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脱炭素化社会の実現に向けて企業が取り組んでいる施策とは

日常で見かけるようになった「脱炭素化」という言葉

近年、温暖化対策の関心が高まり、ニュースやネット記事で「脱炭素化」や「カーボンニュートラル」などの言葉を目や耳にすることが増えました。

目にする機会が増えた要因として、2022年10月に、当時の菅義偉内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と、所信表明演説の中で述べたことが考えられます。

そこで今回、「脱炭素化」と一体なんなのか?企業がどのような取り組みを行っているのか?取り組みを行わなかった場合どのような影響が出てくるのか?

といった点に焦点を当て、脱炭素の実例や温暖化が企業に与える影響についてご興味のある方向けに記事にします。

 

「脱炭素化」とは

「脱炭素化」とは、2016年に採択されたパリ協定の「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という内容から始まっています。

このパリ協定を元に菅義偉内閣総理大臣が建てた目標が「二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること」です。

“実質”ゼロとは、温室効果ガスの排出を完全に無くすという意味ではありません。

これは、排出される量と森林などに吸収される量が同じ量であり、バランスがとれている状態になることを指しています。

このバランスがとれている状態を「カーボンニュートラル」、という言葉で表します。

日本においても、激甚な豪雨・台風災害や猛暑が頻発しており、地域は大きな影響を受けています。こうした気象災害等を背景に、2021年6月時点で91の地方自治体が「気候非常事態」を宣言しています。また、昨年 11 月には衆参両議院において、「気候非常事態宣言」が決議されています。以上のことから日本国内において重要視されている取り組みと言えます。

脱炭素が叫ばれている理由は、地球温暖化を食い止めることを目的としています。

 

https://sustainable-switch.jp/decarbonization-210326/

 

以下脱炭素化の取り組みについて紹介します。

脱炭素化の取り組み実例

インターロックの導入による冷凍・冷蔵設備の効率向上

事業者名:株式会社アクシーズ

実装日:2020

冷凍機更新によるフロン冷媒の撤廃と高効率化、インターロックの導入及び施設全体の改修によりCO2排出量を9割近く削減したほか、メンテナンスや社員教育にかかる負担を低減しています。

 

エネルギーコスト削減額:約960万円/

投資回収年数(補助あり):約6

CO2削減量:約366t-CO2/

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/pdf/2021/enetoku_jirei2021.pdfhttps://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/

 

ボトルtoボトルリサイクル拡大による国内PETリサイクルの高度化

 

事業者名:協栄産業株式会社

実装日:2020

 

エネルギーコスト削減額:(新設のため非該当)

投資回収年数(補助あり):約4

CO2削減量:3,087t-CO2/

 

 

 

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/pdf/2021/enetoku_jirei2021.pdfhttps://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/

 

以上、脱炭素化に関する取り組みについてご紹介しましたが、上記取り組み事例の情報では温暖化による影響が企業にどのような財務インパクトを引き起こすことになるのか不透明な状況になっています。

温暖化の影響は台風や土砂災害、突発的な豪雨による洪水、ハリケーン等もありこれらは器物破損により店舗の開店が不可や、天候の影響により作物の高騰など企業の経営に影響を与えています。

例を挙げると、WWFの「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトでは下記7項目を重要視し評価を行っています。

 

・長期的なビジョン

・削減量の単位

・省エネルギー目標

・再生可能エネルギー目標

・総量削減目標の難易度

・ライフサイクル全体での排出量把握・開示

・第3者による評価

 

以上見て取れるようにここでは企業自体の財政にどのような影響が起きるのか分析しているか否かは評価に含まれていません。

そこで活用されるのが、TCFDという組織が推奨している分析方法です。

 

TCFDとは

TCFDとは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)のことを指します。「気候変動が企業や機関の財政面にどのような影響を与えるのか」についての情報開示を推進するため、201512月にG20 の要請を受けた金融安定理事会によって設置されました。

2022127時点で、日本の企業は687社と世界トップの値になっています(2位はイギリスで413社)

https://gurilabo.igrid.co.jp/article/1806/

 

TCFDは、脱炭素化という目的は先ほど紹介した取り組みと同じですが、主な違いは下記となります。

・企業自体が自社に対する影響を分析する

・投資家目線で企業へ投資するリスクを見える化する

 

TCFDが推奨している開示項目

 

TCFD提言に沿った情報開示は、一般にTCFD開示と呼ばれています。情報開示の媒体として有価証券報告書への記載や各社HPで公開する方法があり、企業が投資家に対し、投資判断に有用な情報を開示することにあります。

TCFD開示では、以下の4項目を開示推奨項目としています。

 

①ガバナンス

組織の取締役会が気候関連問題を監視する上でどのような役割を果たしているか、また経営者は気候関連問題を評価・管理する上でどのような役割を果たしているか。この情報があ

ることにより、組織の取締役会、経営者が気候関連問題について適切に注目しているかを判断できます。

 

②戦略

気候変動やそれに伴う社会の変化が企業経営に短期・中期・長期的にどのような影響を与えるのか、組織に期待される将来的なパフォーマンスについての情報を得ることができます。

 

③リスク管理

気候変動のリスクについてどのように認識・評価し、管理しているか。組織全体のリスクを潜在的なものも含めて洗い出し、それを評価する際の材料となります。

 

④指標と目標

組織が気候関連のリスクと機会をどのように判断し、進捗を評価しているか。気候変動によって起こりうる影響と、それに対する管理・適応状況の進捗を正しく評価できると共に、同種セクター、産業における組織比較の基準となります。

 

TCFDが推奨している分析方法

TCFDが推奨している分析方法にシナリオ分析というものがあります。

具体的には2℃シナリオや4℃シナリオが該当します。

この分析方法は将来的に気温上昇が2℃未満に抑えられた場合、4℃上昇に達してしまった場合を想定し財務インパクトがどれほどになるかを分析する方法です。

 

具体例(KIRIN

https://www.kirinholdings.com/jp/impact/env/tcfd/https://www.kirinholdings.com/jp/

 

以上図のように気温上昇により生じる影響を分析しどのような影響が発生するか?その影響は一体どれほどの財務インパクトが生じてしまうのか?明確にするのがシナリオ分析の目的になります。

財務インパクトに関しては「小」、「中」、「大」と分類する企業もあり金額まで詳細に出している企業はまだ少ないですが、どこまで明確にするか、公開するかによって投資家からの評価も左右されていきます。

 

最後に

近年企業が温暖化対策を行っているのは一般化しつつありますが、TCFDの分析のように自社企業が温暖化対策を取らなければどれほどの財務インパクトをもたらすかまでを分析し金額まで開示している企業はまだ少ないのが現状です。実例が少なく金額まで分析するのは難易度が高いと予想されますが、これからの企業計画を立てる上で有意義な取り組みであると考えられます。

 

【参考】

 

山口 圭介

アーツアンドクラフツエンジニア/ITコンサルタント。6年間インフラ業務、RPA開発、導入業務を経験。Uipath、SynchRoid、WinActor、Automation Anywhereなど主流のRPAツールをマスター。現在はRPA開発、ITコンサルタントを担当


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