デジタルマーケティング領域の動向
デジタルが様々な業界・産業を取り巻いている近年の状況において、以下のようにコンサルティングファームが広告代理店を買収し、デジタルマーケティング領域での支援も行っているコンサルティング会社が増えてきています。
一方で、広告代理店もコンサルティング会社を立ち上げるなど、マーケティング支援だけではなく戦略策定の領域まで進出を試みています。
このようなデジタルマーケティングを取り巻く状況から、Web集客などのマーケティング支援を受けたい企業は、自社の目標を効率よく達成するための適切な相手に相談する必要があります。
この記事では、「会社のサービス・商品をもっと広めたい」や「デジタルマーケティング支援を受けたいが、コンサルファームか広告代理店のどちらに相談するのがいいのだろうか?」といった悩みを持っている方に「両者の違い」や「支援を依頼する際の注意事項」に関して説明します。
広告代理店とコンサルティングファーム
広告代理店について
広告代理店は、広告の企画、制作、掲載場所への支持などを行っています。インターネットやWeb集客に特化した広告代理店は、膨大なインターネット広告の中から適切な掲載場所や媒体を選定し、顧客の集客を支援します。
広告代理店は主に、総合広告代理店・専門広告代理店・ハウスエージェンシーの3つに分類され、その業務内容は、
- 総合広告代理店
- 総合広告代理店は、1つのメディア媒体に捉われることなく、テレビや雑誌、新聞などさまざまな種類の広告枠を扱っています。幅広くメディアを網羅しているため、複数のメディアに横断的にアプローチできる
- 専門広告代理店
- 「インターネット広告」「新聞広告」といったように1つの媒体を専門に扱う広告代理店のことを指す
- ハウスエージェンシー
- ハウスエージェンシーは、特定の企業に専属する広告代理店のことです。特定の企業やそのグループ企業のために、広告の制作を手掛けている
というように広告代理店によって異なりますが、広告代理店は、自社の製品やサービスをアピールするために広告を出したい企業と、それを掲載するメディア間の橋渡し役であると言えます。
コンサルティングファームについて
「コンサルティング」と「コンサルタント」という言葉を混同してしまっている方もいるかもしれないため、最初に説明しておきます。コンサルティングとは、ある分野についての豊富な経験と深い知識をもとに、クライアントの課題を解決するための解決案を示し、実際の企画立案や実行などを手助けする業務のことを示します。また、コンサルタントとは”コンサルティングの業務を行う人”のことを示します。
コンサルタントの業務内容は、
- 戦略系コンサルティングファーム
- 企業の経営上の課題解決のための戦略策定やアドバイスすることを主としたコンサルティングファーム
- 企業の新市場参入、新規事業戦略、人事戦略、マーケティング戦略、IT戦略など幅広い分野を手掛けている
- 総合系コンサルティングファーム
- 名前の通り、あらゆる分野のクライアントに対して幅広いサービスを提供するコンサルティングファーム
- 多岐多様な分野や、経営課題を手掛けている
- 財務系コンサルティングファーム/FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)
- 財務に関連した課題解決に特化しているコンサルティングファーム
- M&Aや企業再生支援、企業価値評価などの分野を手掛けている
- 人事系コンサルティングファーム
- 人事に関連する領域を専門としたコンサルティングファーム
- 経営者の報酬精度の設計・調査、給与制度や評価制度の策定、人材開発戦略策定、人材能力開発などの分野を手掛けている
- 医療系コンサルティングファーム
- ヘルスケアの領域の事業者に特化したコンサルティングファーム
- 医療機関に関する中長期ビジョンや戦略構築支援、資金調達実行支援、施設の建て替えや売却支援、IT化支援など幅広く手掛けている
- 再生系コンサルティングファーム
- 経営状況が良くない企業に対する立て直しを目的としたコンサルティングファーム
- 企業分析や企業存続のためのソリューション策定、金融機関との交渉、新たな資金の調達などを手掛ける
というように、所属するコンサルファームによって異なります。
コンサルティングファームによって専門とする分野や課題解決方法は異なりますが、コンサルタントの業務内容は「顧客の課題解決」であり、提供する商品は「解決した結果」であると言えます。
デジタルマーケティングにおけるコンサルティングファームと広告代理店
デジタルマーケティング領域でのコンサルティングファームと広告代理店の比較
デジタルマーケティング領域の支援を受ける場合、広告代理店とコンサルファームの大きな違いは、広告代理店は「企業とメディア間の橋渡し役」であるのに対し、コンサルファームは「商品は顧客の課題解決」であると言えます。
コンサルファームを利用してデジタルマーケティングを行うことで、
- 企業の目的に合った企画を選定できる
- コンサルタントは、デジタルマーケティングの特徴やトレンドを把握している専門家であるため、企業の目的や課題のヒアリングを通して、どのようにデジタルマーケティングを活用すべきかが明確になる
- 企業にとって改善すべき課題を第三者の客観的な目線で分析し、明確化できる
- 無駄なコストを削減できる
- 課題解決という目的を達成するための具体的な運用プランが明確になるため、発信する情報の方向性を決定するための時間や人材を削減できる
- デジタルマーケティングに関する知識を深めることができる
- 最先端のノウハウを駆使して、企業分析や戦略の策定を受けることができるため、デジタルマーケティングに関する知識がない企業でも、根本的な課題解決に向けたプランニングや運用のコツまで、高いスキルを持った専門家からノウハウを学ぶことができる
といったメリットを受けることができます。広告代理店を利用して、デジタルマーケティングを行う場合、
- 広告の配信開始がスピーディに実施できる
- 広告入稿・配信開始に関するノウハウを持っているため、スピーディに配信を始めることができる
- 企業は管理するだけで良い
- 広告運用を一括して委託できるため、企業は結果レポートを受け取り、それに対するフィードバックを支持するだけで良いので、手間や労力を省くことができる
といったメリットが得られる一方で、
- ノウハウが蓄積されにくい
- 広告運用を一括して委託でき、手間や労力がかからない一方で、社内にノウハウが蓄積されない可能性がある
- 企業に合った広告ができない可能性がある
- 広告代理店は、事業戦略の立案等に関するノウハウが薄いため、企業の事業戦略にマッチしたデジタルマーケティングが受けられない可能性がある
といったデメリットも存在します。事業戦略に合ったデジタルマーケティングが実施されないと全く効果が得られずに、コストだけ浪費してしまうと言った問題が生じてきます。
事業戦略の策定からデジタルマーケティングの運用までをサポートして欲しいという企業は、コンサルファームに依頼するのが良いと言えるでしょう。
まとめ
上記の通り、広告代理店は、広告運用を通して「企業の集客や販売促進」を目的に動いている一方で、コンサルファームは事業領域に寄らず幅広く「課題解決」に取り組んでいます。
- マーケティング戦略の立案に困っている
- 事業戦略も含めてマーケティングに取り組みたい
- マーケティングのノウハウを蓄積したい
といった悩みを抱えている企業は、コンサルファームに依頼をした方が、外部知見も含めて多くのノウハウを社内に蓄積することができるため、適切であり、
- ある程度の事業戦略やターゲットが決まっている
- マーケティング活動に広告やインターネットを取り込みたい
といった悩みを抱えている企業は、広告代理店を利用する方が、適切であると言えます。
しかし、「広告代理店」と「コンサルティングファーム」のどちらを選択する場合においても、「自社の課題」や「実行したいマーケティングプラン」を明確化した上で相談する方が良いでしょう。
田中 勇輝
アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/アナリスト