前回はパトスとロゴスについて述べましたが、同一線上にありそうな二つが実は矛盾した関係になっていることって仕事をする中で時に遭遇します。
ブログではブランド(事業)作りに求められるパトス的な価値やスキルと、コンサル(経営支援)に求めれられるロゴス的な価値やスキルを対比しましたが、ちょうど先日のC&S事業部とのミーティングの際に、ある若手から同じような矛盾の悩みを聞きましたので、シェアしたいと思います。
その若手をIさんとします。Iさんは今回あるプロジェクトのプロジェクトマネージャー(PM)を任されています。と同時に、先輩PMのプロジェクトにもアサインされ個別のタスクを割り当てられています。Iさんは、全体を俯瞰して進めるのと、個別タスクを同時に進めることに難しさを感じているようです。
同じ仕事なのに、全体業務と個別業務の間にどんな違いがあるのでしょうか。
全体=PM業務に求められるのは第一に「合目的性」です。プロジェクト内で様々なタスクが同時進行で走っている中では、まず全体として目的に向かっているか、道から逸れていないかを常に確認していかねばなりません。いくつかのタスクの勢いが余って、一旦道を逸れ出すと、後から戻すのは非常に困難です。
対して、部分=個別のタスクに求められるのは第一に「正確性」です。与えられた条件の中で最高の精度を目指す必要があります。一つひとつのタスク(部分)の質が低い中で、全体の質が上がることは決してありません。
厄介なのは、全体を俯瞰してみると、部分と部分の整合性が取れてないことが往々にしてあるということです。言い換えると、部分は正確なのに、全体は正確でないと一見思えてしまうということ。今まで部分を担っていることが多かった若い方は、ついつい全体も整合性を取らなければと深く考えてしまい、余計に迷宮へ深入りしてしまいます。
ある程度の経験を積むと、多少の整合性のズレは無視して目的に向かっているかを重視できるようになります。ただ大変なのは、Iさんのように全体と部分の両方を同時に担ってしまう場合です。キャリアが上がっていく過程では、そんな時期が誰にも訪れます。
実は私も今でも部分業務をやってます。例えばブランド事業部の毎年の研修の際のコンテンツ作り等です。その時期がくるといつも憂鬱なのですが、全体と部分の業務特性の違いを自分の中でモードスイッチするのはやっぱりキツイです(笑)
それでも、俯瞰的な仕事だけでなく、部分的なタスクも持ってたいなと思うのは、それがないとボケちゃいそうだなって思っているからです。ちなみに、私は、特に正確性を求められる業務を行う場合は、一日それをすると決めてスケジュール確保して一気にやってしまうようにしてます。(なのでGWとかにやっちゃうこと多いですね)
概念レベルならばアウフヘーベンするかもしれませんが、人の絡む仕事の矛盾を超えるのって結構難しいものです。私は否定しながら高めるというよりも、許容しながら高めるのが仕事の矛盾の解消法なのかなと思っています。
全体と部分の対比で言えば、合目的であり且つ正確な状態に100%達することはないが、それぞれを理解した上でそこに近づけていけるように努力すること。
話をパトスとロゴスに戻してみましょう。
私の中では、パトスは「行う」ことに比重が置かれています。集団で事業を推進する為に、信じ実践する力の源となるのがパトスです。対してロゴスは「考える」ことに比重が置かれています。コギト的と言うか、コンサル会社ではこちらを標榜することが多いですよね。
ACでは、パトスとロゴスの矛盾を超えて「考えながら行い続ける」ことを目指しています。いわゆる知行合一みたいな感じですかね。ここでは「続ける」という新たな言葉が加わることが重要なのではないかと思います。続けることで、それがACのエトス(Being、在り方)になる。
「考えながら行い続ける」そういう一連の流れを当社の大切な価値観である「つくる」という一言には込めているつもりです。
最後は少し面倒臭い話になってしまいました(笑)
ただ、こういう難しいご時世だからこそ、内面に矛盾を抱えながらやっている会社があってもよい気がします。また、それが多様性を標榜する会社の一つの在り方なのかもしれません。
宮﨑
「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。
アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。