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CO2可視化の課題と可視化システムについて(前編)

近年のCO2排出量削減に向けた取組

環境省は2050年までにカーボンニュートラルを実現するべく、様々な取り組みを行っております。我々の身近なものでは、各種メディアにて行われているSDGsに関する情報発信や、電気自動車への乗り換えに対する補助金制度、国民一人ひとりに対する脱炭素化に向けた意識・行動改革を促すための取組である「COOL CHOICE」等が挙げられます。

もちろん、個人レベルでのカーボンニュートラルに向けた取組も盛んにおこなわれていますが、ビジネスの場においてもカーボンニュートラルに向けた取組が活発になっております。特にその中でも現在注目されているのが、「サプライチェーン全体における企業のCO2排出量の可視化」です。

排出量の可視化を行うにあたり、自社から発生したCO2であれば、ガソリンや電力の消費量等を全て集計することで算定を行うことが可能です。ただ、サプライチェーン全体になると、他社から情報を獲得しなくてはならなかったり、そもそも実態が全く把握できないものがあったりと、途端に可視化の難易度が向上します。そんな中、最近では各企業の排出量可視化を支援するシステムがいくつか展開されており、その中にはサプライチェーン全体の排出量を可視化できるものもあります。

そこで、本記事では前編にてそもそも排出量の可視化とはどのように行われているのか、そして後編にて具体的にどのような企業が、どの様な排出量可視化システムを展開しているのかを2部構成でお伝えいたします。

 

CO2排出量の可視化とは

排出量の算定方法

そもそもCO2の排出量というのはどのように計測されているのでしょうか。燃料や電気を消費することで音質効果ガスが発生する、ということ自体は一般的に理解されていると思われますが、目に見えないCO2の排出量はどの様にして計測されているかまでは、意外と一般的に知られていないかもしれません。

以下が、環境省が公開しているCO2排出量を計算するためのロジックになります。

出所:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」

 

聞きなれない言葉がいくつかあるかと思われますが、計算式自体は所謂掛け算で求められるため、非常にシンプルな式で算定することが可能です。では、上の図で書かれている「活動量」及び「排出原単位」について簡単に説明いたします。

【活動量とは】

活動量とは、事業者の活動の規模に関する量のことを言います。例えば、電気の使用量や貨物の輸送量、廃棄物の処理量などがこれにあたります。

【排出原単位とは】

排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことを言います。例えば、活動量を電気の使用量とした場合、電気を1kWh使用したあたりのCO2排出量などが該当します。

上記をふまえ、例えば電力消費に伴う排出量を算定する場合は、

電力消費量(kWh)×1kWh当たりの排出原単位 =電力消費におけるCO2排出量

となります。

以下に、とある企業Aが電力消費に伴う排出量を算定する場合の算定式を説明します。

【前提条件】

企業Aの年間電力消費量:10,000,000kWh

電力消費における排出原単位:0.0005kt-CO2/kWh

【算定式】

10,000,000kWh(電力消費量)×0.0005kt-CO2/kWh(排出原単位)=5,000t-CO2(排出量)

排出原単位はどの様に取得するのか

CO2排出量を求めるために必要なものは前述にてわかったと思われます。ただ、活動量についてはガソリンや電力の利用明細等からデータを取得できるものの、排出原単位は一体どのようにして取得すればよいのでしょうか。

実は、この排出原単位というものは政府や環境団体が公開しており、誰でもデータを取得することが可能です。

実際に、環境省は毎年各種燃料や電力消費における排出原単位をデータベース化して無料公開しております。それらのデータベースは下記のリンクから取得することが可能です。

環境省「算定時の参考資料

 

CO2排出量の算定対象

一口にCO2排出量算定といっても、実は算定するべき排出量にはいくつかの分類があります。大きな分類としては、冒頭で記述した通り自社から排出したCO2なのか、他社がサプライチェーン上で排出したCO2なのかの2つがありますが、実はそれらの分類もさらに細分化されます。

出所:環境省「サプライチェーン排出量の活用について

上記の図の中に、スコープやカテゴリといった言葉が登場しますが、これらがCO2排出量の分類になります。以下にそれぞれのスコープ・カテゴリが何を表しているのか説明いたします。

【スコープ1

スコープ1は、自社の事業活動の中で、石油やガソリンなどの燃料を燃やした際に発生する排出量が該当します。例えば、鉄鋼業者が製鉄を行う際に燃焼させた石炭や、社有車を用いて営業を行った場合のガソリンの消費量が算定対象になります。各燃料の排出原単位は全て、前述のデータベースを始めとする各種公開情報に記載されているので、それらと自社が消費した燃料を基に算定をすることができます。

【スコープ2

スコープ2は、自社の事業活動の中で消費した電力を発電する際に発生した排出量が該当します。自社のオフィスや工場で使用した電力消費量が算定対象になります。電力の消費量自体は、各電力会社からの電力利用明細から情報を取得できます。ただ、スコープ2には、用いる排出原単位によって「ロケーションベース」と「マーケットベース」の2種類存在します。以下、それぞれの定義になります。

<ロケーションベース>

ロケーションベースは、電力消費の排出原単位を地域平均化したものを用いて算定される排出量です。日本の場合は、日本全国の電力会社の排出原単位を全て平均した値を用いて算定されます。

<マーケットベース>

マーケットベースは、各地方にある電力会社ごとに異なる排出原単位をそれぞれ用いて算定された排出量になります。ロケーションベースと異なり、各社が契約している電力会社の排出原単位を用いる分、ロケーションベースよりも正確に排出量を算定できます。

【スコープ3

スコープ3は、スコープ12と異なり、サプライチェーン上で発生した排出量が該当します。スコープ3の中でも、さらに15個のカテゴリが存在し、それぞれ排出量の対象が異なります。また、15のカテゴリの中にもサプライチェーンの上流に位置するか、下流に位置するのかによって以下のように分類することも可能です。

この様に、スコープ3の排出量はその特性上、サプライチェーン上流・下流に位置する企業の活動と連動しております。スコープ3の排出量を精緻に算定するためには、各企業との情報連携やデータ取得が必要になることが多く、スコープ12と比べて算定の難易度が高いと言えます。

 

まとめ

本章では、排出量算定の基礎となる、算定方法と算定対象についてご説明いたしました。算定の式自体は単純なものの、特にサプライチェーンに関わるスコープ3の排出量については情報連携等における課題から現状ではまだ算定難易度が高い状態にあります。

次章では、サプライチェーン排出量算定における具体的な課題と、それらを解決するために開発された排出量可視化サービスについて紹介いたします。

大須賀功

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。


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