RPAは日本市場に入ってから急成長を数年維持していました。2018年前後、一時的に「RPA幻滅期突入する」という声があったが、実際のところ、成長スピードが緩やかになっていたが、いまでも着実に市場拡大をしています。(詳細は以前のブログをご参考:今からRPA導入は遅くない:RPA今後の成長性について)ただし、RPAが大手企業に対する浸透度は明らかに中小企業より高いと言われています。MM総研2020年の調査によると、大企業は約半数RPA導入しましたが、中堅・中小企業は25%しか導入していないようです。では、なぜ中堅・中小企業の浸透度は大企業より低いでしょうか?もちろん「ツールが多くて選定ができない」、「社内ITリテラシー問題で活用できない」などの原因もあるが、避けては通らない要素は「導入の費用対効果」、つまり「ROI」になるでしょう。特にRPAは「大量ルーティン業務」に最適という特徴があり、大手企業は当然それなりの費用対効果があるとして、中堅・中小企業の場合は必ずしもそうとは限らず、したがって導入前にROIを正しく評価することが重要になるでしょう。本ブログではRPA導入前ROI計算に関する基本的な考え方及び方法を紹介し、検討中の会社さんに少しでも参考になれれば幸いです
ではどのようにROIを計算したらよいでしょうか?RPAに限らず、一般的にROIは下記の計算式となります:
ROI =(利益金額)÷(投資金額)×100(%)
RPA導入に置き換えると「利益金額」は「RPA導入の効果」、「投資金額」は「RPA導入の費用」となり、計算式は下記のようになります:
RPA導入のROI =(RPA導入の利益)÷(RPA導入のコスト)×100(%)
「RPA導入の利益」と「RPA導入のコスト」二つの要素が分かればRPA導入のROIが計算できることは明白なので、この二つの要素をそれぞれみていきましょう。
RPA導入の費用を説明するには、まずRPA導入の流れを整理する必要があります。導入の方式にもよりますが、一般的には下記ように分けられます:
そして、導入のトータル費用は上記6つのステップの内、自社がどこまで自己完結できるかによって変わるが、本文はITに弱い中小企業を例とし、全て外部依頼する場合を前提に解説していきます。
「①導入前相談・ツール選定」に関してはシステムベンダーや導入支援コンサルティンに相談することが多いが、導入想定の規模、大体な用途など説明できれば、一度の無料相談で大体ツール選定は可能でしょう。続きまして②の「ライセンス購入」になりますが、選定したツールによって、大幅に変わります。安い物であれば付き数千円の国産ツールもあれば、月数十万高機能なものもあります。自社が選定したツール、購入ライセンス数などのがわかれば、簡単に計算できるでしょう。
続きまして「③対象業務選定」と、「④業務標準化・ロボット化後のフロー策定」は基本RPA導入支援ができるITコンサルティン会社の得意分野です。③の主要内容は「業務棚卸」となり、対象部署の業務を洗い出して、そのうちRPA導入の一定の基準(各社独自のものが多い)効果が大きい業務を対象と選定するプロセスです。そして、手作業とRPAのロジックが異なるため、③段階で整理した業務がそのままだとRPA化困難な部分が多く、そこで④が必要です。簡単に言うとRPA化に最適な状態まで業務フローを設計するということです。③と④が一緒に行う場合が多く、費用は依頼先の会社によって変わりますが、比較的にリーズナブル中小コンサルティン会社もたくさんあります。実際行う前に見積もりをしてもらうといいでしょう。
最後はようやく「⑤開発」と「⑥運用・保守」です。開発会社が専門のベンダーになる場合が多いが、その場合、③&④が担当したコンサルティン会社と密なコミュニケーションが必要でしょう。もちろん、コンサルティンから開発運用まで一気通貫で対応可能な会社もたくさんあります。開発も運用保守も月単位で費用発生する場合が多きです。同じく、必要なサービスが提供可能なベンダーに見積もりをしてもらうとよいでしょう。
上記をまとめると、RPA導入のコストは:
①(基本無料)+②(ライセンス費用)+③&④(コンサルティン費用)+⑤(開発費用)+⑥(運用・保守)
実際導入する際に、どれぐらい運用するのを想定しているかによって、②と⑥を決めればよいです。例えば1年間、3年間など。
RPA導入の利益は導入コストのようにいくつかの段階を分けて計算する必要なく、よりシンプルになります。そして、基本的な考え方は下記になります:
RPA導入の利益=(対象業務導入前必要工数 ― 対象業務導入後必要工数)×人件費単価
「対象業務導入前必要工数」はRPA化する前、今まで手作業の場合、対象業務が必要な工数です。そして「対象業務導入後必要工数」というのはRPA導入した後、一部の業務が自動化となるため、一定割合の時間が削減できるため、必要な工数が短縮されます。そして、導入前後の差分がいわゆる導入の「削減効果」となります。ここで人件費単価に相乗すると、対象業務の削減効果金額の目安が得られて、つまり「RPA導入の利益」になります。
導入前必要工数は基本業務ヒアリングを通じて、同業務何人体制、それぞれ毎月何時間かかっているという解明します。導入後必要工数の精確な結果は厳密にいうと実際RPA化して、実行して測って見ないとわからないが、過去実績や経験に基づいて、合わせて現場スタッフのヒアリングを参考すれば大体の割合は判断可能です。
例えば、ある会社の経理部に「消込」という業務があり、2人の経理担当者共同で対応し、一人当たりが毎月およそ100時間かかっています。同業務は1~10のステップがあり、そのうち3~7がRPA化可能で、約業務全体の70%を占めています。要するに導入後必要な工数は導入前の30%です。「人件費単価」を平均時給3000円で計算すると、下記のように計算できます:
「消込」業務RPA導入の利益=(100時間×2 ― 100時間×2×30%)×3000円/時間=420,000円
つまり、RPA導入すると、「消込」業務では導入前より毎月42万円の導入利益があります。このように、全ての対象業務を計算し、最後の合計値が全体の「導入の利益」になります。
ここで少し補足します。上記はあくまで「既存」業務ですが、それ以外に「元々やりたいが人手不足や時間帯の理由でできていなかった」業務もあります。今までやっていなかったため、RPA導入前の必要工数は「0」です。ただ、RPAは基本24時間×365日稼働可能のため、RPAに導入により該当業務を実現できます。この場合導入利益の計算方法は「同業務が仮に手作業で行う場合取れ程の工数が必要か」を見積もりし、この工数丸々が削減工数になります。後は同じく「人件費単価」と相乗するとよいでしょう。
同然、工数削減による費用節約以外、RPAによる業務の「正確性向上」、「リードタイム短縮」、「属人的業務減らす」などのメリットもあるが、今後機会あればまた詳しく説明としましょう。
上記で「RPA導入の利益」と「RPA導入のコスト」それぞれ基本的な考え方を解説したが、最初の計算にてROI計算できるようになるでしょう:
RPA導入のROI =(RPA導入の利益)÷(RPA導入のコスト)×100(%)
ただ、ここでROIがどれぐらいあれば妥当かということに関しては、決まりはないでしょう。そのため、この計算式にこだわらず、単純に「RPA導入の利益」と「RPA導入のコスト」の関係で、自社実際の状況と合わせて検討してもよいでしょう。本文がRPA導入を検討中の企業さんにとって少し手も参考になれると幸いです。
アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/マネージャー
2016年上智大学大学院経営学部卒業、大手量販店入社。2018年当社入社、Consulting & Solution事業部にて戦略コンサルティング案件、BRP、RPAを始めた業務改善に伴うITコンサルティングなど、豊富な実績を有する。社内効率化のために、最適なソリューションをご提案いたします。