デジタルマーケティングを取り入れることにより営業プロセスは変化していきます。従来の営業手法では、まず一般的に営業担当は雑誌や新聞、インターネットなどのから企業情報を収集していきます。そこから電話やメールなどの担当者に連絡しアポイントメントを入れたり、セミナーやイベント等で獲得した名刺などにアプローチしていきます。営業のレベルにより多少変動するが一日に100件以上連絡することはよくあることです。
アポイントが固まると顧客訪問のフェーズに入ります。訪問の際には顧客に対してヒアリングを行いそこからニーズや課題を洗い出していきます。業界業種によりまちまちですが、がその後の提案段階に進むのは大体10件中3件程度です。取りこぼした7件に関してもその後定期的にフォローを行います。
その後営業担当は、顧客の課題やニーズをもとに提案書類をつくりこむ作業を行います。
最後にクロージングの段階に入ります。稟議を上げてもらうために上層部に働きかけ検討材料を取り揃えていきます。最終的に契約につながるのは提案段階に進んだ3件の内、1件程度と言われています。
従来型の営業では上記のように情報集からクロージングまで全て一人で行います。打率が低いがゆえに「営業=きつい」が世間的なイメージになっております。
では従来の営業にデジタルマーケティングを取り入れると大きく、営業プロセスで以下の3つの部分で変化が起きます。
1.マーケティング部との分業化
2.アウトバウンド型からインバウンド型へ
3.訪問前の企業分析
ひとつずつ説明していきます。
今まで営業担当が個人で行っていた営業は複数部門で連携する形になり、情報収集はマーケティング部門が行います。外部の企業データを顧客管理ツールに取り組むことで、見込み顧客の単位ごとに企業分析のデータを閲覧することが可能になります。
営業担当がこれまで担っていた「アポイントメント」や「顧客訪問」は「情報発信」や「問い合わせ」に変わり、その後の「ニーズや課題の把握」も含めマーケティング部門が行うようになります。そのため、営業活動において序盤で行っていた業務に営業担当が時間を割く必要がなくなります。
見込み顧客の創出と育成はマーケティング部門で一括するので、結果的に営担当者が回ってくる顧客はホットリード(課題やニーズがすでに明確な見込み客)に限定され、行う業務は「提案」と「クロージング」のみになります。このことで生産性は大幅に改善されます。また事前に課題やニーズを把握しているので提案資料の精度を上げることが可能になります。
マーケティングにおいて営業しなくても、継続的に問い合わせが入ってくる仕組みをつくることは重要です。これを実現するためにアウトバウンドを行っていた企業はインバウンドに切り替える必要があります。
現在でも若手社員がアウトバンド型の営業(飛び込み営業やテレアポ)をやっているケースは少なくないかと思います。しかしこの方法ではニーズがそもそもあるのかも分からない顧客に片っ端にアプローチすることになり、非常に非効率です。
インサイドセールスの場合、見込み顧客らの問い合わせや資料ダウンロードを受ける形になります。インサイドセールスの担当がそこで前裁きを行い、その後提案を求める顧客の対しては営業担当がクロージングをかけていく流れになります。
インサイドセールスで営業担当が対応する顧客はすでにニーズや課題が明確であるので、これまでの無駄な工数を削減でき、提案に注力することが可能になります。そのことが結果的に顧客満足度向上にもつながります。
これまでの営業の場合、訪問先の企業に合わせた提案を行うために決済説明会の資料や有価証券報告書に目を通したり、日経新聞や日経ビジネスの記事を調べたりして顧客のデータを徹底して収集する必要がありました。
DX化することで、個別で情報を収集せずに、各企業のシステム管理上で収集・分析が可能になります。例えばFORCASというサービスでは140万社以上の企業情報が登録されています。その中で560業界にも及ぶ企業分析のデータを閲覧でき、企業の業績や課題などが230種類に分けたシナリオを紐づいているのでそれぞれの企業の特徴が把握できます。FORCASなどを顧客管理ツールと連動して閲覧したり、既存の顧客のデータを管理ツールで深堀りして分析することで、どういった業界・業種でどういった商品・サービスが売れているのか簡単に分かります。
デジタルマーケティングの普及により今までの営業手法に変革が期待できます。コロナの影響によりzoom等のオンラインツールが市民権を得たことも、変革に寄与しているかと思います。
従来の営業では全く接点のない企業にアプローチする際、代表番号にかけてもなかなか担当者につながらず、アポイント率を高めるために担当者(役員クラス)宛に手紙を書くなどして手間をかけるなどの工夫が必要だったそうです。また訪問後のお礼状など作成したりして何とかアナログな戦術を進めていくしかありませんでした。このようなやり方が全くなくなるわけでないと思いますが、効率化や生産性を重視した際にデジタルマーケティングにシフトする必要があります。
今までの営業は数をこなして成果を出す体力戦の要素が強かったですが、徐々に頭脳戦にシフトしていき企業利益の最大化、ひいては国全体の経済活動の最大化につながればいいのではないでしょうか。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト