KNOWLEDGE & INSIGHTS

注目されるケース面接~3パターンと4つの解決ステップ~

ケース面接とは

ケース面接が近年注目される理由

ケース面接は外資系企業を中心に新卒・中途を問わず行われている面接形式です。近年では海外だけにとどまらずコンサル業界や、一部のベンチャー企業、商社でも採用面接において、ケース面接が取り入れられるケースが増えてきています。ケース面接を通して、企業は応募者の論理的な思考力(ロジカルシンキング)やコミュニケーション能力、思考の柔軟性など働くための素養を複合的に判断します。

本記事では、ケース面接を受ける方や、興味のある方に向けて、ケース面接のパターンや解法、例題を紹介いたします。

ケース面接の概要

ケース面接とは、「企業の面接官から与えられた何かしらの課題を有する状況に対して、自身で前提を設定し、知識を基に合理的な仮定とロジックを駆使して、構造化及び分析を行い、打ち手を提案する短時間のシミュレーション」のことを指します。つまり、ビジネスから社会一般、日常のあらゆる問題まで、自分なりの最善解を創り上げていく知的プロセスとも言えます。

ケース面接において評価される主なポイント

ケース面接において評価される主なポイントとして、「1.論理的思考力があるか?」、「2.コミュニケーション能力があるか?」、「3.志向の柔軟性があるか?」の3点があります。

  1. 論理的思考力があるか?:論理的思考力は、ケース面接を通じて最も重視される要素です。課題を簡潔かつ、論理的に整理して結論に導いているか、矛盾点の無い一貫した思考になっているかなどが評価される際の基準。
  2. コミュニケーション能力があるか?:一般的な面接と同様、ケース面接においても面接官と意思の疎通ができるかは重要なポイントです。特に自身の打ち手に対する質疑応答では、面接官からの質問を聞き、正確に答えることや、打ち手に対する説明不足な点を補い、改めて解説するなど、論理的思考力に加えて、コミュニケーション能力も評価されます。
  3. 思考の柔軟性があるか?:一般的な面接と比べ、応募者の回答した打ち手に対する面接官からのフィードバックや、打ち手に対して自身が想定していなかった質問をされることもあるのが、ケース面接の特徴のひとつです。そのような場面で面接官は、応募者の対応力の高さや、指摘を受け入れる素直さを見ることで、思考の柔軟性があるかを評価しています。

 

ケース面接の代表的な2つのパターン

ケース面接で出題される問題解決のケースはパターン化することができ、「集団ケース」と「個人ケース」に大別されます。

集団ケース

「集団の効用」を目的とするケースを示しています。

ケースの例には、「マクドナルドの売上を上げるには」「ホノルルマラソンの日本人参加者を増やすには」「花粉症患者を減らすには」といった集団の金銭的・非金銭的価値に関する問題解決が含まれます。

個人ケース

「個人の効用」を目的とするケースを示しています。

ケースの例には「睡眠を改善するには」「ボーリングのスコアを上げるには」「ランニングを続けるには」といった個人の金銭的・非金銭的価値に関する問題解決が含まれます。

 

ケース問題の4つの解決ステップ

ケース面接の問題解決の方法は「1.前提確認」「2.現状分析」「3.打ち手立案」「4.打ち手評価」の4つの解決ステップで成り立っています。

  1. 前提確認:ケース問題の多くは条件設定が曖昧な箇所が多いため、以下の3点を確認する必要があります。
    • クライアントの特定:クライアントによって打ち手が制限されるため、問題解決の当事者を設定します。「都道府県」や「企業の部長」など具体的に当事者が誰なのかを明確にします。
    • 目標の具体化:目標はできるだけ定量的かつ具体的に決定します。なぜなら、曖昧な目標を設定した場合、最後に目標が達成されたかの判断が困難になってしまうからです。例えば「電車の混雑率を120%から100%に低下させる」など定量的な数値を用いることで、目標を具体化できます。
    • 語句の定義:曖昧な語句については、どのような定義とするのかを、定めておきます。これは、面接官と応募者の間で、同じ語句において、意味や解釈の相違が発生することを避けるためです。例えば、「通勤ラッシュの時間帯のような単語は、6時半~8時半の2時間とする」や、「混雑具合のような定性的な単語は、混雑率等を用いて定量化する」等、客観的に見て分かりやすい語句に置き換えるようにします。
  2. 現状分析:「3C」、「4P」、「AIDMA」などのビジネス系フレームワークや「需要供給」、「インプット・アウトプット」などの非ビジネス系フレームワーク等を用いてケース問題の内容を整理・把握し、ボトルネックを突き止めます。
  3. 打ち手立案:ボトルネックに対し、モレやダブりが無いよう、MECEMutually Exclusive, Collectively Exhaustive)に打ち手を出していきます。MECEとは、漏れなく、重複なくという意味の造語です。この言葉が表すように、物事を分析する際には要素を漏れなく、かつ重複なく切り分けることが、論理的な思考力(ロジカルシンキング)の基本とされています。
  4. 打ち手評価:複数の打ち手を評価し、優先順位付けを行います。評価軸としては「効果」「コスト」「リスク」「時間」などが存在し、これらを組み合わせて、打ち手を多面的に評価します。

 

ケース問題の例題と回答

今記事では、「東京都の花粉症患者を減らすには」を例題として紹介します。上記で紹介した4つの解法ステップに準じて進めますので皆さんも一緒に解いてみてください。

    1. 前提確認

    日本で毎年2,000万人以上がかかっているという国民病ともいうべき花粉症について、花粉症患者が増加し続けてきている状況を重く見た東京都から「都民への花粉症被害を軽減したい」と相談を受けたとします。なお、「花粉症被害の軽減」を「花粉症の症状を呈する都民の人数の減少」と定義し、本ケースでは花粉症の最もメジャーな原因であるスギに話を絞ります。また、今回のケースに該当します。

    1. 現状分析

         はじめに、花粉症が起こるメカニズムを確認します。花粉を吸引し、人間の蓄積できる限界を超えることにより、過剰な免疫反応としてのアレルギーが起こることが花粉症です。プロセス全体を人が間接的に関わる部分(加害者側)と人が直接的にかかわる部分(被害者側)に分かれます。

        人が間接的にかかわる部分(加害者側)のプロセスは「スギの存在」→「花粉発生」→「市街地到達」という3ステップとなり、市街地に到達したトータルのスギ花粉到達量を、(A)スギの本数×(B)1本あたり花粉発生量×(C)市街地到達率で表すことで式に表すことができます。

        人が直接的にかかわる部分(被害者側)のプロセスは「(D)花粉吸引」→「(E)免疫獲得」→「(F)発症」となります。

        発生した花粉が(C)市街地到達することを抑えるため、アスファルトを減らし土の地面を増やすことで、落下した花粉のバクテリアによる分解を促進する対策も、現実に行われているようですが、局所的な打ち手にとどまるため、ボトルネックとしては十分でないと思われます。また、現在の医学では花粉を吸引したあとに(E)免疫獲得を抑制する方法はないようです。そのため、このケースでは残りの(A)(B)(D)(F)4つに注目します。

         

        1. 打ち手立案

        (A)スギの本数⇒「スギを他の品種で代替する」

        スギの単純伐採を行う方法と、スギを別の植物で代替する方法が考えられます。森林が保水機能や地盤の保持機能を担っていることを考えると、後者がより現実的ではないかと考えられます。

        (B)1本あたり花粉発生量⇒「スギ林の手入れをする」

        スギは材木にするときは若い樹齢で伐採されますが、手入れを怠ったまま、樹齢を重ねると、多くの花粉を飛ばすようになるそうです。そのため、現在管理人不足でスギ林が荒れていると考え、東京都が業者に伐採を依頼し、スギ林の整備を行うことが考えられます。

        (D)花粉吸引⇒「花粉症対策メガネの着用を推奨する」

        花粉に対する直接的な防衛策として、患者・非患者を問わず、花粉症対策メガネの着用を徹底することが考えられます。

        (F)発症⇒「症状抑制の薬剤開発を推進する」

        現在、根本治療法はないため、アレルギーを抑える投薬治療や目薬鼻のレーザー治療などの対症療法がメインとなっています。そのため、東京都がより効果的で副作用の少ない抗アレルギー剤の開発援助を大学や民間の研究機関に行う施策が考えられます。

        1. 打ち手評価

         

        それぞれの打ち手を「効果性」、「実現可能性」、「即効性」を各3点の合計9点満点で評価し、優先順位が高い順に並べました。

        (B)1本あたり花粉発生量「スギ林の手入れをする」:花粉の源である荒れたスギ林だけに絞って手入れすることで、花粉の発生量の劇的な減少をもたらし、かつ全体を植え替えるより、より効率的に作業が完了できると考えます。ただし、今後も管理が継続的になされるよう、スギ林の所有者に働きかけていく必要があります。

        <評価:9点>効果性:3点、実現可能性:3点、即効性:3

         

        (D)花粉吸引「花粉症対策メガネの着用を推奨する」:最も安価で簡単に行うことができ、一定の効果が期待できますが花粉症対策メガネを付けることに抵抗を示す人が多いことが予想され、実現可能性は低いのではないでしょうか。

        <評価:7点>効果性:3点、実現可能性:1点、即効性:3

         

        (A)スギの本数「スギを他の品種で代替する」:荒れたスギ林を他の無害な品種に植え替えていくことで、実現すればスギによる花粉症をかなり減らせると思いますが、スギの保水効果や地盤の維持効果などを考えると、一気に進めると洪水やがけ崩れの危険があるため、段階的に進めざるを得ません。そのため、効果が出るまで長期間かかり、多くのコストがかかることが予想されるため、あまり効率的な方法ではないと考えます。

        <評価:6点>効果性:3点、実現可能性:2点、即効性:1

         

        (F)発症「症状抑制の薬剤開発を推進する」:新薬開発は成果を長期間待つ必要があり、成果自体も不確実です。また既に、毎日服用しても副作用が少ない抗アレルギー剤や鼻づまりの薬は存在するため、これ以上の改善は優先度が低いのではと思われます。

        <評価:5点>効果性:2点、実現可能性:2点、即効性:1

        まとめ

        ケース面接は、与えられた課題に対して制限時間内に解決方法を回答する面接であり、コンサル業界や、一部のベンチャー企業、商社でも採用面接において、取り入れられています。

        課題には「集団ケース」と「個人ケース」の2つのパターンがあり、解法は「前提確認」「現状分析」「打ち手立案」「打ち手評価」の4ステップに分類されます。

        回答において評価される3つのポイントは「論理的な思考力」「コミュニケーション能力」「思考の柔軟性」です。

         実際のケース面接では回答の際の面接官とのディスカッションで、かなり細かな部分まで指摘されたり、間違いや論理の破綻を指摘されたりすることも多々あります。そのため、入念な対策だけでなく、相手の指摘をきちんと吸収し、自分なりの考えを出そうとする姿勢も大切になります。

         最後になりますが、回答を出すためのきっかけとしてパターンと解法の利用、そして企業がケース面接を課する目的を意識したうえで、臨むことがケース面接を突破するための重要な要因だと考えます。決して簡単な試験ではありませんが、コツコツと練習問題に取り組むことで、パターンや解法は使いこなすことができるようになると思います。本記事が、ケース面接を受ける、興味のある方の一助になれば幸いです。

        <参考>

        佐藤 寛太

        アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト