MaaSとは、様々な交通手段(鉄道、自動車、自転車など)をオンデマンドで統合的なサービスとして提供するビジネスのことを指します。一般的にはある目的地へ移動するために鉄道やバスといった公共交通機関だけでなく、タクシーやカーシェア、自転車など複数交通モードの経路比較・予約・決済を単一プラットフォームで実現できます。欧州では既にサブスクリプションのサービスとして提供されているだけでなく、日本でもMaaSサービスの実証実験がこれまでいくつも行われてきました。
欧州において、特に有名なMaaSサービスとして、フィンランドや欧州各地で提供されているWhimが挙げられます。
フィンランドの首都ヘルシンキでは、公共交通が整備されているものの自家用車の増加などにより交通渋滞や環境悪化などの課題があり、大学やタクシー協会、民間企業など100以上の団体・組織が参画する産官学コンソーシアム「ITS Finland」などがプロジェクトを行ってきました。ITS Finlandの一員であるSampo Hietanen氏は、2015年にMaaS Global社の前身である「MaaS Finland」社を設立し、フィンランド運輸通信省(LVM)とフィンランド技術庁(Tekes)がMaaS開発に向けたプログラムのパイロット事例の一つとして2016年にサービスが開始されました。
Whimでは月々定額の料金を支払うことで、鉄道やバス、タクシー、カーシェア、自転車シェアリングなどを使い放題で利用することができます。また、鉄道やバス、月数日だけ利用したいというニーズに合わせていくつかのプランに分けられています。
そして、日本でも2019年から続々と実証実験が始められています。
whimサービス利用イメージ
https://whimapp.com/jp/package/coming-to-japan/
このようにのMaaSサービスが拡大する中、コロナウイルスの流行により、テレワークが浸透するようになって交通サービスを利用する人は大幅に減ってしまうというサービス拡大にとってはマイナスの減少が起きています。しかし、それに対応する形で、最近ではwithコロナのニーズに応じた様々なサービスが提供されています。
ここではその中からをいくつか例をとりあげて解説していきたいと思います。
Izukoの交通チケット
(左:使用開始前、右:使用開始後)
Izukoによる感染対策の取り組み
(左:感染対策情報、右:施設の混雑状況)
https://www.jreast.co.jp/press/2020/20201029_ho02.pdf
Transit社の混雑情報サービス(左:混雑状況、右:混雑状況アイコンの説明)
人のアイコンは3段階で評価されている
https://archive.transitapp.com/you-can-avoid-crowds-on-public-transit-with-new-real-time-crowding-info-b61e60f5502
Transit社の混雑情報サービス(バスアイコンのゲージは6段階評価)https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001406467.pdf
各都市の需要の推移(期間別)
各都市の需要の推移(都市別)
ユーザーが混雑状況を提供する機能もある
https://help.transitapp.com/article/277-check-how-crowded-your-bus-is
欧州各地の臨時自転車レーン(国土交通省HPより)
ヘルシンキで実施されているWhimのバイクシェアキャンペーン
29,90€(約3900円)で30分のバイクシェアが1カ月間使い放題になる
https://whimapp.com/helsinki/liikkumismuodot/kaupunkipyorat/
APCとは乗車ドア上部に取り付けられたセンサーによって乗車数と降車数を自動的にカウントするシステム(精度は98%程度)です。
米国では、運輸省(DOT)に所属するFTA(公共交通局)がNTD(National TransitDatabase)に対して公共交通機関の利用状況(利用者数など)を月次で報告することを義務付けており、APCは報告のためのデータとしても使われています。
主に以下のような目的で利用されています。
APC技術が搭載された機器
https://www.pcb.its.dot.gov/factSheets/apc/apc_overview.aspx#page=tech
APCが搭載された公共車両のイメージ
車両の扉に設置されたセンサーが乗客をカウントする
https://www.pcb.its.dot.gov/factSheets/apc/apc_overview.aspx#page=tech
このようにテレワークが浸透しつつある世の中においても、混雑予測やバイクシェア、バーチャル観光など、時代に合わせてニーズを満たすMaaSサービスが提供されています。
仕事やプライベートでなどのどこかのシーンで必ず公共交通機関は利用されます。外出することによる感染のリスクも心配ですが、そんな時はMaaSサービスも活用しておうち時間ではバーチャル観光でコロナ収束後の旅行について考えたり、混雑予測で混雑しそうな時間帯や場所を避けたりするなどで感染対策をしっかり整えていけるのではないでしょうか。
【参考】
Whim HP
【最新版】MaaSとは?基礎知識まとめと完成像を解説
MaaSアプリ「Whim」とは? 仕組みやサービス内容を紹介
データ活用で感染リスクを減らせ! Withコロナ時代のMaaS
国土交通省「モビリティ分野における海外の新型コロナウィルス対策について」
Transit HP「You can avoid crowds on public transit with new, real-time crowding info」
ITS Professional Capacity Building Program
Transit HP(コロナウイルス関連ページ)
国土交通省HP
JR東日本「観光型MaaS「Izuko」Phase3の詳細について」
移動できない時代「MaaS」に価値はあるのか? 公共交通はどうすべきか
臨海副都心エリアのMaaS実証実験 『Enjoy!おうちでお台場』開始
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。得意分野は決済事業、IoT、エネルギーなどの事業戦略の提案や、それに伴う調査