終活支援市場には、遺言信託、遺産整理、葬儀関連サービスが含まれ、高齢者が安心して人生の最期を迎えるために欠かせない支援を行っています。
C.生前支援・相続支援・遺言信託
生前支援サービスは、高齢者が自分の意思を尊重しながら生活を続けるための支援を行います。エンディングノートの作成支援や、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の作成支援などがあります。エンディングノートの作成を支援し、将来の意思決定がスムーズに行われるようにします。また、ACPの作成支援を通じて、高齢者の医療や介護に関する意思を明確にします。
相続支援サービスは、高齢者が遺産を適切に分配するための支援を行います。遺言書の作成支援や、相続税対策のアドバイスなどが提供されています。遺言書の作成を支援し、遺産分配の際のトラブルを防ぎます。また、相続税の負担を軽減するためのアドバイスを提供します。
遺言信託サービスは、高齢者が自分の遺産を信託することで、遺族に対する負担を軽減するためのサービスです。信託銀行による遺言信託が注目されています。信託銀行が高齢者の遺産を管理し、遺言に基づいて遺産を分配します。また、遺言信託の作成支援を行い、法的に有効な形で遺言信託を作成します。
課題:新たな信託制度に関する知識が不足しているため、契約トラブルが発生しやすくなっています。また、専門家の数が少ないため、高齢者が適切なサポートを受けることが難しい状況です。また一部では悪質な業者が存在することでトラブル発生の原因になっていることや、事業者によってはサービス品質が不均一であることから、高齢者が適切な事業者を選択し依頼することが非常に困難となっています。
D.葬儀仲介・葬儀実施
葬儀仲介サービスは、高齢者が自分の葬儀を事前に計画し、遺族の負担を軽減するためのサービスです。オンラインでの葬儀プランニングや、葬儀社の比較サイトなどがあります。葬儀プランニングを通じて、高齢者は自分の葬儀を事前に計画し、遺族の負担を軽減します。また、複数の葬儀社を比較し、最適な葬儀社を選ぶための情報を提供します。
葬儀実施サービスは、高齢者が亡くなった後の葬儀を円滑に進めるためのサービスです。葬儀社によるトータルサポートや、デジタル遺品整理サービスなどがあります。葬儀の準備から実施までを一貫してサポートし、遺族は安心して葬儀を任せることができます。また、故人のデジタル遺品を整理し、適切に管理するサービスも提供しています。
課題:ヒアリングの内容が十分に反映されていないことによりトラブルが発生するなど、業者の品質に差が大きく、顧客の状況を含めてトラブルが発生しがちです。また、サービス品質が不均一であり、膨大な数の事業者の中から顧客にとって適切なサービスを提供してくれる事業者を選定することが困難です。
E.遺品整理・遺産整理
遺品整理サービスは、高齢者が亡くなった後の遺品を整理するためのサービスです。専門業者による遺品整理や、デジタル遺品の管理サービスなどがあります。遺品整理が適切に行われることで、遺族は故人の思い出を大切にしながら、新たな生活を始めることができます。
遺産整理サービスは、高齢者が亡くなった後の遺産を適切に分配するためのサービスです。弁護士や税理士による遺産整理のサポートが提供されています。弁護士や税理士が遺産整理をサポートし、法的に適切な形で遺産を受け取ることができます。また、遺族間での遺産分割協議をサポートし、円滑に遺産を分配するための支援を行います。
課題:遺産整理には多くの手続きが伴い、必要な手続きに応じて依頼先が変わるため、手間がかかり遺族の負担となっています。また、サービス品質が不均一であり、必要なサービスを提供してくれる事業者を選定することが困難であり、負担を増加させる要因となっています。
今まで挙げてきた有望な領域を踏まえ、参考となる事例を紹介します。
トリニティ・テクノロジーは、先ほど挙げた有望領域に関するサービスを多数提供している企業です。例えば、認知症による資産凍結を防ぐ家族信託サービス「おやとこ」や、単身世帯の高齢者向けの身元保証サービス「おひさぽ」、相続手続きサービス「スマホde相続」などがあります。
「おやとこ」は、親が自分の財産を子に託し、子がその財産を管理・運用することで、親の意思能力に関わらず財産を動かすことができる仕組みです。これにより、認知症による資産凍結を防ぎます。また、「おひさぽ」は、単身世帯の高齢者に対して見守りサポートや身元保証、財務管理、死後事務など、生前から死後まで必要なサービスを提供します。
さらに、トリニティ・テクノロジーは、課題として挙げられていた人材不足や費用負担、サービス品質のばらつき、悪質な事業者の存在といった問題にも対応できるようなサービス提供を行っています。例えば、専門家コミュニティ「TRINITY LABO.」を通じて、家族信託や相続に関する専門知識の共有やセミナーの受講を可能にし、サービスの質を向上させています。このプラットフォームでは、民事信託や国際資産税、企業法務などの高度な案件について、各分野の専門家に直接無料で相談することができます。
また、トリニティ・テクノロジーは、オリックス銀行や十六銀行などの金融機関と業務提携を結び、家族信託のニーズを有する顧客の紹介を受けています。これにより、地域間格差の解消や信頼性の高いサービス提供を実現しています。さらに、イオンライフと提携し、顧客紹介を受けるとともに「おやとこ」の提供を行っています。2024年7月時点で、提携企業数は736社に上り、銀行・証券会社、会計事務所、介護施設、葬儀社、保険・不動産会社など多岐にわたります。
このように、トリニティ・テクノロジーは高齢者支援と終活支援の分野で多岐にわたるサービスを提供し、金融機関や終活支援サービス企業との提携を強化しています。これにより、高齢者が安心して生活を続けるための総合的な支援を実現しています。
高齢者支援と終活支援は、昨今急速に進んでいる高齢化社会においてますます重要なテーマとなっています。デジタル技術の活用や新しいサービスの導入により、高齢者が安心して生活できる環境が整いつつあります。今後も、これらのサービスがさらに発展し、高齢者の生活の質が向上することが期待されます。
以上より高齢者手続き支援と終活支援業界は、今後ますます成長が期待される分野です。新規事業として参入することで、高齢者の生活の質を向上させるとともに、持続可能なビジネスを展開することができます。本ブログで紹介したポイントや事例を参考に、ぜひこの市場での成功を目指してください。皆様のビジネスが高齢者支援と終活支援において大きな貢献を果たすことを期待しています。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト