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2023.02.17

中小企業でも十分にRPA活用できる:請求書発行業務自動化事例紹介

RPAが日本に上陸してから数年たっているが、いまだに中小企業でも普及率年々伸びているとはいえ、は高いとは言えません。2021年末の調査によると、中小企業のRPA導入率は僅か1割にとどまっているようです。中小企業の普及率が高くない原因は様々ではなります。例えば、導入コストの問題、関連知識やスキルの問題、運用できる人材のがいない問題など色々と挙げられますが、そもそも「RPAがどんなことができるのか」というのも原因の一つではあります。特にRPAは「大量重複、かつPCで完結するような業務に向いている」という観点から、「うちみたいな中小企業はそもそもどんなところに使うのか?」と思っている方も少なくはないでしょう。今回は中小企業でも十分にRPAが活用できる請求書発行業務を紹介したいと思います。

「請求書発行」業務はほぼどの企業にとっても不可欠な業務です。他の経理業務と同じく、量が多く、入力やフォーマット変換などの単純作業が多いです。しかも、成長の早い中小企業にとって、事業が拡大すればするほど、請求書発行の量が増え、経理部門の負担もどんどん大きくなります。もちろん、近年請求書のデジタル化もどんどん進んでおり、そもそも紙の請求書は少なくなっているという流れもあるとは言え、紙の請求書が近い将来完全なるなることもないでしょう。今回紹介する企業の中でも、月180時間以上請求書発行業務に時間を取られる企業があります。では、AB二社の「請求書発行業務」RPA化の事例をみていきましょう。

A社請求書発行業務のRPA活用

 多営業所展開のA社はシステムを導入し、請求書発行業務はほぼシステムで行っているが、システム操作の手作業部分はまだ多くあり、毎月多くの時間が取られている。

 業務の流れを簡単に説明すると、以下の図1になります:

図1

まず、請求書情報入力の担当者が毎日各営業所で請求書情報を定形のExcelフォーマットに入力し、メールで経理部門へ送付します。経理部門がメールを受け取り(請求書情報取得)、その中の請求書情報をみて、営業が契約時にシステム内に入力した請求書情報などとあっているかをチェックします(請求書情報照合)。この段階では、すでに多くの作業が発生します。そして、請求書発行リストを作成するために、システムから「未入金一覧」CSVファイルを出力し、必要なフォーマットに変換します。続いて、担当者がリストを見て、請求書発行対象外(日付はまだ先なものなど)項目を見つけ出し、消します。これで請求書発行リスト(Excelファイル)は出来上がりです。そして、この請求書発リストを「請求金額計算システム」にインポートし、「請求金額計算」(値引きなどの情報)を行います。Excelファイルをインポートすればシステムが自動計算しますが、ファイル形式変換やインポート実行などは手で作業しないといけないです。計算終わったら、システムから請求金額の計算結果ファイルが作られ、このファイルをシステムにインポートします。ここまでようやくシステムから仮請求書(PDF)が発行できます。続いて仮請求書を各営業担当にメールで送信し、内容の確認を行います。請求書の量が多く、メール送付もとても時間かかります。確認結果が営業からメールで返信され、修正点があれば経理が返信通り、そのまま修正します。問題なければそのまま本番の請求書発行に入ります。

 以上のプロセスはほぼシステムを利用しているが、手で操作する部分がとても多く、毎月大量必要な時間が多く、経理担当者への負担が大きいです。しかし、詳しく見ると、これらの操作は大まか三つに分けられます:システム操作、Excelファイル変換、データ照合です。いずれもRPAの得意分野であり、RPA導入方法すると以下のように、営業確認の段階以外、ほぼ全てRPA化可能です。

図2              

このように、請求書情報はRPAがメールの中のExcelファイルを取得し、システムの中の情報と照合します。そのあと、事前に定義した書式に変換し、金額計算のシステムにインポートします。終わったらそのまま計算結果をシステムに取り込みます。そして、仮請求書PDFを発行し、定形メールを各担当者に送ります。この一連の作業はほぼ中断せずにRPA化することが可能です。経理担当者はただRPAが処理できないエラーやイレギュラーなどを対応すればよいので、大幅に時間を節約ができます。

B社請求書発行業務のRPA活用

 B社はA社と異なり、元々のシステムでは請求書発行の機能は含まれ、中間ファイルファイル変換の回数もそれほど多くありません。

図3

3のように、まず各営業担当が入力した請求書情報を社内のシステムから取得します。発行段階前に、すでに金額等を確認済みのため、もう一度確認する必要はありません。そして、システムから未入金一覧リストCSVを出力し、編集しやすくするために書式変更等もします。また、そのなかから請求書発行対象外(日付はまだ先なもの等)を消します(請求書発行対象リスト作成)。量が多く、この段階まで、毎月40時間以上かかっています。また、一部の請求書は取引先のご要望により一枚を複数枚に分割することもあります。そして、請求書を印刷し、郵送します。一部は相手の要望で、PDFで発行し、メール送付になります。この印刷段階に一つの問題として、システム上印刷は一括できなく、20枚単位の印刷しかできません。そのため、人が複数回操作しないといけないので、他の作業に集中するのが難しいです。

この流れを見て、やはり完全にRPA化するのが難しいかもしれませんが、うまく使い、効率向上の方法はまだあります。

図4

図4のように、請求書情報取得から請求書発行対象リストまではRPA化可能です。なぜなら、こちらはExcelやシステム操作がメインからです。発行対象外業務のピックアップも事前に定義すれば、RPAも対応可能となります。請求書分割はやはり基準があいまいなので、手作業で行うしかないです。また、請求書印刷も簡単に自動化可能です。印刷対象を選択し、印刷ボタンを押すだけのロボットがホントに必要なのか?という疑問があるかもしれませんが、実際、B社毎月印刷だけで5時間がかかっています。この作業はRPAを夜中で完了させたら、とても楽になると担当者も実際言いました。郵送はどうしても手作業になりますので、RPA化は難しいです。また、その中の一部はPDFになっているため、こちらにかんしてはPDF発行をし、そのあと取引先のメールアドレスで定型文を自動送信することはできます。ただし、現状送付する前に一度目視確認が必要のため、やはりRPA化しないという方針ですすめました。

まとめ

A社とB社双方とも自分のシステムを有していますが、現在のシステムは全ての経理業務をスムーズに対応できるかと言ったら、実際そうではありません。特にA社の場合、システムが様々な機能があるようにみえるが、中間ファイル変換など、手作業が必要のため、手間がかかります。実際A社はシステム自体を変更する検討もしたが、その場合請求書発行業務を全て電子化するなどが実現でき、RPA等がなくても現在より効率よく動くでしょう。ただし、いくつかの問題が生じます。まず、このシステムは今回紹介した業務のみではなく、全社の各部門が使われているシステムになります。このシステムを変えるというのは、全社今までの業務プロセスを全てみなおさないといけないのを意味します。また、従業員が操作を覚えるのに時間も必要のため、すぐには導入できないでしょう。最後に、システムを全て変える費用も大きくなります。

以上のように、様々な原因により、システムを変えることができない場合が多々あります。この場合、RPAであれば、現在の業務プロセスを大きく変更せず、効率向上することが実現できます。RPAの導入期間は会社の会計システムより短く、操作を覚えるのも簡単です。B社も場合は、まさに一部の作業を自動化することにより、効率向上を図る良い例です。

A社B社のように、請求書発行業務に負荷を感じている中小企業もたくさんあるでしょう。業務改善を検討している中小企業もぜひRPAも検討してみれば幸いです。

 

王 立云

アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
2016年上智大学大学院経営学部卒業、大手量販店入社。2018年当社入社、Consulting & Solution事業部にて戦略コンサルティング案件、BRP、RPAを始めた業務改善に伴うITコンサルティングなど、豊富な実績を有する。社内効率化のために、最適なソリューションをご提案いたします。