「私はあなたの意見には反対だ。 だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」
フランスの啓蒙思想家、ヴォルテールという人の有名な言葉です。これはAC Commonsの一つである多様性を体現する姿勢とも言えます。先日の元首相の訃報に接し、この言葉を思いました。今日は少しコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
私もこの言葉を大切にしていて、仕事で人と接する際にも基本的に何にでも自分の意見を主張したがりです。もちろん、相手の意見は必ず聞きますし、相手が正しければ、自分の意見を変えますよ。ただ時には、相手の意見に対して更に自分の意見で応酬することもあります。いや、やっぱりだいたい応酬します。
私が激しく意見を主張し過ぎることで、人を気後れさせてしまう状況を作ってしまうことは昔からよくあり、特に社長となってからは自らの発言に気をつけるようにしてますが、それでも圧が強いと役員や古くからの社員にはよく諌められます。
ヴォルテールたち啓蒙思想家は、人の理性を信じていましたが、毎日のように不穏なニュースが流れ「話せば分かる」と言ってズドンとやられることもある世界で、相手が必ず理性を持っていると信じるのは難しくもあります。
こちらが理性を持って何かを主張していると相手に信じてもらう為に、私が日頃から気にかけていることは、出来るだけ多くの機会で自分の考えを発信するということです。
いや、それさっきの圧の強い自己主張と何が違うねん!って意見もあるかもしれません。ちょっと違うんで聞いてください。これは、私はどうしても一発のコミュニケーションにおける主張の圧が強過ぎるからこそ、出来るだけ普段から多めに小まめに主張しようという考え方です。
例えば、このブログもそうですね。一回ごとは大した情報量ではないですが、こまめに定期的な情報発信をすることで、なんとなく私の主張をみんなに理解してもらいたいなと思って書いています。何より、そうすることで、対面で話す際に相手が「この人はこういうことを考えている人らしい」とうっすらでも事前に想定してくれることで圧を軽減できます。
これは、主張する権利を守るだけなく、主張しやすい環境も整えるということなのかと思ってます。
あと最近はじめたのが、役員会における経営アジェンダという取り組みです。役員会では事業部や財務の情報が膨大な数値として毎月流れます。役員は全ての数値にアクセスすることができるという意味で、全てを知っている、知っているべきと思うかもしれません。しかし実際は流れる数値が多過ぎて、自分の事業部のこと以外、例えば隣の事業部のことや、財務のことはいまいち把握していなかったりします。
なのにも関わらず、会社全体のことを考え、議論し、方針を決定していかねばなりません。いきおい自分のこと以外に意見を述べることが少なくなったり、またどうせ説明しても意味ないと自分のことをキチンと共有しなくなったりします。それは事業部側も財務側も同様です。
会議に参加する全員が同じレベルで高い情報を持つことで、より建設的な議論をする役員会を目指して始めたのが経営アジェンダという取り組みです。やっていることはシンプルで、話し合った様々な内容を大きなイシューへ編集して、そこに数値を紐づけていくだけです。ただ、色々と多岐に渡る内容をちゃんと数値と紐付けながら幾つかのイシューにしていき、それを継続的にウォッチしていくのって意外と大変です。
往々にして役員会ってどこも儀礼的なシャンシャン会だったり、トップの言いたい放題だったり、ただただ延々と数値が報告される会だったりするもんなんですが、新たな経営アジェンダを使った取り組みはシンプルだからこそ難しいなと思ってます。
これなんかは、主張する権利を守るだけでなく、主張しやすい環境を整え、かつ主張できるよう情報を整理してあげるということかと。
ヴォルテールの言葉から、つらつらと書いてみました。私も社会人歴20年を超えるベテランなのですが、いまだにコミュニケーションの取り方について悩んでいます。当たり前に思っていること程、奥が深い。良い社内コミュニケーションを目指して、今日もがんばります。
宮﨑
「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。
アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。