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近年注目されているDOOHとは?

本記事の概要

2020年から新型コロナウイルスの影響で外出自粛が推奨されていました。しかし、ワクチン接種が進み、外出する機会が以前と比較して増え、屋外広告(OOH:Out Of Home)を目にすることも多くなったのではないでしょうか。この視認性こそがOOHの強みです。一方で、広告主にとって、実際にOOHが見られたのかや、いつOOHが見られたのかが分からない等の弱点がOOHには存在します。しかしながら、通信技術等の発展に伴い、OOHのデジタル化が進んだ結果、新たにデジタルOOH(DOOH:Digital Out Of Home)が登場しました。このDOOHによって、OOHの弱点を解消できるようになってきています。

今記事では、OOHとの違いやDOOHの種類、DOOHを用いた事例等を紹介しております。マーケティングチャネルを検討する際の一助として頂ければ幸いです。

DOOHとは

DOOHとは、Digital Out Of Homeの略称で、デジタルサイネージを利用した屋外広告(OOH:Out Of Home)の総称です。また、OOHは屋外で見かける広告物全般を指します。具体的には、看板や宣伝トラック等が挙げられます。OOHの中でも、電車のドア上部や街中のスクリーンのようなモノがデジタルサイネージであり、DOOHに該当します。日本では、渋谷のスクランブル交差点にある巨大スクリーンが分かりやすい例だと思います。

DOOH市場の概況

OOH市場の中におけるDOOHの市場規模が占める割合は増加しており、市場の成長が見られます。OOH事業を手掛ける株式会社LIVE BOARDによれば、2014年時点でOOH市場全体に占めるDOOHの割合は6.15%だったが、2019年時点では20.8%まで増加しています。また、株式会社CARTA COMMUNICATIONS株式会社デジタルインファクトが共同で調査した結果によると、2020年時点で516億円だったDOOHの市場規模が、2024年には1,022億円となることが予想されています。これらのことから、今後DOOHの市場ははさらなる伸びが期待されており、注目されているマーケティングチャネルの1つであることが分かります。

次章では、なぜDOOHが伸長している理由についてを見ていきます。

DOOHが伸長している理由

DOOHが伸長している理由は、OOHの弱みを解消できるようになったからです。通信技術やデータ取得技術等の進歩によって、DOOHが発展し、広告配信におけるOOHの弱みである「変更・更新が困難」、「パーソナライズ化ができない」、「効果検証が難しい」という3点を解決しました。

この章では、OOHの強みと弱み、そしてDOOHがどのようにしてOOHの弱みを解決しているのかを見ていきます。

【OOHの強み】

  • 大勢へのアプローチ:人通りの多い場所にOOHを設置することで、より多くの人に視認してもらえます。
  • 反復訴求:通勤・通学等の特定の人は、設置されたOOHを何度も見るためで反復して訴求が可能です。

【OHHの弱み】

  • 広告内容の変更・更新が困難:看板等の物理的なOOHは作成・設置に時間が掛かるため、一度設置した広告内容の変更・更新には工数がかかってしまいます。
  • パーソナライズ化ができない:大勢へのアプローチが可能だが、不特定多数へのアプローチになってしまうため、個別最適化された広告の配信ができません。
  • 効果検証が難しい:OOHでは、アプローチした人々の行動を追いづらいため、認知度の向上や購買の促進においてどれくらいの効果があったのかを測定しづらいです。

OOHには、上記のような強みがある一方で、弱みも存在します。しかしながら、様々な技術の進歩によってDOOHはこれらの弱みを解決できるようになりました。

 【DOOHが解決したOOHの弱み】

  •  広告内容の変更・更新:デジタルサイネージをインターネットに繋げることで、広告を時間帯やシチュエーションに合わせて配信できるようになりました。
  • パーソナライズ化:デジタルサイネージに接続されたAIカメラ等によって、見ている人のアイデンティティ(性別や年齢)を識別し、個別ユーザーに合わせた広告配信が実現しています。
  • 効果検証:AIカメラや携帯電話の位置情報を活用することにより、DOOHを視認した可能性のある人数を算出することでインプレッション数を測定できるようになっています。

これら技術の発展によって、DOOHを用いた屋外マーケティングが効率的になり、近年注目を浴びています。

近年注目されているDOOH

前章では、DOOHが伸長している要因をメリットを含めて記載しました。この章では、DOOHの中でも近年注目されているダイナミックDOOHとプログラマティックDOOHを見ていきます。

ダイナミックDOOH

概要

デジタルサイネージ周辺の情報をリアルタイムで反映した広告が配信できるDOOHです。デジタルサイネージをインターネットと接続させることで、センサーやカメラ等のIoT機器にて取得した天候等の周辺の外部情報をリアルタイムで反映させた広告を表示します。広告を見ている人が置かれているシチュエーションをリアルタイムで反映させた広告を配信することで、より広告の訴求効果を高められると言われています。

事例

コカ・コーラボトラーズジャパンは、国内初のプログラマティックDOOHによるマーケティングを実施しています。2017年の夏に東京、大阪、名古屋、札幌、福岡のそれぞれの場所、時間帯、その日の気温等の情報を基に、街中のスクリーンに掲出するメッセージを変える取組によって広告効果の最大化を図りました。例えば、渋谷のスクランブル交差点では、広告視聴者の置かれた状況(時間、気温等)に合わせて「暑さで頭もスクランブル状態だ。」や「誰かハチ公にお水を。」等といったメッセージを配信しました。

プログラマティックDOOH

概要

時間帯や場所ごとにデジタルサイネージにおける広告配信を自動化したDOOHです。センサーによって、広告視聴者の属性や人数を把握できるようになったため、広告配信者は購入したい時間帯及び場所の広告枠を売り手から購入し、自動で配信できるようになりました。これにより、DOOHにおける広告枠の売買や広告配信の自動化、広告効果の測定、広告配信時間・場所の最適化が実現しました。

事例

株式会社LIVEBOARDはDOOHを手掛けています。同社は、複数の異なる場所にプログラマティックOOHを設置し、これらの異なる場所の中で、最適な広告視認者向けに、最適なタイミングで広告を出すことを可能にしています。同社の事例の1つに埼玉高速鉄道があります。2019年から、埼玉高速鉄道の鉄道車両のドア上部には、センサーとカメラが一体型となったデジタルサイネージが設置されています。AIがカメラにて撮影された動画から乗客の視線を解析し、広告の視認数を算出します。これにより、広告のインプレッション数が測定可能となり、広告の費用対効果が解明できます。この事例同様に、LIVEBOARD社が手掛ける他の場所のDOOHもインプレッションを計測しているため、アプローチしたいターゲットごとに広告場所の切り替えが行えるようになっています。

DOOHには、いくつかの種類があります。なので、DOOHを用いたマーケティングを実施する際には、目的、予算、広告の設置場所等を鑑みたうえで最適な種別・仕組みを選択する必要があります。 

        まとめ

        今後、5G等の通信技術やIoT機器等のデータ取得技術の進歩に伴い、より高画質な映像の低遅延配信や様々なリアルタイムデータを反映した広告配信が可能になることが期待されています。ここ数年は、新型コロナウイルスによって、人々の外出が控えられていましたが、現在では外出する人も増えていますので、DOOH広告の利用が進む可能性は十分に考えられます。この機会にマーケティングを実施する際のチャネルの1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

        尚、弊社では、マーケティング戦略の策定やそれに付随する調査を始めとしたコンサルティングサービスを提供しておりますので、少しでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、ご連絡下さい。

        【参考】

        森田 橋之介

        アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/アナリスト