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ブロックチェーンの登場とデジタル通貨の最新動向―ステーブルコインを例に

 

1.はじめに―デジタル通貨とは  

 「デジタル通貨」と言うと馴染みのない言葉のように聞こえるかもしれませんが、その範囲は幅広いサービスが含まれています。電車やバスといった交通機関で使用するSuicaをはじめとする「交通系IC」、買い物で使用するPayPayをはじめとする「QRコード決済」といった「電子マネー」、また一時話題になったビットコインなど仮想通貨も「デジタル通貨」です。ご使用になる場面も多いのではないでしょうか。

 これら「デジタル通貨」は硬貨やお札など所謂「現金」の代わりとして使用されており、昨今のキャッシュレス化の流れから、今後も利用シーンは増えていくことが予想されます。交通系ではSuica以外にも、PASMOICOCAなど各地域におけるICが存在していることに加え、QRコード決済ではPayPayに他にもau payなど通信会社による決済手段もあり、決済方法、支払方法は多様化、ビジネスサイドもキャッシュレス手段への対応を求められています。そんな中、資金決済法の改正法の施行によりブロックチェーンを活用した新たな決済手段が解禁されました。それが「ステーブルコイン」です。

 本記事では、これまでの「デジタル通貨」の変遷を踏まえたうえで、ブロックチェーンの登場により「デジタル通貨」がどのように変化するのか、日本でも2023年に解禁された「ステーブルコイン」を例に、メリットや課題、法規制、企業動向といった側面から考えていきたいと思います。

2.これまでのデジタル通貨

2-1.電子マネーの登場

 ICカードの技術は1980年代から研究がなされており、1996年にソニーがICカードである「Felca」をリリース、2001年に交通系ICとしてSuicaへ搭載されたのが始まりとされています。そしてSuicaに電子マネー機能が付いた、つまり店舗での買い物に使用できるようになったのは2004年です。その後、交通系ICは駅構内、また駅周辺の店舗を中心に加盟店が増加し、その後は駅周辺以外の小売業者からも導入の希望が相次ぎ、2010年代以降、急速に普及が進んでいきました。

2-2.QRコード決済の普及

 一方のQRコード決済の普及は比較的最近でしたが、きっかけとなったのは20年近く遡る2002年の「Cmode(通称シーモ)」であり、NTTドコモ伊藤忠商事日本コカ・コーラと共同開発した自動自販機システムでした。しかし交通系ICが先に普及したことからQRコード決済の普及は遅れ、所謂「○○Pay」が登場するのは2010年代半ばになります。

 2014年、スマホ決済、QRコード決済の先駆けとなる「LINE Pay」がリリースされました。この頃でもQRコード決済を利用する人は限定的でしたが、2018年には「PayPay」、「d払い」が開始、2019年には政府によるキャッシュレス推進策もスタートしたことに加え、2020以降のCOVID-19の感染拡大による非接触型決済の需要の高まりが、QRコード決済の普及を後押ししました。特に「PayPay」は大規模なキャンペーン施策やポイント還元、カードと紐づけることによる「後払い機能」などユーザーの利便性、利益を大きく高めることで、リリースから5年弱で決済取扱高10兆円を突破、「一人勝ち」とも言われる程の急成長を遂げました。2024年8月時点で登録ユーザー数は6,500万人で、国内人口の2人に1人以上、スマホユーザーの3人に2人が利用している計算になります(「PayPay」の登録ユーザー数が6,500万を突破!)。

2-3.地域通貨のデジタル化

 地域振興策の一環である「地域通貨」にもデジタル通貨は用いられています。「地域通貨」というのはその地域限定で使用できる通貨であり、何かの特典として付与することで地域で使用してもらい、地域経済の活性化につなげる、というものです。もともとは経済対策として1999年に配布された「地域振興券」がきっかけとされ、2000年代に多くの地域で「地域通貨」が誕生しました。当初は「商品券」のように紙による配布が多かったのですが、スマホの普及などにより電子マネー型の地域通貨が増えてきました。2023年現在、日本では2022年末時点で189の地域通貨が稼働していると言われています(2022 年版地域通貨稼働調査の結果について)。その中でデジタル地域通貨の成功例としては、岐阜県飛騨地域の3市町村において飛騨信用金庫が主導する「さるぼぼコイン」が挙げられます。

 地域通貨は地域経済への寄与が期待される一方、通貨として発行・付与するための原資が必要となることや、地域通貨自体では利益を上げにくいなど、その持続可能性には大きな課題があります。そのため稼働しているとされる230の地域通貨のうち、実際に日常で使用され、メリットを発揮できている事例は、あまり多くないと考えられます。

 

3.ブロックチェーンの活用

3-1.ブロックチェーンとは

 ブロックチェーンは取引などの記録・データである「ブロック」を「チェーン」として鎖状につなぐ技術で、このデータは複数のユーザーで同時に共有できるシステムです。特定の管理者がデータを扱うのではなく、すべてのユーザーが同時に管理・確認できるなど権限が分散されていることから「分散型台帳」とも言われます。

 ブロックチェーンが登場したのは2008年、ビットコインの土台となる技術としてその概念が発表されました。翌2009年に初のビットコイン取引が行われましたが、これは政治による経済への介入を好まない、自由で公正に取引の記録が可能なインフラを目指したものだと言われています。

 その後の2013年には、とある国の金融危機では資産の避難先として注目されるなどの出来事からビットコインの価格は急騰。同年に米国では連邦裁判所がビットコインは通貨であるとする見解を発表するなど、通貨、資産として世界中に認識と流通が広がっていくことになりました。

3-2.ブロックチェーンの利点

 ブロックチェーンを活用する利点としては、①改ざんができない、②手続きや業務の効率化が可能、③コスト削減が可能、が挙げられます。

①改ざんができない

 データ(ブロック)はチェーン型のデータ構造を持ち暗号化されており、それぞれのブロックが一つ前のブロックの情報(ハッシュ値)を持っているため、改ざんするためには過去のブロックを遡らなければならず、改ざんのハードルは極めて高いです。この過去の記録・データとの整合性が証明できるという特徴は、取引の透明性の確保や、取引状況の可視化が可能というメリットにもつながっています。

②手続きや業務の効率化が可能

 ブロックチェーンがデータを自動で蓄積していることから、データ・情報管理のデジタル化が可能であることに加え、データを自動処理する技術として、「スマートコントラクト」が登場しました。「スマートコントラクト」は特定の条件下で手続きや取引を自動で実行する仕組みであり、活用により契約の締結など手続きに関する事務作業を減らすことができ、業務の効率化が進むことが期待されています。

 具体的な「スマートコントラクト」により可能なアクションとしては、不動産であれば費用支払い時に自動で権利書を渡すことで契約を自動化、保険業では契約要件を登録しておくことで日献金の支払いを自動化、金融業では個人向けデジタル社債(後述)の発行などが想定もしくは検討されており、契約の自動化・省略化による効率化が可能です。

③コスト削減が可能

 ②で触れた業務効率化や、「分散型台帳」により中央管理システムが不要になることから、業務やシステムに関するコストの削減が可能になります。ただし、実際に企業によるサービスなどで導入、提供する場合、ブロックチェーンに対応したインフラの構築は必要となります。

3-3.ブロックチェーンの用途

 上記の利点を持つブロックチェーンの用途としては、最も知られているのはビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)が挙げられます。2008年にブロックチェーンの概念が論文において発表され、翌2009年にビットコインが誕生し、最初のブロックが生成されました。その後、ブロックチェーンは取引データを暗号化して処理・記録できることから、金融サービスにおいて利用されていきます。本記事では金融サービスにおける用途として、①セキュリティトークン(デジタル証券)と②ステーブルコインの2つに触れたいと思います。

①セキュリティトークン(デジタル証券)

 「セキュリティトークン」はブロックチェーンにより株式や社債など有価証券をデジタル化、トークン化したもので、「デジタル証券」とも呼ばれます。日本でもすでに、この「デジタル証券」の発行による資金調達が実施されています。

・セキュリティトークンのメリット

 従来の有価証券とは異なり証券保管振替機構などの管理が不要で、発行体企業が投資家と直接つながることができます。このことにより、①投資家の興味・ニーズの把握がしやすい、②証券発行コストの抑制、③クーポンやポイントなど「デジタルギフト」を含む多様なリターンを付与できる、といったメリットに加え④証券のトークン化により小額投資が可能であることから、個人投資家など投資家層の拡大が可能という利点があります。

・セキュリティトークンの発行事例―丸井グループの場合

 日本国内におけるセキュリティトークンは、初めての公募が行われた2021年以降、累計で51件、約1,486億円の発行が行われています(2024年12月時点)。そのうち38件と7割以上を不動産セキュリティトークン(不動産)が占めていますが、今回は資金調達の成功事例として丸井グループのケースをご紹介します。

 丸井グループは2022年、公募によるデジタル社債を発行、対象は同社の発行するエポスカードの会員で、購入可能額は1万円から、としました。リターンの利率は1%で、そのうち0.3%が現金、0.7%をエポスポイントで付与します。

 このデジタル社債の大きな特徴は、その資金調達の用途でした。同社はデジタル社債によって調達した資金を再生可能エネルギー発電所の建設や途上国支援など社会問題の解決に充てましたが、これはカード会員の関心を踏まえたものとなっています。700万人以上のエポスカード会員の半数以上は30代までの若い世代であり、アンケートによると社会貢献活動に関心を持つ会員は8割を占めると言います。一方で抱えている課題として、将来に対する経済的不安があることもわかりました。会員の抱える関心・不安を背景に「社会貢献」と「資産形成」が両立できる試みとして、丸井のデジタル社債はスタートしました。

 結果、1回目の発行額は約1.2億円であり、募集枠に対し応募が超過、2024年にも第4弾の募集が行われているなど好評、顧客とのエンゲージメントの強化に成功しています。

②ステーブルコイン

 ステーブルコインは暗号資産(仮想通貨)の一つであり、法定通貨(円やドル)やコモディディなどの価値・価格と連動するように設計されたものです。コモディティとしては、金や不動産などに基づいたものがあります。

 代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインは、価格の変動(ボラティリティ)が大きく、取引によっては大きな利益を得ることができます。その一方でビットコインは暴落や取引所の破綻のリスクもあります。2014年には取引所の最大手「マウントゴックス」が破綻、114億円が消失したこともありました。これらのことからビットコインや暗号資産にはネガティブなイメージがあり、実際に暴落や破綻というケースがあったのも事実ですが、しかしステーブルコインは法定通貨によって担保されているもの(法定通貨担保型)や裏付けとなる資産・商品で価値が担保されているもの(コモディティ型)もあり、ビットコインなどと比べ、暗号資産の中では価値が安定的で低リスクであるという特徴があります。

3-4.日本における法規制

 ご紹介したセキュリティトークンとステーブルコインですが、どちらも日本で解禁されてからはまだ数年です。それぞれ、どのような形式で解禁されたのか、法的にどのように位置づけられているのか、整理していきます。

・セキュリティトークン(デジタル証券)の法的位置づけ

 2020年に改正金融商品取引法が施行されたことで、用語についての定義はありませんがセキュリティトークンは「電子記録移転有価証券表示権利等」、「電子記録移転権利」と位置づけられ、金融機関による取り扱いが可能となりました。前者の「電子記録移転有価証券表示権利等」はブロックチェーン化された株式や社債などの伝統的な有価証券を指し、「電子記録移転権利」は信託受益権、持分会社の社員権、集団投資スキーム持分などを指しています。

・ステーブルコインの法的位置づけ

 2023年の資金決済法の改正により、ステーブルコインが法的に定義され、「電子決済手段」としての流通・使用が解禁となりました。またこの法改正により、ステーブルコインは法律上、決済・支払に使用される「電子マネー型」と、資産としての「暗号資産型」に区分され、資金決済法では「電子マネー型」を規制することになりました。また「電子マネー型」のステーブルコインを発行できるのは、ある程度の裏付け資産の保有が想定される銀行、資金移動業者、信託会社に限定され、安全性・信頼性を担保することが盛り込まれました。

 ただし、仮に企業がステーブルコイン発行を目指す場合、発行者として指定された銀行、資金移動業者、信託銀行のうち、銀行免許の取得は現実的ではなく、資金移動業者(第二型の場合)は100万円までしか扱えないためユースケースによっては向いていないでしょう。そのため、企業による決済など大きな金額を動かす場合は、信託会社として扱うことになると考えられます。

 

 

4.ブロックチェーン・ステーブルコインは日本で普及するか

 世界的に急速な成長を遂げており、日本でも法改正により今後のサービス拡大が予想されているブロックチェーン、ステーブルコインですが、実際に日本でも普及が進むのでしょうか。ステーブルコインを活用するメリット、また課題、企業の動向を踏まえて、考えていくこととします。

4-1.ステーブルコインのメリット

①価値が安定的

 先ほども触れたように、ステーブルコインはビットコインなど他の暗号資産と比べ価値が安定するように設計されています。日本では2014年に、ビットコインの取引所「マウントゴックス」が破綻、114億円のビットコインが消失、暗号資産に対するマイナスイメージが定着したとされています(マウントゴックス破綻 ビットコイン114億円消失)。そのためリスクの低さは提供や保有、利用において重要なポイントとなるでしょう。

②低コスト

 ステーブルコインの最も特徴的なメリットとして決済・送金に関する「手数料の安さ」が挙げられます。
 従来の決済・送金は支払者から金融機関や決済代行業者などを通じて行われ、受取者まで届きます。その過程には各機関における手数料が発生し、負担となり得ます。特に海外送金においては、送金手数料、中継銀行の手数料、受取銀行の手数料などと様々な手数料が発生しています。記事によれば日本の海外送金コストは高く、20%近くとする計算もあるのです(国際送金コスト 日本突出、銀行手数料 米の3倍弱)。
 ステーブルコインは世界中、誰でもアクセス可能なブロックチェーンを活用したものであり、複数の金融機関を中継する必要や外貨に両替する必要がありません。そのため、手数料など送金コストを大幅に抑えることができると考えられています。またブロックチェーン上、つまりデジタル上の取引のため、迅速な送金・着金が可能でもあるのです。

③取引を可視化

 またブロックチェーンを活用していることから取引の流れを可視化できる、というメリットもあります。ブロックチェーン上の参加者間で取引記録などのデータを共有・同期していることから、中央組織の管理によらずとも、取引の流れを確認可能で、透明性を担保することができます。このことから、マネーロンダリングなど不正や改ざんへの対策に有効であるとも考えられています。

 

4-2.企業のサービス動向

 これまでステーブルコインの法律上の位置づけや、利用のメリットについて解説してきましたが、実際の社会にはどのように、展開されていくのでしょうか。既に複数の企業や金融機関が、ステーブルコインそのものや、ステーブルコインを活用したサービスを提供開始、または検討をしているので、いくつか、ご紹介します。

・3メガバンクも参加するプラットフォーム「Progmat

 三菱UFJフィナンシャルグループ開発によるブロックチェーン基盤として2019年に発表、2021年に運用を開始しました。当初はセキュリティトークン(デジタル証券)の発行基盤として始まり、翌2022年にステーブルコイン、NFTにも対応、2023年に株式会社として独立し、主催するコンソーシアム(DCC)にはメガバンクをはじめとする金融機関やブロックチェーン開発企業など300社以上が参加しています。

 Progmatはステーブルコインによる国際送金プロジェクト「Project Pax」を開始しており、既存の国際送金インフラであるSWIFTを活用した送金基盤の構築に向けて実証実験を実施。2025年の商用化を目指すとしていて、メガバンクなど国内の主要な金融機関が関与していることから、商用化が実現すれば、金融業界に与えるインパクトは大きいと考えられます。

北國銀行トチカ

 石川県の地方銀行である北國銀行は、2024年よりステーブルコイン「トチカ」をリリース。「トチカ」は地域店舗での買い物、飲食での利用に加え、個人間送金や交通機関での支払い、医療費や地方税などの支払いへの利用など、「地域通貨」として幅広い用途を想定しています。
 特徴としては加盟店手数料が0.5%であり、他のキャッシュレス決済と比較しても破格の低さであり、地域店舗の負担軽減、地域経済の活性化につながることが期待されています。

SBIトレードによる海外送金サービス

 SBIホールディングスは2025年3月に、ステーブルコインを活用した海外送金サービスの開始を発表、米ドル連動のUSDCの一般向けでの取り扱いを開始しており、低コストな海外送金サービスを先駆けてリリースしています。因みに海外ステーブルコインを扱う国内初の事例となっていますが、日本ではステーブルコインの発行を銀行などに限定していることから海外プレイヤにとって参入のハードルが高いとされ、今後、海外ステーブルコインが日本市場に参入する際の、国内業者との連携によって実現するケースの先例となることも考えられます。

JPYCによる円連動型ステーブルコイン

 国内で先駆けてステーブルコイン(資金決済法の電子決済手段ではなく前払式支払手段)を発行していたJPYCは、資金決済法に基づく電子マネー型ステーブルコインの発行を目指しており、2025年夏にも円に連動したステーブルコインを100億円規模で発行する予定です。その後は1千億円、1兆円規模と段階的に拡大していく想定ですが、実現されれば、国内ステーブルコイン市場が一気に拡大する可能性もあります。

 

4-3.ステーブルコインの課題

 法改正により流通が解禁され、手数料の削減など多くのメリットを持つステーブルコインですが、一方で普及には課題も存在します。

①価値は安定的だが、投資には不向き

 先述の通りステーブルコインは他の暗号資産と価値が比較して安定的です。これはメリットとして挙げていましたが、一方でボラティリティが低く、利益を上げにくい、つまりは投資対象としては向いていない、というデメリットにもなり得ます。

②一般ユーザーにとってのメリットが少ない

 ①と関連するのですが、ステーブルコインは価値が安定的であり、投資向きではないことから、送金手数料の削減を除き、一般ユーザーにとってのメリットが少ないです(企業などビジネスサイドにとってのメリットは大きいですが)。また従来の送金サービスでも手数料が安くスピーディーなものは存在するため、ステーブルコインを活用したサービスを広めていくには、「PayPay」のように一般ユーザーにとってのメリットを提示することが重要になると考えられます。ポイントなどの特典付与も一つのアイディアですが、地域通貨と同様、原資が必要であり、その持続可能性が問われることになるでしょう。

③抵抗感の払拭と知名度・認知度の向上

 ステーブルコインに限ることではありませんが、暗号資産への、また投資そのものへの抵抗感は普及の足かせになることも予想されます。実際、ステーブルコインの認知度向上は課題になっており、2節でご紹介した北國銀行の「トチカ」も先進事例とされながらも、利用が伸び悩んでおり、背景として「認知度」が挙げられていました(デジタル地域通貨苦戦 北國銀、4月で提供1年 利用、加盟店数目標遠く)。

 SBI金融経済研究所の調査(次世代金融に関する一般消費者の関心や利用度に関するアンケート調査、第2回)によると、日本人におけるステーブルコインの認知度は対象者の6%(米国25%、中国23%)であり、ステーブルコインに対する認識として多いのは、「わからない」が約2割、また「印象がない」が半数近くを占めていることがわかっています。この調査では日本人の対象者のうちデジタル金融商品の投資もしくは保有経験者が3分の1程度占めていることを考えると、ステーブルコインについて認知度のみならず、知識や経験の少なさ、また投資意向の低さは明らかと言えるでしょう。

 

おわりに―デジタル通貨のこれから

 2000年代に始まったデジタル通貨は、交通系ICやQRコード決済などが登場し、キャッシュレスの浸透やCOVID-19の拡大により、より一般的なものとして普及してきました。そこにブロックチェーンという新たな技術が登場し、世界的に市場としての成長が予想されていますが、日本では法規制に基づき、比較的慎重に導入・運用が進んでいくと考えられます。管理者を必要とする中央集権的な従来のシステムに対し、ブロックチェーンは各ユーザーによる管理・アクセスを可能とする分散型台帳ですが、日本の法規制はステーブルコインの発行を銀行など一部機関に限定することで、中央管理者が不在になり得るという特性に対処しています。これからのデジタル通貨の普及には、ステーブルコインに限らず、暗号資産に対するイメージを踏まえつつ、コスト削減など各ステークホルダーにとってのメリットの発揮と、安全性・信頼性の確保を両立することが不可欠となるでしょう。

 

 

【参考】

 

三浦 洋人

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト