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デジタルマーケティングに欠かせない”ターゲティング”とは

 

近年高まるデジタルマーケティングの需要

現在も多くの国で猛威を振るっているコロナウイルスによって、デジタルマーケティングの需要は高くなりました。Criteoの調査によると、6割近い企業が、コロナを経て売上が減少したと答えています。

また、マーケティングチャネルのうち、昨年よりも投資額が増えたと答えたのは、バーチャルイベントやAmazonといったオンライン上でのマーケティングとなっています。

つまり、コロナの影響で減益した企業が多数存在しており、かつ各企業のマーケティング活動の動向としてデジタル化が進んでいる、ということが言えます。そのため、企業はデジタルマーケティングを理解した人材の育成を直近の課題と捉えていることが推察されます。

そこで、本稿ではデジタルマーケティングの流れと、初歩として押さえるべきスキルと言える“ターゲティング”について解説をしていきます。

もちろん、デジタルマーケティングにはKPIの設定などを含めた多くの要素がありますが、平易にデジタルマーケティングとターゲティングを理解してもらう目的で、細部は省略して解説を進めていきます。

詳しくは、以下のブログをお読みください。

なお、本稿の想定読者はデジタルマーケティングの知見が全くない方です。カスタマージャーニーマップやAIDMAを初めとしたフレームワークの解説は行いませんので、ご了承ください。

 

デジタルマーケティングの全体感を認識する

デジタルマーケティングと一言で言っても、見込み顧客の状態に対応した様々な手法があるので、デジタルマーケティングの基礎と言える全体感を押さえていきます。

ご自身の日常的な購買行動を思い出すと分かりやすいですが、サービスの購買時には大きく“商品を知り”、“興味を持ち”、“買うかどうかを検討する”、というステップを踏むと思います。デジタルマーケティングにおいても、顧客は同様のステップを踏んでいるため、デジタルマーケティングは”製品をもっと知ってもらうための活動”と認識して大丈夫です。

ことBtoB領域におけるデジタルマーケティングにおいては、それぞれのステップに合わせて「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「フィールドセールス」を行っていきます。それぞれ、認知⇒関心⇒購買検討のステップとなっており、BtoCの購買ステップと似た形で表わされるため、今回はBtoBマーケティングの例を参考に、デジタルマーケティングの全体観を押さえていきます。

なお、全体観を知るために全てのトピックに触れますが、本稿で取り上げるターゲティングの要素が大きく関係するのは「リードジェネレーション」の部分となります。

リードジェネレーション

リードジェネレーションは、製品を知らない人に向けて、製品を知ってもらう行為全般を指します。また、ここで出てきた“リード”は見込み顧客のことを指しています。

リードジェネレーションの手段は、皆さんがよく見るテレビやYouTubeでの広告や、製品紹介を行うWebサイトなどが分かりやすい例となります。一般的に、この段階では見込み顧客の個人名や連絡先などを特定できていないため、広く不特定多数の人に対して情報を展開し、製品の認知獲得に動きます。

リードジェネレーションを通して製品を認知した見込み顧客に対しては、リードナーチャリングを行っていきます。

リードナーチャリング

リードナーチャリングは、製品を知った見込み顧客に対して、より詳しい情報を提供して関心を高めることを指します。なお、マーケティングに知見がある人と話す際には「リードを温める」「リードを育てる」などの表現をされる部分になります。

気になる製品の資料をダウンロードする際に、メールアドレスや電話番号の入力を求められたことがあると思いますが、そのメールアドレスはリードナーチャリングのために収集されるものです。

「製品の詳細な情報を伝えます!」というメールが届いたり、「どういった背景で資料を請求されましたか?」と電話で伺いを立てたり、といった行為がリードナーチャリングの最たる例です。

この段階で、製品への興味を強く持った見込み顧客に対しては、フィールドセールスを行います。

フィールドセールス

フィールドセールスは、見込み顧客と商談を行うことを指します。商談時には、製品紹介や導入についての話を進めていきます。

最近ではオンラインミーティングツールを用いた商談が当たり前となっていますが、オンライン/オフラインを問わず、商談を行う際はフィールドセールスという呼び方でまとめることができます。

ここで見込み顧客に対して良い提案をすることが出来れば、顧客獲得へとつながります。

以上が、デジタルマーケティングの大まかな流れになります。

次の章では、デジタルマーケティングの初歩、「リードジェネレーション」に必要となるターゲティングについて解説していきます。

 

デジタルマーケティングの結果を左右するターゲティングとは

ターゲティングは、リードジェネレーションで必要なスキルです。端的に言うと、ターゲティングとは「どんな人を対象にするか」を指しており、ターゲティングの要素は性別や年齢などの基本属性や、企業内の部門や役職といった社会的地位など、多くの要素を挙げることが出来ます。

上記以外にも、ターゲティングには多くの要素があるため、総じて「自社にとって購買に1番つながる対象を特定する能力」を養う必要があると言えます。そのためには、自社製品の理解と、それを購買する層を理解する事が前提として必要となります。

弊社サービスであるコンサルティングを例を出すと、サービス特性は「様々な業界/企業の課題を解決出来るが費用が高い」であると考えられるので、「高い費用を出せる大企業」かつ「企業経営に課題を感じる経営者、経営企画室の人間」というターゲット像が浮かびます。

この流れをターゲティングと呼び、デジタルマーケティングにおける初歩的かつ重要なスキルであるとしています。

ターゲティングは、顧客獲得の第一歩となるリードジェネレーションにおいて羅針盤の役割を果たすため、ターゲティング無くしてデジタルマーケティングは成功しない、と言う事が出来ます。

なお、ターゲティング後にマーケティング施策を実践した上で、思った効果が出ない場合もあります。そういった場合は、効果測定を行った上で原因を特定することが大切になります。そもそもターゲティングが間違っているのか、それとも施策が間違っているのか、見るべきポイントは様々あります。しかし、データを取ることで原因が明確になるため、予めデータ分析を行うイメージを持っておくとと良いでしょう。

こうした背景から、初期の段階では見えにくいターゲットの特性に応じて、仮説ベースで施策をぶつけることも求められます。マーケティングの土台となるターゲティングについても、最初は仮説で動くことになるため、PDCAを回して改善し続けてリード獲得に繋げる姿勢が重要です。

 

具体的なターゲティングの優良事例

最後に、BtoB、BtoCの両分野で、ターゲティングに成功した企業の取り組みを紹介します。こちらをヒントに、ターゲティングにおける仮説立ての感覚を養っていただけると幸いです。

BtoBの観点で紹介する企業は、株式会社マネーフォワードです。

マネーフォワードはBtoCのみならずBtoB向けの製品を多く展開しており、クラウド上で会計や給与計算、社会保険などの業務が行えるSaaSを提供している企業です。

その特性上、ターゲットは会計/財務といったバックオフィス業務の担当者となります。そこで、バックオフィス業務担当者が関心を持つと考えられる経費精算や確定申告といったトピックの記事を連載し、ターゲット層を読者として呼び込むことに成功しました。この記事をまとめた「Money Forward Bizpedia」というオウンドメディアは、月間PV数100万を越えるほどの読者が存在し、マネーフォワード自体の認知度を高めるための仕掛けとして効果を発揮していることが伺えます。

この事例でも、先述したターゲット理解が基になっており、ターゲット層のニーズを拾う形でコンテンツを提供しています。その結果、ターゲット層が記事の読者としてサイトを訪れるため、認知拡大のきっかけづくりに成功していると言えます。

Money Forward Bizpedia

 

BtoCの観点で紹介する企業は、マンダムです。

マンダムは「GATSBY」というブランド名で、男性向けのヘアスタイリング剤やスキンケア用品を展開する企業です。スキンケア用品においては、ニキビを始めとした男性によく見られる肌トラブルを抱えた層をターゲットにしてきました。

しかし、消費者への意識調査により、若年層の男性には肌トラブルの解消だけでなく、清潔感のある見た目を重視する、という新しい特徴を掴みました。

そこで、清潔感を意識する若年層男性をターゲットとして、サイトに呼び込む仕掛けを作りました。

具体的な仕掛けとしては、女性への恋愛に対するアンケート結果や、就活に関するアンケート結果を掲載することで、より若年層が見た目に意識を向けるようにサイト作りを行いました。このサイト作りによって、ターゲットがスキンケア用品に関心を持ち、そのままGATSBY製品を閲覧する流れを作りあげたと考えられます。

GATSBY

 

上記2つの事例では、1つ目は記事をアップし自社サイトへの経路を確保する、2つ目は特設サイトを作成して関心を高める、という仕組みを作っていることが伺えます。多くの企業では、こうした記事のアップロードやサイト作りなどを含め、製品や企業を認知してもらうための発信を日々行っています。

このような取り組みを行うことで、ターゲットへの訴求はもちろんのこと、現段階ではターゲット外である将来的な顧客にも訴求が可能となるため、多くの企業が取り組むべき内容と言えるでしょう。

また、発信方法は事例で取り上げたサイトだけではなく、各種SNSやYouTubeといったあらゆるメディアを用いることが可能です。が、年代や性別によって適切なメディアは異なるため、やはりターゲティングが先に求められることとなります。そのため、まずはターゲティングを行うために自社製品と顧客に対する理解を深めて、適切なターゲティングにチャレンジすることが良いと考えられます。

いずれにせよ、まずは「やってみる」ことが求められるのがターゲティングですので、ぜひ早期からターゲティングを実践して、経験を多く積んだうえで適切なターゲティングを身に付けてください。

 

 

【参考文献】

伊藤悠真

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。大手/中小企業での新規事業策定支援、営業戦略に関する実行支援、M&Aにおけるソーシングなど、幅広い支援実績を保有。