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NFTを活用したビジネスの展望 -トレンドから考えるNFTビジネスの可能性-

 

1.本記事の概要

 20213月にマイク・ウィンケルマン氏のデジタルアート作品「Everydays – The First 5000 days」のNFTが、現存するアーティストの中で歴代3位となる約6,935万ドル(約75億円)で落札されました。また、ツイッター創業者でありCEOのジャック・ドーシー氏の、ツイッターで初めて投稿したツイートのNFTが、2915,835ドル(約3億1,640万円)で落札されるなど、2021年よりNFTに対する世間の関心が急激に高まっています。

 日本国内でも20216月に、人気音楽アーティストであるPerfumeのメンバーの振り付けを3Dデータ化したデジタルアートのNFTがオークションに出品されています。他にも、202111月には、株式会社HashPortの子会社であり、NFTに特化した事業を展開している株式会社Hashpaletteと、モバイルアプリ「NFTトレカ」を運営し、NFTトレーディングカードの発行・販売を行う株式会社coinbookが、業務提携し、音楽・アニメ領域を中心としたエンターテイメントコンテンツのNFT化を、共同で推進していくことを発表しました。その第一弾として、「NFTトレカ」のアプリケーションで人気アイドルグループSKE48のトレーディングカードをNFT化して無償配布を行うなど、国内のNFT市場も活発な動きを見せております。

 NFTは、デジタルデータに「唯一無二である証明書」を付与することで、これまで複製が可能であったデジタルデータに対して、固有の価値を生み出したことから、世間より大きな注目を浴びました。当初は、デジタルアートやトレーディングカードといったNFTそのものの取引が主でしたが、現在は、株式会社サイバーエージェント20223月に「ロイヤリティプログラムとしてのNFT研究所」を立ち上げるなど、所有者を特定できるといったNFTの特徴を生かして、マーケティングの場面で利用する動きが見られています。加えて、多くの企業がNFT市場に参入する動きを見せており、今後のビジネスにおいて大いに活用されていくことが予想されています。

 本記事では、NFT市場の現在に至るまでの動向をまとめた上で、今後の展望について述べてまいります。今後、NFTに関連または活用したビジネスをご検討されている方々にとって、一助となる情報をご提供できればと考えております。

2.NFTとは

概要

 NFTとはNon-Fungible Tokenの略称であり、日本語に訳すと「非代替性トークン(しるし)」と呼ばれています。これはブロックチェーンと呼ばれる取引記録を管理するデータベース技術の上に記録された代替不可能なデジタルデータのことを指します。

 非代替性トークンの対となる言葉として「代替性トークン」というものがあります。代替性トークンの代表例として仮想通貨が挙げられます。仮想通貨は、通貨として取引されていますので、誰かが持っている通貨とほかの誰かが持っている通貨が同じ価値であれば、等価交換することが可能です。対して、非代替性トークンは、同じものでもそれぞれ固有の価値を有しているため、交換することができません。

特徴

 NFTが持つ特徴として、唯一性、取引可能性、相互運用性、プログラマビリティの4つが挙げられます。これらについて説明していきます。

・唯一性

 NFTは対象データ、メタデータ、インデックスデータの3層から構成されています。まず、対象データとは、NFTとなっているデータのことを指します。デジタルアート作品のNFTであればデジタルアートそのものを指します。続いて、メタデータとは、NFTに関する名称や説明に関するデータのことを指します。このメタデータには対象データとのリンクが含まれています。最後に、インデックスデータとは、保有者のアドレスといった情報になります。インデックスデータもまた、メタデータとのリンクを含んでいます。このような3つのデータが互いにリンクしており、かつブロックチェーン上にこれらの全てもしくは一部が記録されていることから、複製や改ざんを防いでいます。このことによって、デジタルデータが唯一無二であることを証明し、唯一性という価値を付与しています。

・取引可能性

 先述した、NFTを構成する3つのデータのうちインデックスデータは所有者の情報を記録しています。このインデックスデータによって、デジタルデータの所有者について明確に記録できるようになったことから、NFTの売買などといった取引をすることが可能となりました。これらの取引の内容は過去も含めてすべてブロックチェーン上に記録されているため、取引に関する情報の信頼性が担保されており、市場において安心して取引することが可能になっています。

・相互運用性

 従来のデジタルコンテンツは、単一のプラットフォーム上でのみ展開されているものがほとんどであり、プラットフォームをまたいで使用することはできませんでした。例えば、あるゲームのゲーム内アイテムはそのゲーム内でしか使用することができず、他のゲームで使用することはできませんでした。しかし、NFTのトークンの発行には、ほとんどがERC-721という共通の規格に則って、作成されているため、デジタルコンテンツに互換性が生まれ、プラットフォームをまたいで使用することが可能となっています。

・プログラマビリティ

 プログラマビリティとは、データ自体に様々な機能を組み込むことができるという特徴を指しています。デジタルアート作品を例として挙げると、デジタルアートを作成した創作者に対して、購入者が対価を支払うことでその所有権が購入者へと移動します。この購入者がその後、ほかの誰かに販売しようとしたとき、従来のアート作品の取引であれば、すでに所有権が創作者から離れていれば、購入者が再度販売した時に得た対価からは一銭も収入は入りません。一方で、NFTアート作品であれば、創作者から所有権が移動しても、データ自体に2次流通時の取引額の一部を、創作者にロイヤリティとして入るようにプログラミングを行っておけば、収入が得られるといった仕組みを構築することができます。これは、あくまで一例であり、他にも様々な機能を付与することが可能であり、今後、革新的な機能が構築される可能性も十分に考えられます。

ブロックチェーン技術

 NFTの基盤となっているのが「ブロックチェーン技術」と呼ばれるものです。こちらについて説明していきます。

 ブロックチェーン技術は元々、仮想通貨の取引を行うための基礎技術として考案されました。データに価値を付与し、それらを市場で流通させるために、偽造や改ざんができない仕組みを構築する目的で開発されました。

 ブロックチェーン技術では、取引履歴をブロック単位に分け、それらを鎖(チェーン)のようにつないでデータベース上に記録しています。各ブロックは、取引記録とそれらをリンクさせる情報によって構成されています。従来のシステムと異なる点としては、単一の管理者がデータベース上で展開されているすべてのデータを管理するわけではなく、参加者全員に取引の記録などのデータを分散して保持させています。つまり、データを改ざんや偽造するには、参加者全員が持っている取引データのすべてと整合性を取らなければなりません。こういった仕組みによってセキュアなデータ管理を実現しています。

3.NFTに関連するビジネスの変遷

1期:誕生~注目を浴びるまで

 NFTの取引は2014年から徐々に始まりました。最初はそれほど注目されていたわけではありませんでしたが、2017年にカナダのゲームアプリ開発を行う企業であるDapper Labsが「CryptoKitties」とよばれる世界初のブロックチェーンゲームを開発し、NFTは徐々に世間の関心を集め始めました。このゲームでは、ゲームで利用可能なアイテムやキャラクター等がNFTとして発行され、ブロックチェーン上で取引できるという新しいゲームでした。具体的には、猫を育成するゲームであり、ユーザー間で猫を売買したり、交配させたりすることが可能です。珍しい猫を育て、これらを売買し、仮想通貨を得ることで収益を上げるといった活動がユーザー間で盛んに行われています。

 2020年は世界的に「NFT元年」と呼ばれており、この年でNFT市場は飛躍的に拡大しました。同年の10月に先述したゲームを開発した会社であるDapper LabsがアメリカのプロバスケットボールリーグNBAと共同で「NBA Top Shot」いうブロックチェーンゲームで、NFTトレーディングカードの提供を開始しました。同年12月には、人気DJdeadmau5NFTを使った作品を発表し、それに追随するように他のアーティスト達もNFTを使った作品を発表する流れが生まれました。こういった流れを受けて、NFTは徐々に世の中にその存在を少しずつ浸透させていきました。

2期:市場規模の拡大

 2021年にマイク・ウィンケルマン氏のデジタルアート作品が約6,935万ドル(約75億円)で落札されたことや、また、ツイッター創業者でありCEOのジャック・ドーシー氏の、ツイッターで初めて投稿したツイートのNFTが、2915,835ドル(約3億1,640万円)で落札されたことがニュース等で取り上げられました。これにより、これまでNFTに興味がなかった人たちもデジタル世界に新しい価値を生み出したNFTという技術に注目するようになってきました。現在、NFT市場では、アート作品、ゲームアイテム、トレーディングカード、チケット等が主に取引きされています。

 その中で、NFT市場では最近になって、企業のマーケティングにおいて活用されるなど新たな動きを見せ始めています。

 202111月にアメリカの大手ビールメーカーであるアンハイザー・ブッシュ社は、「Budverse Cans Heritage Edition」と呼ばれるNFTコレクションを販売しました。このNFTコレクションは缶ビールがモチーフになっており、ブランドの歴史を物語るクラシックな写真や広告などがデザインされています。これらは、今後アンハイザー・ブッシュ社が提供予定のサービス「バドバース(Budverse)」への参加証にもなる予定で、このNFTコレクションを持っていることで限定特典などを得ることができます。

 また、20222月にイタリアの高級ファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナは、独自のNFT関連コミュニティ「DGFamily」を発表しました。このコミュニティは「DG Family Boxes」と呼ばれるNFTを購入することで入会できます。「DG Family Boxes」は「The Black Box」、「The Gold Box」、「The Platinum Box」の3ランクあり、それぞれ現実世界におけるアイテムと、デジタルコンテンツが付与されるほか、ランクごとに、現実世界やメタバース上で行われるイベントに参加することができます。

 以前は、NFTそのものを資産として取引することが主でしたが、現在は、会員権や商用利用権といった何らかの「証明書」としてビジネスで活用する動きが見られています。今後は、企業のロイヤリティプログラムのツールとしてマーケティングの場面で大いに活用されていくことが予想されます。

4.今後の展望について

今後のNFTのトレンドとしては、以下のようなものが予想されます。

メタバースでの活用

 メタバースが普及することにより、アバターへの着せ替えを目的としたアパレルグッズをはじめとするデジタルアイテムへの需要が急速に高まることが見込まれます。このようなデジタルアイテムは、そのブランドのアイテムであるという証明ができるようにNFTであることが求められると予想できます。今後は、現実の商品と一緒にNFTを付帯して販売することや現実の商品をNFT化して販売していくことが消費者から求められるのではないでしょうか。そういった場合には、NFTやデジタルコンテンツに関する技術の差が企業のマーケティングの成否に影響を与える可能性が考えられます。

NGONPO団体での活用

 シヤチハタ株式会社株式会社ケンタウロスワークス早稲田リーガルコモンズ法律事務所が印鑑の印影データをNFT化した「NFT印鑑」を共同開発するなどNFTも用途に広がりを見せています。今後は、人権・環境保護に携わっているNGONPO団体が、その分野に貢献した人に対して授与する勲章をNFT化する可能性があるのではないでしょうか。理由としては、まずNFTがもつ唯一性や複製、偽造ができないといった特徴が、勲章との相性が良いことが挙げられます。また、NFTのようなデジタルデータを活用することで、勲章授与にかかるコストを削減することが期待できます。これらの理由から今後、NGONPO団体において勲章をNFT化することが考えられます。

5.最後に

 近年、国内のNFT市場には、多くの企業が参入してきており、今後もさらなる成長が期待されています。一方で、急激に成長してきたことや新しいテクノロジーを使用しているがゆえに法的な整備等が追い付いていないのが現状です。今後、法規制といったNFT市場に関連する環境整備が進んでいくと考えられます。弊社では、そのような環境の変化に対応しながら、マーケティングを支援するサービスを提供しておりますので、興味のある方は是非お気軽にお問い合わせください。

 

【参考資料】

 

安田 武蔵

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト


5F, 1-3-18 Hiroo, Shibuya-ku, Tokyo
150-0012 Japan

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