本稿では、コンサルティングファームがクライアント獲得に向けて営業する際に、押さえておくべきポイントを解説しています。コンサルティングファームにおける営業は、単にサービスを販売するだけでなく、クライアントの抱える問題を深く理解し、共に解決策を考えるパートナーになることが大切です。本稿では、コンサルティング営業で必要な情報、特に「クライアントを深く知ること」がいかに大切か、そのために何をすべきかについて解説します。
クライアントをよく知ることは、コンサルティング営業の成功に欠かせないことです。提案の質、クライアントとの関係づくり、最終的な契約につながるかどうかまで、すべてはクライアントをどれだけ理解しているかで決まります。事前に情報を集めて分析することで、クライアントがまだ気づいていないニーズや課題を見つけ出し、的確な提案ができるようになるのです。
では、コンサルティング営業を行うにあたり、顧客理解を深めておくために予め知っておくべきポイントを紹介します。
会社の基本的な情報を把握しましょう。会社の始まり、理念、どんな事業をしているか、どんな製品やサービスがあるか、市場でどんな位置にいるかなどを確認します。具体的には、以下に挙げる情報が、会社全体の状況を把握し、提案の方向性を検討する上で役立ちます。
これらを確認するうえで、以下のフレームワークは参考になるため使うと良いでしょう
会社の経営戦略を理解することは、コンサルティングの提案内容を具体化するために大切です。戦略の理解を通じて、クライアント会社がどんな目標を持っていて、どんな新しいことをしようとしているのか、どんな分野に力を入れているのかなどを把握します。以下の情報は、会社がどんな問題を抱えていて、これからどう成長しようとしているのかを理解し、提案に反映させるために必要です。
会社の財務状況を把握することは、提案が実現可能かどうか、コンサルティングにどれくらいの費用対効果があるかを考える上で大切です。以下に挙げる基本的な財務指標を用いて競合他社と比較することにより、業界の中で会社がどんな位置にいて、何が得意で何が苦手なのかを知ることで、より価値のある提案ができます。
会社の組織や人事制度を理解することも、コンサルティング営業では重要です。会社でどのように意思決定が行われるのか、誰が重要な役割を担っているのか、どんな組織文化があるのかなどを把握することで、スムーズなコミュニケーションや提案活動につながります。特に、人事制度の変化は、組織改革や人材育成に関するコンサルティングのニーズを知る上で重要です。これらを踏まえて、以下に示す内容を押さえておくと良いでしょう。
また、これらを把握するためには、以下のフレームワーク・ツールを使用することができます。
コンサルティング営業では、会社のトップや意思決定をする人である調査対象人物を理解することがとても重要です。ここでは、その重要性と具体的な分析方法を解説します。
会社の調査対象人物として、次の3つの立場の人を選んで分析します。
調査対象人物がこれまでどんな仕事をしてきたかは、その人の考え方や意思決定の傾向を知る上で重要な情報です。以下に示す情報を確認することで、調査対象人物の強み、関心事、得意分野などを把握できます。
調査対象人物の性格を把握することは、効果的なコミュニケーション戦略を立てる上で役立ちます。性格を把握するために、DISC診断などのツールを使うことで、行動の特徴や考え方のパターンを分析できます。DISC診断とは、人の行動特性を「Dominance(主導)」「Influence(影響)」「Steadiness(安定)」「Conscientiousness(慎重)」の4つの要素で分析するツールであり、調査対象人物のDISCタイプを把握することで、その人の強みや弱み、コミュニケーションスタイル、意思決定の傾向などを理解することができます。
調査対象人物の性格に合わせて、コミュニケーションのやり方を工夫することが大切です。先述したDISC診断をもとにアプローチ方法を考えることで、提案効果を高めることが可能です
また、調査対象人物の価値観や関心事を把握し、共通の話題を見つけることも、良好な関係構築につながります。そのため、調査対象人物の発言や行動を注意深く観察し、その場の状況に合わせて柔軟に対応することも重要です。
インタビュー記事は、その人の考えや価値観を知るための貴重な情報源です。記事を分析することで、調査対象人物が何を大切にしているのか、どんな問題を抱えているのか、将来をどう考えているのかなどを把握できます。
分析するインタビュー記事は、調査対象人物の考えや価値観がよく表れているものを選びます。
選んだ記事から、調査対象人物が特に強調しているテーマや、繰り返し述べているキーワードを抽出します。これらのテーマやキーワードは、調査対象人物の関心事や、会社が抱える課題を示している可能性があります。抽出するテーマ・キーワードは、記事全体を通して頻繁に出てくる言葉や、特に強い口調で語られている内容、独自に定義している言葉などが挙げられます。例えば、調査対象人物が「イノベーション」という言葉を頻繁に使っている場合、その企業は技術革新や新しい価値の創造に力を入れていると考えられます。また、調査対象人物が「顧客中心」という言葉を強調している場合、その企業は顧客満足度向上や、顧客との長期的な関係構築を重視していると考えられます
インタビュー記事から得られた情報は、提案の内容や営業戦略に具体的に落とし込むことが大切です。例えば、調査対象人物が新しい事業に強い関心を示している場合、新規事業に関するコンサルティング提案を行うことが考えられます。また、ESGを重視する発言からは、ESGコンサルティングのニーズを読み取ることができます。インタビュー記事から情報を抽出する際には、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
また、インタビュー記事から得られた情報は、提案書やプレゼンテーション資料に盛り込むことで、提案の説得力を高めるために活用することができます。
これまでの分析を踏まえ、クライアントの会社への具体的なコンサルティング提案を検討します。
提案をする際には、クライアントの課題、ニーズ、期待を的確に捉えることが重要です。会社の経営戦略、財務状況、組織の問題などを総合的に考え、クライアントにとって最も価値のある提案を検討します。提案の際には、定量的なデータと定性的な情報を組み合わせ、客観的かつ論理的に説明することが重要です。また、提案内容だけでなく、提案の進め方や、コンサルタントの専門性、実績なども、提案の成否を左右する重要な要素です。さらに、提案後も、継続的なコミュニケーションを通じて、クライアントとの信頼関係を構築し、長期的なパートナーシップを目指すことが大切です
クライアントの会社への提案内容としては、以下のようなものが考えられます。
本稿では、コンサルティングファームがクライアント獲得に向けて営業・提案を行う際に、事前に把握しておくべき情報を整理しました。これらを押さえておくことで企業の担当者の信頼獲得が期待され、ひいては案件の受注にも結びつく可能性があります。とはいえ、本稿で挙げた項目すべてを営業する企業ごとに収集・分析するのは容易ではありません。そのため、情報収集・分析を担う専任担当を配置したり、使用する情報源やツールを決めておき標準化するなど、仕組みとして整備・効率化することが望まれます。
また、これらの情報はあくまで事前の分析に過ぎません。提案活動においては、これらに過度に依存するのではなく、実際の商談での対話を通じて、企業担当者の真のニーズを丁寧に引き出すことが最も重要です。これらを営業活動において実践していくにはノウハウも必要ですが、弊社はコンサルティング案件の獲得のための戦略立案支援、および伴走による実行支援の両方のノウハウを保有しております。コンサルティング案件の獲得にお困りの際は、ぜひお声がけください。
【参考】
アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/コンサルタント