近年、デジタル技術の発達や普及により、Webマーケティングやデジタルマーケディングの活用が一般的となっており、商品・サービス、あるいは自社の情報を訴求していくために、企業は様々な媒体・手法を組み合わせて施策を講じています。
そのような中、マーケディング施策の一つとして”オウンドメディア”を活用している企業が増加傾向にあります。一般的に、オウンドメディアとは企業が「自社で運営し情報発信を行うメディア」を指します。発信方法については企業により様々ですが、主にWebマガジンやブログといった形式を用いて、ターゲットとするユーザー(消費者・企業)にコンテンツを発信しているケースが多く見られます。
オウンドメディアが果たす役割としては主に以下の3つが挙げられます。
オウンドメディアを運営することで、ターゲットとしているユーザーとの接触機会を増加させ、集客に活かすことが可能となります。各企業は検索エンジンに自社のオウンドメディアを上位表示させるための良質なコンテンツを試行錯誤し提供することで、新規獲得を図っています。
オウンドメディアは新規獲得だけでなく、リードナーチャリングや既存顧客との関係性維持にも期待できます。コンテンツの継続的な発信により、見込み客の自社商品・サービスに対する興味を徐々に高めていくことで、購入を促進します。既存顧客に対しても自社の信頼度を高めていくことで、ファン化させていくことが可能となります。
ユーザーの中でトレンドとなっている(興味・関心を示している)コンテンツや、ユーザーが日ごろ抱えている課題の解決につながるコンテンツを継続して発信することで、自社を知ってもらうきっかけを作ることができます。
広報・PR・コミュニケーションの専門誌『広報会議(2024年6月号)』によると、オウンドメディアを運営している企業の内、8割以上の企業がプラスの効果を実感しています。オウンドメディアの運営によって効果を感じていることとしては「企業イメージ向上、ブランディング(76.7%)」が最も多く、ユーザーに訴求したい自社や商品・サービスのイメージに合わせて、発信内容を自由にコントロールすることが可能であるという、オウンドメディアの利点が効果として表れていると思われます。また、ブランディングや新規獲得以外にも「人材採用」「社内コミュニケーション」においても、プラスの効果が働いていることが分かります。
では、各企業はどのようなオウンドメディアを運営しているのでしょうか。本稿では、ヘアケア業界における事例を3つご紹介いたします。ヘアケア商品については多くの人がインターネットを活用して情報を仕入れているのではないでしょうか。しかし、ユーザーにとって、SNS上の比較・紹介といった情報だけでは不足しており、企業の公式HPやオウンドメディアから、複合的に情報を収集している傾向にあります。そのような中、ヘアケア商品を提供している企業の多くはオウンドメディアを活用し、自社ならではの情報発信によってそれぞれのターゲットとするユーザーとの接点を構築しています。
サイト名: Made by Milbon ターゲット: サロン 提供価値: 信頼度向上、商品購入促進 発信内容: 新技術、安全性・品質、受賞歴 |
ミルボンは、サロン用のヘアケア商品を提供している企業であることから、自社メディアにおいても販売先であるサロンに対して情報を発信しています。主に自社技術に関する発信が多く、自社の研究(ヘアケア)技術や自社製品の特長(新容器や効能など)を紹介しているコンテンツが多くを占めています。これらの発信により、自社製品に対するユーザーの信頼や期待感の向上に寄与しています。
サイト名: Lebel AII YOUR OWN ターゲット: サロン、消費者 提供価値: 信頼度向上、顧客満足度向上、商品購入促進 発信内容: 新技術、安全性・品質 |
サロン向けヘアケア商品を販売しているタカラベルモントでは、サロンとその先の消費者に向けたコンテンツをオウンドメディアで発信しています。ミルボンと同様に、自社研究技術や新商品の情報に加えて、髪の悩みに対する原因やヘアケア方法といった対個人向けの情報を定期的に発信しており、顧客満足度の向上を図っています。
https://journal.botanistofficial.com/
サイト名: Botanist Journal ターゲット: 消費者 提供価値: 商品購入促進、ブランド向上 発信内容: 社会貢献 |
ボタニカルライフスタイルブランドである『Botanist』を販売しているI-neは、オウンドメディア「Botanist Journal」を通して「ボタニカル」に関連する4つのコンテンツをユーザーに対して発信しています。「PEOPLE」ではボタニカルライフスタイルを送る人へのインタビュー記事を、「SUSTAINABLE」では環境や植物について見つめなおすコンテンツを、「HOW TO」では髪に関する悩みにへの独自の解決策を、「LIFE STYLE」では暮らしを豊かにするボタニカルライフをそれぞれ発信することで、『Botanist』のブランド向上につなげています。
オウンドメディアのみの発信に留まらず、他の媒体と組み合わせることでより大きな効果が期待できます。先ほどご紹介したI-neのオウンドメディアの事例を基に見ていきましょう。
I-neでは、オウンドメディア以外にもInstagramやXといったSNSや、外部メディア、YouTubeなど多くの情報媒体を起点として、自社商品の購入を促進しています。情報媒体により発信内容を変えているのが特徴で、YouTubeでは「新商品の販売や、環境保全に関するイベント活動のレポートを発信」、各SNSでは「商品の概要や効能の説明、実際に商品を利用しているイメージなど、商品のベネフィットを直接的に表現」、オウンドメディアでは「環境保全をメインとしながらも、髪の技術に関するコラムを発信」しており、商品購入ページへと導線をつなげています。
このように訴求内容は異なるものの、自社製品である『Botanist』のブランドコンセプトである「植物と共に生きる」の軸からは外さずに、”環境保全”や”緑”などといった社会的価値を訴求しつつ、自社製品の購入促進につなげている戦略をとっていることが分かります。そうすることで、どの情報媒体を起点としても、ターゲットとしているユーザーの興味・関心が薄れることないため、商品購入に至るまでの離脱防止を図っていると思われます。
オウンドメディアの活用により新規獲得や既存顧客との関係性維持が期待できる一方で、運営における課題を感じている企業も多くいると思われます。実際に「コンテンツを頻繁に作成し続けるためのリソースが足りていない」「制作にかける時間やコストが効果と釣り合わない」「短期的な効果が出にくくモチベーションを維持するのが大変」と意見が様々な挙がる中、約6割もの企業が「コンテンツ数の維持」に悩みを抱えています。また、約4割の企業は「コンテンツの質」を課題に感じていることから、ユーザーが求めている内容(質)を担保しながら、コンテンツの発信を続けていくことに多くの企業が課題を感じているのではないでしょうか。
そこで、「オウンドメディアにおいてユーザーが求めている発信内容をいかにして効果的に訴求していくか」について、実際の弊社のご支援スキームに沿ってご紹介いたします(実際にはクライアント様の目的やご意向によって、ご支援内容およびスキームは変わります)
まず初めに考えないといけないのが”誰”に訴求していくかという、ターゲットとしていくユーザータイプの選定です。ユーザーに求められるコンテンツを企画していくためには、このユーザータイプをしっかりと定めていく必要があります。ここで気を付けなければならないことは、ユーザータイプの分類を性別・年代といった基本属性の区分だけで終わらせないことです。
基本属性のみの区分では緩く、ユーザーの課題感やニーズまでを捉えることができずに軸がブレてしまう可能性が高くなってしまいます。そのため、基本属性以外にも、商品・サービスに対して「どの程度の理解度なのか」「どの媒体を活用して情報を収集するのか」「価格の受容性はどの程度か」「どの基準を購買の決め手をしているのか」など、ユーザーのタイプを心理状況(行動・意識)レベルまで落とし込むことが必要であり、そうすることで、課題感やニーズをしっかりと捉えることが可能となります。
心理状況まで分解するためには、デスクリサーチや消費者調査の実施、また実際に店舗などに足を運び観察することで、ユーザーの購買実態を分析していくことが必要となります。こうして作成したユーザータイプは、概算した市場規模やクライアント様の目的を基に、優先順位付けを行います。
次に、step1で設計した(優先順位の高い)ユーザータイプごとに、ファネルに沿ったユースケースおよび提供価値を整理していきます。
ファネルとは、ユーザーが商品・サービスを認知するところから購入に至るまでの、行動・意識の変化を表し、ここでは4ステップ(「認知・喚起」⇒「興味・関心」⇒「比較・検討」⇒「購入」)に分けて、コンテンツを検討していきます。ユーザーが求めるコンテンツを提供して、ユーザーの課題感・ニーズを充足していくことで、次のファネル(心理状況)への移行を目指していきます。
ユースケースの検討を終えた後は、ユーザータイプごとに、「どのようなコンテンツ」を「どのようなタッチポイント」で提供すべきなのかを検討していく必要があります。コンテンツについては、step2で検討した提供価値に紐づく内容となり、タッチポイントについては、HPやSNSといった「オンライン」だけでなく、店舗やリアルイベントといった「オフライン」も合わせて検討していきます。
このようにして、コンテンツとタッチポイントを整理することで、「オウンドメディアでどのようなコンテンツを発信していくべきか」だけでなく、「各媒体の訴求目的は何か、どのような心理状況のユーザーに対して活用するか」といったことも明確となっていきます。
最後に、オウンドメディアのサイト構成案およびコンテンツ企画案を設計していきます。サイト構成案の検討では、今までのstep1~3で整理してきたユースケースなどを基に、オウンドメディアの構成要素を具体化していきます。この時、ゴールに向けて”段階的”に設計していくことが必要です。例えば、短期的には「オウンドメディアの立ち上げとブランディングの実行」、中期的には「リード施策と継続的UXの改善」、最後には「顧客接点強化」を目指していくことで、どの段階で「何の要素が必要」であるか、「どの媒体と連携していく必要」があるか、を洗い出しながら設計していきます。サイト構成案の検討の際には、他社のサイト構成を調査・分析して参考にしてみると良いでしょう。
コンテンツ企画案では、コンテンツのカテゴリごとに企画案を具体化していきます。コンテンツの「背景・目的は何か」「どのようなユーザーを想定しているか」「KPIを何とするか」「テキスト量や公開タイミングはどうするか」「アウトプットイメージはどのようになるか」など、細かいレベル企画していくことで、意味のあるコンテンツを設計していくことが可能となります。
本稿では、オウンドメディアにおける課題に対する、弊社のご支援の流れについてご紹介いたしましたが、あくまで一例であり、実際にはクライアント様の目的やご意向によって、柔軟に対応しております。弊社では、戦略から実行までを求められるデジタルマーケティングにも強みを持っております。「事業戦略の理解」⇒「現状分析」⇒「マーケティング戦略立案」⇒「施策立案」⇒「実行/運用」といった一気通貫したご支援や、自社ブランドの事業展開で培ってきたナレッジを惜しみなくご提供させていただくことにより、他のコンサルディング会社やマーケティング会社、広告代理店にはない”価値”をクライアント様に届けております。
オウンドメディアやデジタルマーケティングの運用に課題を感じている企業の担当者様、弊社のご支援・ご提案に興味を持っていただけた企業の担当者様、まずは下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト