C&S事業部では今期よりユニット制を導入し、すでに半年が経過しました。
このタイミングで、ユニット制導入の背景と、その先に見据えている狙いについて、改めて整理しておきたいと思います。
3つのユニットへの再編は、「事業部を三分割し、クライアントを振り分けた」という単純な縦割り発想から生まれたものではありません。
むしろ、前期までに乱立していた小規模チームを統合し、ユニットという“適正な器”でマネジメントできる状態をつくることを目的とした取り組みです。
従来の小チーム制では、どうしても運営視点が“個別案件の遂行”に留まりがちでした。
一方、ユニット制では、メンバー構成を「ユニット長・マネジャー・メンバー」の三層構造とし、一定の人数規模を持たせることで、より長期的な視座で事業を捉え、経営的判断を行える単位へと引き上げています。
そうすることで、ユニットごとに異なる方針が生まれ、それぞれが目指す方向を自分たちの言葉で掲げるようになります。
人数が増え、メンバーのキャリアや関心領域、注力すべきクライアントの性質もバラつきが出てきた今のC&S事業部において、全員が同じ型に収まる“同質な集団”として運営することには、限界が見え始めていました。
ユニット制は、その状況を踏まえて、多様性を内包したまま、成長を狙える状態を意図的に設計するためのものです。
ユニットがそれぞれの方針を持ち、独自のマネジメントを行うことこそが、今期テーマである「殻を破る」という姿勢の具体的な現れになります。
半年が経過し、各ユニットでもそれぞれの方針の打ち出しや共有が進んできています。では、今の時点で各ユニットがどのような方向性を掲げているのかを見ていきましょう。
なおここからは、ユニット長の発言やマネジメントの様子を踏まえて、私なりに感じていることを言語化します。直接「こうする」と聞いたわけではなく、あくまで私の解釈である点はご了承ください。(また、正式名称である「第○コンサルティング部」ではなく、ここからは通称である「○○ユニット」で統一して記載します。)
鈴木ユニットは、「高難度の戦略案件を遂行できる集団」を形成することを狙っているように見えます。
エンドクライアントである大手IT企業の、トップマネジメントを相手にした戦略案件から、事業開拓系の伴走支援まで、負荷の高い案件が集中しています。
従来であれば、そうした案件は平田役員や鈴木役員といったごく限られたメンバーにしか対応できない領域でした。それをあえてユニットに引き寄せ、対応できるマネジャーを育てながら、社内に“高度戦略ユニット”を確立することを、中期的なゴールに据えているように感じます。
もちろん、その分だけ目の前の案件はハードです。今期はおそらく最も負荷の高いタイミングだと思いますが、この実績こそが当社のコンサルティングファームとしての格を一段押し上げることにつながると信じています。ここは踏ん張りどころだと捉えており、心から応援しています。
平田ユニットは、「プライム案件の獲得」と、「メンバー育成の方法論の確立」を同時に推し進めているように見受けられます。
もともと調査系の大口クライアントを基盤としていますが、そこに対して新規提案を重ね、この短期間でも複数のプライム案件を獲得し始めています。中堅企業への戦略提案という、今後当社にとって必要になる重要なノウハウを着実に引き上げていると感じています。
また、ユニット内で伊藤マネジャーが主導するマネジメントガイドラインの整備は、当社の現状に即した実効性の高い育成モデルになっています。育成を企業文化の中核として位置づけてきた当社において、その正統な継承とアップデートを担う動きであり、非常に意義深い取り組みです。
そうした意味で、平田ユニットには営業面とユニットマネジメントの両面での意欲的な先行事例を期待しています。これらが成功例として他ユニットに波及することで、事業部全体の成長に拍車をかけるドライブとなってもらえることを願っています。
早坂ユニットは、BPR領域を本格的に強化するために新設されたユニットです。
実際、当社におけるBPR案件の売上比率はここ数年間で伸び続け、前期は全体の40%弱に達しています。それにもかかわらず、専任のBPRチームを十分に構築できていなかったという課題がありました。そこに、早坂ユニット長を迎え、「BPRを第二の看板領域として確立する」という明確な目的のもとで誕生したのが、このユニットです。
早坂ユニット長からは、BPR領域全体のレベル向上、新規営業の強化、そしてコンサルとエンジニアが連携しながら案件の獲得からデリバリーまでを一貫して担う体制の確立を目指したいと聞いています。
すでに新規営業の成果も出始めていますし、ユニットとして明確な旗印が立ったことで、メンバー自身もこれまで以上にキャリアのイメージが描きやすくなったのではないかと感じています。ユニット長を中心に方針を共有しながら一致団結して進んでもらうことで、当社の二枚看板である「戦略」と「BPR」の一翼が、より確かなものになっていくと期待しています。
最後に、三つのユニットを横断して走らせている二つのタスクフォースについて触れておきます。
ユニット単位でのマネジメントが進んでくると、次に浮かび上がる課題は「ユニット間の連携」です。それぞれが異なる方針や強みを育てることは歓迎すべき多様性ですが、それらが点で存在するだけでは組織全体の推進力にはなりません。
そこで、多様性はそのままに、有機的に連動させることで全体最適のパフォーマンスを生み出すことを目的に、ユニットを超えた横串の取り組みとしてタスクフォースを設置しています。
一つ目は、プライム営業タスクフォースです。吉田役員をトップに、各ユニット長およびシニアマネジャーで構成されています。
プライム案件の提案において重要なのは、「一体運用」と「ソリューション化」の二点です。
一体運用とは、たとえば戦略とBPRをセットにして一気通貫の提案を行うといった、ユニットの垣根を超えた連携のことを指します。
一方で、ソリューション化とは、「何でもできます」と幅広さを打ち出すのではなく、当社としての強みを明確に定義し、選ばれる理由のあるパッケージとして提案していくという考え方です。
このタスクフォースは、営業活動を「案件ごとの対応」から「狙いを定めたプライム提案」へと進化させる役割を担っています。吉田役員のネットワークを営業先として活用しながら、強みの洗い出しからソリューション化、そしてユニット連携による一体運用という流れをつくり、今期テーマである「プライム化」を本格的に推し進めていきたいと考えています。
二つ目が、経営企画室です。今期からC&S事業部における「採用」と「リテンション」に関する人事領域の取り組みを、経営企画室へと移管して運用しています。
これは、人事という最重要テーマを事業部の片手間で扱うのではなく、独立した機能として明確に責任を持つ体制を整えること、そして今後の成長に不可欠となるマネジメントのノウハウを、事業部の外側から働きかける仕組みをつくることを目的として設置されたものです。
すでにメンバーとの1on1や、マネジャー陣と連携したガイドライン策定など、実践的な取り組みがスタートしています。
この業界では、バリューを生み出すためのハードワークが前提となります。それを単なる負荷で終わらせず、高い成長を促す機会として正しく機能させるためには、安心して全力を出し切れる環境が欠かせません。
その実現のために、ユニットを超えて知見を集約し、方針を言語化し、発信・徹底していくことが、経営企画室に期待している役割です。
三つの独立したユニットがそれぞれの目的を追求し、二つのタスクフォースがそれらを横串でつなぐ。この構造が機能していくことで、組織は「殻を破り」、次のステージへと進んでいけるはずです。
ともに、つくっていきましょう。
宮﨑
「ともに、つくる」は主にインナーコミュニケーションを目的とした社長ブログです。


アーツアンドクラフツ代表取締役社長。考えるよりも動く現場主義。創業以来一貫して事業の最前線に立ち様々なパートナーと価値をつくりあげる。