AC社長ブログ「ともに、つくる」vol.88

内定式

10月2日、ブランド事業部4名、C&S事業部3名の2024年度新卒内定者を迎え、内定式を開催しました。

そこで、私からは内定者の皆さんに社会人となるにあたって企業が求めることについてお話をさせていただきました。

 

実は私自身今年になって新卒社員に何を求めるのかが分からなくなってきていました。その理由はAIの台頭です。

以前から私は新卒の最終面接ではその人が学業で何を学んできたかを掘り下げてディスカッションするようにしています。履歴書を見て、自分がよく知らない分野の学科の際は、事前に少し調べてから面接に挑んでいるのですが、今年からその調査にAIチャットを取り入れています。

AIチャットの性能は非常に高く、小一時間でもその分野について対話をすればとても多くの知識や示唆を得ることができます。その上で、翌日に面接をすると、正直ほとんどの学生の受け答えはAIほど刺激的ではないことに気が付きます。これって、もはや若者が知識レベルでAIに対抗するのは難しいということなんじゃないかとすら思えてきます。

 

じゃあ、その時に、私たちは改めて若者に何を求めるのか?

私の中でもまだ考え中ではありますが、もうそれは知識とかスキルとかではなく、感情のようなものなのかな〜と思い始めています。一言で表すと「若者らしさ」なのかな。

若いうちって、心の箱がまだ全然整っていません。それは小さかったり、いびつだったり、穴だらけだったり様々です。社会で揉まれるに連れて、その箱は大きくしっかりとした形になっていくものです。一方で、その心の箱に入っている感情の容量は若い方が圧倒的に多い。小さくいびつな箱に大量の感情が溢れているのですから、それは大きく波打って溢れる、言わば台風直下の海のような状態です。

この心のアンバランスさこそが「若者らしさ」なんだと思います。

 

心がアンバランスだからこそ、若者は時に大人が取らないような行動に出ます。悔しく人前で泣き出したり、怒りで廊下の壁を殴ったり、嬉しくてハメを外したり、そんなアンバランスが故の感情表現こそ、いま私たち企業が求めていることなんじゃないかと、私は考え始めています。

予測不可能な若者の行動(感情が溢れ出す表現)は、私たち大人で構成された組織を戸惑わせます。実際、もし現場でそんな局面に出くわしたら私も「ホント勘弁してよ〜」って今でも思うことでしょう。しかし、その組織にとっての不確定要因が、組織を予測を超えたどこかへ連れて行ってくれるのかもしれない。そんな風に思います。

 

実際に現在進行形で進む当社のひとつの現場を紹介したいと思います。昨年度にスタートした台湾の現場の話です。

日本から遠く離れ、かつ言語も文化も違う台湾のアトリエづくりは難航を極めています。原因は海外の事情なんかをきちんと汲んだサポート体制や育成プログラムを作ることなしに、急進的に二つもアトリエをオープンさせた私自身の経営判断にありますが、その結果として現場は混乱をきたしていました。そんな現場でつくり手に寄り添い改善を行っている日本のメンバーが3人います。その内の二人はまだ二十代の当社で社会経験を積んできた社員です。

二人を見てると、まさに「若者らしさ」の良い面が溢れています。そもそも志願して混乱した現場に行くのなんて大きな決意と勇気が必要です。完成された大人だったらもしかしたら躊躇する決断を飛び超えてくる根底には、若者らしい自信や、冒険心のようなものが必要です。そして、現地で苦難の連続の中で、その都度本気で悔しがったり、怒ったり、悲しんだり、喜んだりする姿に、それこそ私は最良の「若者らしさ」を見出しています。

 

多くの企業がチャレンジを推奨します。でもチャレンジって言うほど簡単な行為ではないですし、そこにはまさに良い面も悪い面も含んだ「若者らしさ」が詰まっています。そして、企業としてはチャレンジを推奨するならば、その若者らしさの良い面も悪い面も許容する度量がなければいけないんじゃないかなと思います。私たちが若者に「若者らしさ」を求めるならば、そんな覚悟を持って求める必要があるのではないでしょうか。そうしてはじめて、チャレンジが溢れる組織になれるのでしょう。

若者には存分に「若者らしさ」を発揮してもらい、大人は十分にそれを受け止める度量を持つ。それこそ、チャレンジを推奨する我々アーツアンドクラフツの道ではないでしょうか。もちろん、大人(私)も決して「若者らしさ」を失わずに仕事に向き合いたい。私も内定者を前に、改めて思いを固めました。

 

宮﨑

「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。

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宮﨑晋之介

アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。