AC社長ブログ「ともに、つくる」vol.75

働き方のアップデート

この下半期から来期にかけて、三つの働き方アップデートの準備が進められています。一つは全社を対象としたもの、後の二つはC&S事業部に向けたものです。本日は各施策のスタートに先駆けて、その意義や目的をお話しします。

 

はじめに私たちが働き方をアップデートしていく意義を考えてみましょう。

私のような経営サイドの人が働き方について語る時、生産性の向上を持ち出すのが常道です。例えばこれが一般的に会社資産とされる工場の機械や在庫の生産性であれば、単純に回転率で判断するのでしょうが、人の生産性ってそんなに単純なものではありません。

なので、私としては紋切り型に生産性向上のために新たな施策を導入しますとは、あまり言いたくないなと思ってます。

 

以前、ブランド事業部のメンバーへの研修の際に、私が生産性の向上を説くと、メンバーはそれを効率よく仕事をすることだと理解してしまったことがあります。そのメンバーは、たくさんよりも、ひとつをたいせつに丁寧な仕事をしたいのだが、経営サイドからは効率よく仕事(=丁寧でない仕事)をするよう求められると悩み苦しんでました。

もちろん、生産性を上げることと効率性を上げることは必ずしも一致しませんし、また効率的な仕事と丁寧な仕事は必ずしも背反する訳でもありません。

 

先日、C&S事業部の若手が、自分の成長の為に目の前の仕事に妥協なく取り組みたいと日々頑張った結果、長時間労働になってしまったという話を聞きました。人材としての資産価値を高める為に、若い内のある時期に集中的に仕事へ取り組むことの効用に、私は肯定的な立場です。

熟練者の1時間と、熟練者になろうと努力する者の1時間の意義は違うものです。しかし、生産性管理上は同じ1時間と見られますし、それが残業ともなればどちらも労務管理上の問題となる1時間にされてしまいます。

 

紋切り型に唱えられた生産性の向上は時に間違った理解を与えてしまうことがあります。また、それに伴う労働時間の管理を語る時に、一人一人の個性や思いやその個人が今どんな社会人フェーズなのかは見えてきません。

では、私たちの働き方アップデートはまず何を目指すのでしょう?

その答えは、働き方の「見える化」だと考えます。

 

お客様の大切なリングつくりの為に一緒にこだわるもう1時間は紛れもなく尊い時間ですし、若い頃のもう一踏ん張りから得られる気づきや自信は確かに存在します。

一方で自分の未熟さゆえに当初の説明が足りず、無駄に長引く接客の1時間もあるでしょうし、こだわりと自己満足を混同してしまった若気の至りな夜もあるでしょう。

 

 

まずは、私たちの働く時間を、その中身をもっと「見える化」すること。それが一つ目の働き方アップデートです。

 

1)チームスピリットの導入(全社)

新たな勤怠管理システムをこの四月から段階的に各部署へ導入し来期からは全部署へ実装します。

チームスピリットは、従来のジョブカンに比べ格段に「見える化」機能が充実しています。もちろん、使い慣れた従来のシステムから新しいシステムへ乗り換えるのは、使う側としては面倒な話だと思います。

ただ既に述べたように、働き方アップデートの第一歩目である各個人の働き方をより「見える化」する目的のためです。みんなが前向きに新たなシステムに適応してくれることを願っています。

 

 

みんなの働き方が「見える化」したら、今度は何が必要になるのでしょうか?

それは個人に合わせた「最適化」です。

1時間って常に同じではありません。例えば、熟練者と初心者の1時間は違います。お客様へ真の意味で献身する1時間と惰性で作業する1時間も違います。

また、どれだけ働くのが適正なのかも異なるものです。例えば、同じ人物でも心が充実している時と、頑張りすぎてメンタルに無理がきている時では働き方は違って然るべきです。

 

そして、その「最適化」の番人になるのがマネージャーや主任です。

例えば、新入社員のその頑張りは本当に意味のあるものなのか、自己満足に過ぎないのか。例えば、そのメンバーの心の状態に合わせて少し仕事のスピードを緩めてあげる必要はないか。細やかにメンバーの状況を把握し、時に挑戦させ、時に休ませ、メンバーを適切に導いてあげながらチームに課された目標の達成を目指すことをマネージャーや主任は求められます。

 

チームスピリットは、個人の働き方のデータをより「見える化」することで、マネージャーがチームを導く為に必要な情報を提供してくれるくれることでしょう。

それと対になり、働き方の「最適化」を促すのが第二の働き方アップデートです。

 

2)フレックス制の導入(C&S事業部)

C&S事業部はこれまで新卒など一部を除き原則的に裁量労働制を採用していました。しかし、特にリモートワークが主流となって以来、個人の自由裁量に全面的に任せる働き方では、個人の働き過ぎを抑制することが困難になっています。

以前であれば、マネージャーがメンバーと同じ空間で仕事をしていたので、例えば若手メンバーがクライアントの意図をそもそも間違って認識して無駄な作業を長時間やっていたりすれば直ぐに方向転換させることが出来ました。

しかしリモートワークではそういう動きが難しく、結果的に長時間労働が日常となり、身体や心に変調をきたすメンバーの数が増えてきていると感じてます。

 

フレックスタイム制は、裁量労働制と異なり、マネージャーがよりしっかりとメンバーの働き方を管理しなければなりません。それは、つまりそのメンバーにとっての働き方の「最適化」を図らねばならないということです。

マネージャーにとっては、管理コストが上がるので面倒が増えるかもしれません。

ただ個人の働き方の「最適化」により、生産性を伸ばしていくという困難ではあるが本質的な目的の達成には、マネージャーの力が必要です。良き環境を、理想の組織の為に、マネージャーの力を貸してください。

 

 

最後三つ目のアップデートは、そのマネージャーの働き方についてです。

 

3)管理監督者の導入(C&S事業部)

管理監督者とは、つまり経営者と密接な立場にあり、経営方針や人事についての発言権を持ち、自らの裁量で働き、その下のレイヤーより報酬が高い立場にある者に適応することが出来る働き方です。

C&S事業部が目指すのは、自治組織です。私たちは、それが本来のファームのあるべき姿であると考えています。

だからこそ、C&Sのマネージャーは多くの役割を負います。事業部の経営に参画し、人事においては採用や教育業務の分担、評価の合議を行いますし、今回のフレックス制導入においても新たな働き方や人材管理、評価の方法はマネージャーレベルの議論によって形作られていきます。

私や平田役員にとって、マネージャーは理想を共有し、役割を分け合い、ともにつくりあげる、事業部の共同経営チームです。今回、そのマネージャーを従来の裁量労働制から、名実ともに管理監督者へ移行します。

 

先日マネージャーと今後の人事の変更をともに考える会を開きました。その時にマネージャーの裁量労働制から管理監督者への移行について、マネージャーのみんなとの議論の中で管理監督者になるメリット・デメリット論ばかりに終始してしまったことを、実はその後に後悔しました。

あの時、ともに事業部を経営するマネージャーと改めて共有するべきだったのは、まずは理想でしょうし、その上で話し合うべきだったのはメリット・デメリットではなく、権利と義務だったのでしょう。

 

ケネディが大統領就任の演説で「国があなたのために何ができるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うて欲しい。」と語りかけたのは有名ですが、私もマネージャーを管理監督者として心からの信頼と対等の精神をもって遇するならば、先日の会議では同じくそう語りかけるべきだったのでしょう。

ケネディは演説を「我々の愛する地を導くために共に前進しようではないか」と結びました。マネージャーのみんな、我々の理想の組織をつくるために共に前進しよう。

 

宮﨑

「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。

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宮﨑晋之介

アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。