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輸送領域におけるCO2排出量計算ツールについて

はじめに:CO2排出量計算の重要性

 世界で進んでいる環境破壊や資源の枯渇に対処するためには、私たちが日常生活を送る上で発生する環境コスト(車や電気等の利用)を経済システムに組み込み、環境保全や枯渇性資源の利用を削減する取り組みを推進する環境税制が重要な役割を果たしているといえる。その中で、CO2排出量が環境破壊の大きいパーセンテージを占めており、CO2排出量の削減ができれば、環境破壊に大いに貢献できるといえる。そのため、まずはCO2排出量、特に輸送領域におけるCO2排出量の計算が非常に重要になってくる。本篇は原材料の調達や商品の運送など輸送領域で大きなコストをかかっている業界、例えば、小売業界やアパレル業界などに向けて、輸送領域における最も代表的なCO2排出量の計算ツールを紹介する。

日本における環境税・炭素税について

 「環境税」とは何か、具体的に何を環境税と呼ぶのか明確な基準がなく、あいまいに使われているのが現状であるが、環境負荷の低減と、環境保全推進のためのインセンティブ(誘導)の付加、税収による環境保全や、その他の政策への貢献などのポイントが読み取れる。

 「炭素税」は「環境税」の一種で、炭素の含有量に応じて税金をかけて、製品の製造・使用の価格を引き上げることで炭素の需要を抑制し、結果としてCO2排出量を抑えるという経済的な政策手段である。カーボン・オフセット1、カーボン・クレジット2などの手段もCO2排出量を削減する手段であり、今炭素税やCO2排出量の削減が注目されている。

 現状、日本の環境関連税は、他の先進諸国と比較すると、課税対象の範囲、税率の設定方法、新規税の導入方法などが大きく異なり、日本では環境負荷の低減を目的としている環境関連税はわずかしかない。このような税制では、環境保全や財政赤字に対して包括的に対応するには不十分であり、環境負荷の原因となる対象に対して積極的に課税していくという、欧州諸国に見られるような環境税制を取り入れていく必要があるといえる。

CO2排出量計算のツール「EcoTransIT

https://www.ecotransit.org/en/ 

 EcoTransIT Worldはエネルギー消費量、CO2排出量、大気汚染物質、および外部コストの自動計算分野において世界中で最も広く使用されているソフトウェアである。

EcoTransIT Worldの開発背景】

 物資の輸送量とそれに伴う環境汚染は、近年急激に増加しており、交通機関によるCO2排出量は世界中の4分の1を占めているといわれている

 また、環境汚染の報告と削減については、法的要件を適用する必要があり、これは荷送人だけでなく、ロジスティクスサービスプロバイダーや運送業者も要求されていることから、環境への影響を正確に算出・報告するニーズが高まっている

【開発目的】

 上記の背景より、EcoTransITは輸送手段の環境影響を算出し、指標として表せるツールとして開発された。それに、単独の輸送手段だけでなく、マルチモーダルなどでも、環境に影響の少ないルートの探索および最適化が可能である。

【提供される機能】

 様々な企業活動におけるエネルギー消費量、CO2排出量、大気汚染物質、および外部コストの自動計算を自動で行う。例えば、単独の輸送、マルチモーダル、グローバルサプライチェーンなどにおいて、上記の環境影響指標の自動計算が可能である。つまり、単独の輸送手段だけでなく、異なる輸送手段の組み合わせのエネルギー消費量、CO2排出量、大気汚染物質、および外部コストの自動計算を可能にする。

 環境影響が最小になるルートの探索を行い、ルートの最適化が実現できる。大量のGISデータを基にしたマップ情報を備えており、まずはルールの設定がスムーズになれる。なお、単独の輸送手段だけでなく、マルチモーダルのルート探索も可能である。

 個社別の要望に応じたデータ処理が可能であり、EcoTransIT Worldが提供するビジネス ソリューションでは、標準化されたインターフェイスと、特定の顧客の要件に応じた個別のソリューションの対応が可能である。データの収集・分析、データの匿名化、所在地・配送地設定などがカスタマイズで設定できる。

【ツールを提供する機関・組織】

 EcoTransIT World を提供している機関はIVE mbHという機関であり、ドイツに本社を置く鉄道および鉄道交通に関するシステムとソフトウェアの技術プロバイダーである。インフラ事業者、輸送および建設会社、ならびに公的クライアント向けにコンサルティングやリサーチサービスを提供している。1997 年に設立され、2020年の売上高は1,469,212ユーロ(2.12億円)である(従業員数はN/A)。当機関はツール提供だけでなく、専門家によるツール利用に関するトレーニングサービスも提供している。例えば、運用プロセスと車両配備を最適化するツールであるDispoDispo-IRM、省エネ運転や乗り心地などの調査できるツールであるDynamisなどのサービス、製品も存在している。

【導入実績(会社名)】

 DHL

 Nestle

 P&G

 PUMA

CO2排出量計算のツール「GCI

https://globalclimateinitiatives.com/en/home-2/

 GCIGlobal Climate Initiatives)は様々な輸送領域におけるステークホルダーを集めた国際的イニシアチブであり、CO2排出量を正確に測定するGCIツールを提供している。主にCO2排出量を削減するためのベストプラクティスを広げるツールを提供しており、必要に応じて、CO2排出量削減に関するエキスパートに支えられるカスタマイズも可能である。その中で、カーボン・オフセット、カーボン・クレジットを促進するプロジェクト/取り組みの実施も可能である。

GCIの活動内容】

 温室効果ガスの排出を削減するプロジェクトを実施するだけでなく、雇用の創出、地域社会への支援、自然地域の保全と開発も行っている

 あらゆる部門、あらゆる規模の自治体や企業に、参考文献、参考フレームワーク、基準に完全に準拠し、最適な方法で二酸化炭素排出量を計算、削減、相殺するためのオンラインツールを提供している

 プロジェクトを実施するにあたり、環境的及び社会的な要件を満たす定義から実装までサポートを提供している

【導入実績(会社名)】

 Enerlis

 Carrefour

 Andros

 MANEなど2000以上の中小企業や大企業

終わりに

 日本における炭素税がこれから増える一方で、CO2排出量(特に輸送領域におけるCO2排出量)を正確に計算できれば、まずCO2排出量の削減に大きく貢献できるようになる。本記事では、小売業界やアパレル業界などに向けて、EcoTransITGCIを代表で紹介したが、その他にも日本においても多様な計算ツールが存在するため、自社に合ったCO2排出量削減に向けたツール導入含めた対策を検討してみてはいかがだろうか。

 

【注釈】

1カーボン・オフセット: 日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方である。

2カーボン・クレジット: 企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器導入などを行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)をクレジット(排出権)として発行し、他の企業などとの間で取引できるようにする仕組みで、炭素クレジットとも呼ばれている。

 

 【参考資料】

 「環境・持続社会」研究センター(2022)環境税とは

「環境・持続社会」研究センター(2022)温暖化防止のための環境税「炭素税」とは

「環境・持続社会」研究センター(2022)環境税・炭素税 Q&A

環境省(2022)地球環境・国際環境協力

SMBC日興証券(2022)初めてでもわかりやすい用語集

EcoTransIT HP

GCI HP

馬麗芳

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。