去る4月14日、台北の中心街から一本入った大安路という路地にith台北アトリエが静かにオープンしました。
ithは開店レセプションのような派手なことはあまり行いません。アトリエも新しさよりも、その街に以前からあったかのように、路地に馴染んだ感じを大切にしてます。それは台北でも、シンガポールでも同じです。
この一年間、海外へアトリエを出す準備をする中で、改めてなんですがithの独自性について気づくことが多いです。最近は、そんな独自性を総称して「路地裏ブランド」と名付けたりしてます。
ブランドの成立には一流の立地と高いメディア露出の二つが不可欠です。例えばラグジュアリーブランドならば世界各地の目抜通りに店を構え、ファッションメディアから常に取り上げられることで人々の欲望を掻き立てます。ブライダルリングも同様でithが登場する以前の時代には中心街の路面店立地、ゼクシィ等ブライダルメディアへの大規模な出稿がブランドの成立要件でした。
そんな中、ithの殆どのアトリエは街の路地裏、更には一階でもなく上の方の階であることもしばしばです。広告もブライダルメディアよりもWEBやSNSが中心です。大多数への訴求よりも、本当に気に入ってくれるだろう方へしっかりとコミュニケーションしていくスタイルをとっています。
結果的に、他の同業ブランドに比べて、ご来店者数は劣りますが、高いご成約率を誇ります。またオーダーメイドという付加価値をお客様にご理解いただくことで高いプライスレンジを実現しています。
今回の海外進出にあたり、このithの特性が世界で通用するのか心配でした。一般的に日本ブランドは海外において集客力のある現地の百貨店やショッピングモールを出店場所に選ぶ中、ひっそりと路地裏にアトリエを出しても大丈夫なのだろうか。
また他のブランドが集客を現地の広告代理店に依頼する中、ithは日本と同様にWEB、SNSによるマーケティングを日本のチームが兼務して行うとしたのも一大決心でした。
他にも、そもそもithのスタイルは趣味趣向が多様化した都市部において成り立つモデルと考えていたので、シンガポールや台北はどうなんだろうという不安もありました。
でも、そんな諸々の心配はすべて杞憂でした。シンガポールも台北も、オープンから今の所とてもご盛況をいただいて、現地は嬉しい悲鳴をあげてます。
この従来の日本ブランドの海外進出の方法と異なる新たな「路地裏ブランド」というスタイルは、実はとても大きな可能性を秘めています。
これまでその意向に従うしかなかった百貨店やショッピングモールから解放され、現地の広告代理店なしで自分達で集客できるということは、ithというブランドを自分達の手で完全なカタチで各国へ伝えていけるということです。それは、成功の可能性を大きく引き上げてくれます。
また従来の海外進出は、体制の上でも、コストの上でも、とても大きな事業にならざるを得ず、特に中小企業にとってはハードルが高いものでしたが、広告、生産、管理を全て日本国内で行い顧客接点の場と人だけを現地につくる私たちのやり方は、小さな会社でも海外でスモールスタートが切れる良い例となるでしょう。
中小の日本のブランドが世界でもっと活躍できる。私たちの手で、そんな道を切り拓いていきましょう。
世界の路地裏から、オンリーワンの感動を!
宮﨑
「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。
アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。