近年は、新型コロナウイルスや気候変動等の影響により企業は半ば強制的にビジネスモデルの変更や会社の方針転換を余儀なくされています。また、VUCAという単語が浸透していることからも不確実性が高く将来の予測が困難な世の中になっていることは見て取れます。
そのため、こうした社会が大きく変化している環境下では自ずとコンサルティングファームに求められる役割が大きく変わってきています。従来は「相談に乗って解決策を提示」することで存在価値を示すことが出来ましたが、ネットの普及等によりコンサルタントのみが保有していたナレッジがコモディティ化し「解決策の提示」だけでは価値を生み出せなくなっています。そのため、コンサルティングファーム各社のトレンドとして成果によりコミットした成果報酬性の導入や「解決策の提示」から「実行」までを一気通貫で支援する動きが見られます。
他方で、コンサルタントに必要な物事の考え方や捉え方は変化しておらず、むしろAI等が発達し単純作業がロボットに置き換わっている今日においては「考える」スキルはより一層ビジネスマンの市場価値を決定する重要な要素になっていると言えます。
そのため、本ブログではコンサルタントを目指す方や社内におけるPJ等においてアウトプットを最大化したいと考えられている方を対象に、コンサルタントの市場価値を決定する基本的能力「考える」について理解を深めていただくことを目的とします。
コンサルタントがPJを開始する際は、クライアントと協議した「課題 or やりたいこと」等に関する共通認識をもってから各タスクへの落とし込みを実施します。このときに重要なことは、クライアントの要求を構造化してインパクトが大きい項目から着手するために「物事の見方」に注意することです。
一般的に、物事は3つの角度から捉えることが重要とされており、コンサルタントに関しても例外ではありません。なぜなら、クライアントが抱えている「ふわっと」した課題感から真のイシューを明確化することがPJの成功可否に大きく関係するからです。
クライアントが抱えている真のイシューを構造化した後は、各種調査を踏まえたソリューションの提示が必要になります。そうした解決策を考える際は、最適な推論方法を使用し誰にでも伝わるようにロジックを構築することが肝要です。
日常生活の中で下記に述べる推論方法は、誰もが一度は実際に実行しているとは思いますが、改めてそれらの概要と適切な使用シーンに関する整理を通じて「考える」ための核となる推論のあり方について考察していきます。
推論→分析的推論→演繹:ソクラテスの三段論法に代表されるような、因果関係/ルール/価値観/方針に基づいて説明する手法(トップダウン)
推論→拡張的推論→帰納:ニュートンの万有引力発見シーンのように、多くの具体的事項/データから一般化できる法則導く手法(ボトムアップ)
推論→拡張的推論→アブダクション:帰納法と類似した推論法ではあるものの、ファクトの収集によりロジックを組み立てるのではなくあくまでも起こった事象または発生するであろう事象についてその理由を説明する手法
バックキャスティングとも概念が類似しており、身近なところでは二酸化炭素排出量0%の目標を実現するために望ましい未来から逆算して各ステップの二酸化炭素排出量削減目標を設定している例が挙げられます。また、ゴールに基づいたマイルストンを設定することで世界最大のタバコメーカー「フィリップ・モリス」は自社の競争優位な環境を構築することに成功しています。
アブダクションはクレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」と併せて示されることが多く、将来の顧客像を現在と切り離しることの重要性が唱えられています。今日ではほぼ全ての成人が保有しているカメラ付き携帯がデジタルカメラの代替として使用されているように、破壊的イノベーションを起こすためには現時点の顧客ニーズ充足だけではなく中長期的な視点での強み確立を並行して検討することが必要になります。
コンサルタントのコミュニケーション方法は「報→連→相」よりも「雲→雨→傘」が重要視されています。それは、「ファクト収集→推測の導出→ソリューション検討」の一連の思考がコンサルタントの市場価値を決定づけるからです。そのためには、雲(ファクト)を見て雨(ファクトをもとにした推測)が降ると予想する精度を高めることが求められ、「考える」スキルの活用が必要になります。
アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/コンサルタント
外資系企業の日本参入支援や新規事業策定支援等の経営戦略コンサルティング案件の実績を多数保有