AC社長ブログ「ともに、つくる」vol.101

MAMAGOCOROサービス終了のお知らせ

4月の最終週の発送をもって2012年より11年間続いた九州野菜宅配便MAMAGOCOROのサービスを終了しました。

最近入社した方々には「なんか、野菜のビジネスしてるらしいよ」くらいの認識かもしれません。もしかしたら「なんか、社長のお母さんがやってるらしいよ」とか曰くありげな感じかもしれません。

 

実はこのMAMAGOCORO、現在の当社の事業の中でも最も古いものです。当社はアーツアンドクラフツの名の通り、「つくる」をテーマに始まった会社です。その最初期の私たちは、表現としてのアートやジュエリーのような「つくる」と合わせて、農作物も同じく「つくる」という概念の範囲として捉えていました。そうして、農作物をつくる農家さんと関わる事業として始めたのがMAMAGOCOROでした。まだithも始まってない、コンサルの仕事も受注してない頃のことです。

 

私や吉田役員、三浦役員の故郷である福岡に糸島という海と山に恵まれた美しい田舎があります。当時、そこで生産される野菜は糸島野菜として九州では密かな人気を呼んでいました。

「その糸島の農家さんから野菜を直接仕入れて全国のご家庭に送ろう!」

とっても良いアイデアだと思った我々は早速現地に飛びました。でも事業はアイデアだけでは成り立ちません。

 

糸島野菜を産直で東京のご家庭に届ける為には、まず現地の農家さんと契約しなければなりません。その為には、現地に入り良い農家さんの情報を集め、そこに通い交渉し、契約にこぎつける必要があります。もちろん田舎なのでよそ者には厳しいです。本気ならそこに住み込む気概が必要です。

次に発送する為には、それまでに数ある農家さんをまわり野菜をピックアップし、集配所に集めて袋詰め、箱詰めの作業が必要です。キャベツや時には米などを大人数分集め、各ご家庭用に分ける作業はかなりの肉体労働です。また発送日の早朝は朝採れ野菜を仕入れにまだ暗い内から働き始めることもあります。

その他、お客様からの電話でのお問い合わせ、手紙のやり取りなど、それこそ野菜の宅配便は毎週のものですし、お客様にとっては毎食の楽しみでもありますから要望は細かくなりますし、タイムリーにコミュニケーションを求められる為、常に連絡が取れる状態にしておかねばなりません。

 

「はて、困った。良いアイデアだと思ったのに、そんな大変なこと誰がやるんだよ!?」

宮崎、吉田、平田、三浦の四人は困りました。

「お母さんが良いんじゃないか!」

四人は次なる良いアイデアを思いつきました。

 

私の母、この会社での通称「美子さん」は当時夫を亡くし、福岡市内で一人暮らし、パートの仕事をしながら慎ましやかに暮らしていました。震災の後に、私を心配して食材を送ったりしてくれる普通の優しい母でした。ちなみに吉田役員のことは小学生から「テイシンクン」、平田役員のことは10代から「ヒサオクン」と呼ぶ見知った仲。

そんなある日、息子とその子供の頃から知る友達が突然やってきて「今の家と職を捨て、糸島へ移住し、農家さんとの契約を取り付け、お客様の要望を聞き、毎週野菜を送り届けるように」とお願いされます。

 

それから12年間、美子さんは文字通り雨の日も風の日も、年末年始以外は毎週、野菜を集め必ずお客様へ届け続けました。

あの頃の会社には今の取締役と美子さんしか居なかったのに、いつの間にか150人を超える社員となった今も、糸島の小さな発送所兼自宅で美子さんは同世代のパートさんと二人で毎週腰を曲げながら野菜を箱詰めしてきました。

いつしか、アーツアンドクラフツにはブランドとコンサルという二つの主事業が立ち上がり、野菜の事業のことは人々の記憶から風化されていっても、美子さんは一人で大切な顧客と日々電話や手紙で丁寧にやり取りを続けてきました。

 

創業メンバーの「とっても良いアイデア」から始まったMAMAGOCOROは、お客様から本当に惜しまれつつ事業を終えます。12年間、「現場」でお客様と農家さんと向き合い続けたのは、私や他の役員ではなく、美子さんでした。

美子さんに会ったことない社員のみんなにも、MAMAGOCOROに興味がなかった社員のみんなにもぜひ知ってもらいたい。美子さんもこの会社の一社員として、みんなと同じように会社にとって最も大切で真実が詰まった「現場」を支えてきたということを。

 

美子さん、おつかれさまでした。

そして、美子さんをはじめ現場を支える全てのみんなにありがとう。

 

宮﨑

「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。

宮﨑晋之介

アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。