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今さら聞けないD2Cについて(主要プレイヤーとその施策、取り組みの傾向など)

はじめに

D2Cとは、”Direct to Consumer”の略であり、企画・生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず消費者と直接取引するビジネスモデルを指します。
SNSECサイト、直営店舗などで消費者とコミュニケーションをとって、生産した商品を販売します。
アパレルや美容化粧品のブランドで多く見られるビジネスモデルではありますが、近年では様々な業界がD2Cのビジネスモデルにチャレンジしようとしています。
この広がりを示すものとして、ネット広告コンサルティング企業である売れるネット広告社は、ネットメディアを通じて自社ブランドの商品を消費者に直接に販売する事業と定義したうえで、2019年の市場規模を推計し、2025年までの年間の国内市場規模が3兆円に達するという予測を発表しています。

https://ecnomikata.com/ecnews/27562/

 ここではD2Cビジネスに取り組む主なプレイヤーとそのトレンドを見ていきましょう。

 

D2C事例

D2Cのビジネス取り組むプレイヤーをいくつかご紹介します。

  • Warby Parker
    • アイウェアブランドで知られるWarby Parkerは、オンラインをベースとしたサービスを展開しています。
      同社が提供するサービスである「HOME TRY-ON」は、好きなアイテムを最大5つまで無料で5日間借りることが出来るというものです。他にも試着専門のリアルショップを米国で展開しています。ここではブランドの世界観を体験する場として、オンラインで販売している商品を体験するためのショールームとして位置づけられています。
      商品を購入する際には店舗スタッフがPCを使ってECサイトにアクセスし、注文を行います。
      これによりECサイトでの購入を体験したことがないものの、ECサイトに抵抗を感じている客層も取り込めるといったメリットがあります。


HOME TRY ON
https://www.fashionsnap.com/article/2016-07-08/warbyparker/

  • Casper
    • Casperは、「マットレスの買い物は複雑すぎて選べない」ことが課題であることに着目し、『1つのモデル』のみを提供することを特徴的とするビジネスを展開しています。
      その他にも、睡眠をトラッキングするアプリや睡眠をサポートするチャットボットなども開発しています。また試作品デモに利用者を呼び、フィードバックを得て製品開発に生かしています。
      過去にはお昼寝用ポッドがある車両「Napmobiles」で、米国各地をまわって利用者に体験してもらうイベントを行っていました。


Napmobiles
https://www.eventmarketer.com/article/casper-mobile-nap-tour/

  • FABRIC TOKYO
    • FABRIC TOKYOは、オーダーメイドのビジネスウェアを提供するアパレルブランドです。
      同社はECサイトで利用者自身のサイズを入力し、オーダメイドスーツを注文することできます。当初は利用者自身で測ったサイズを入力するシステムだったものの、「オフィスに行くのでサイズを測ってもらいたい」という要望が多く、予約制で採寸するサービスを実施するようになりました。
      その後、採寸と試着のために利用するポップアップストアを全国各地でオープンするようになりました。


FABRIC TOKYO有楽町
https://fabric-tokyo.com/

  • EVERLANE
    • アパレルブランドであるEVERLANEは、販売している洋服の原価や製造工場、材料費、法制日、関税、輸送費の具体的な額を掲載しています。また、従来の商流を想定した価格との比較も合わせて表示しています。その他にも製造工場の従業員の写真や天気などを公開し、透明性にこだわったビジネスを展開しています。
      同社は、ブロガーや顧客が商品をレビューするページを設置しています。オープンスタジオというイベントで顧客をオフィスに招待し、お酒や食事をしながら歓談するイベントなど顧客との深いつながりを作るための活動を積極的に行っています。その他にも講演活動を実施し、ビジョンやメッセージを伝える活動も積極的に行っています。


Open studioの様子
http://www.bicoastalista.com/blog/san-francisco-everlane-open-studio

  • Glossier
    • Glossierは、セレブや著名な女性にメイクについてインタビューを行い、その内容を親しみやすいように書くブログ「INTO THE GLOSS」を通じて顧客とのコミュニケーションを行っています。
      同ブログは毎月約150万人のユーザーが訪れており、同社の強みになっています。また、Instagramのハッシュタグを利用して、お気に入りの製品についてのシェアやファン同士で化粧品の使い方について質問するとコミュニティ内で誰かが答えてくれるようなファン同士の交流が積極的に行われているようです。
      回答した人は参考にと自撮り写真(セルフィー)をシェアしてくれることも多いようです。


INTO THE GLOSS
https://intothegloss.com/

  • Prose(プローゼ)
    • Proseはユーザーアンケートを行い、回答によって成分をカスタマイズしたシャンプーを提供しています。アンケート項目は年齢、髪質、洗髪の仕方や頻度、理想像、生活習慣、居住地域の気候(気温、風、天候など)などからなります。これらにより同社独自のアルゴリズムから成分をカスタマイズし、ユーザーに最適なシャンプーを提供します。


Proseのサイト上にあるアンケートページ
https://prose.com/

  • Hims & Hers(ヒムズ・アンド・ハーズ)
    • Hims & Hersは、オンライン医療サービスを提供しています。当初は勃起障害(ED)や脱毛などの男性をターゲットとした医師によるオンライン医療と処方薬を自宅へ配送するサービスを提供していましたが、その後女性向け避妊薬を販売するサービスとしてHers(ハーズ)も提供し始めるだけでなく、電子健康記録(HER)や、オンライン薬局などにも取り組んでいます。会員は月額20~30ドル(約2100~3100円)の定額料金を支払えば24時間・週7日オンラインで医師の診察を受けることができ、さらにジェネリック医薬品を処方・配送してもらうことも可能です。
      コロナ禍によりオンラインによるサービスに脚光を浴びるようになったこともありますが、同社の場合EDや脱毛、避妊といったFace to Faceで診断を受けることに対してややハードルが高いと感じる分野において、医師による診断をオンラインで提供することでハードルを下げる効果があると考えられます。

 

D2Cにおける取り組みの傾向

提供する商品や、サービス、業界も様々ですが、各プレイヤーの取り組みを俯瞰してみると、以下の3種類に整理することができます。

  • 体験型
    Warby Parkerなどのように商品を期間限定無料でレンタルすることで、商品を手に取って体験することで顧客体験が改善されます。無料でレンタルすることができなくてもポップアップストアを設置して、WEB上で見た商品を実際に手に取って体験してもらうことも施策として考えられます。一方で近年では、ARなどのツールを利用することで実際に商品を家の中に置いている状態を疑似的に体験することや、試着した自分の姿を見ることもできるようなサービスを提供するものもあります。 
  • パーソナライズ型
    AIなどのツールを利用して顧客の情報から趣味趣向を分析し、顧客が求めるサービスを提案するデータドリブンなサービスを提供することで、顧客体験が改善されます。
    また、専門的な知識が求められるものに対しては実際に手に取って(試着して)みたうえで、専門知識を有するスタッフからアドバイスを得ることもできます。
    顧客の情報から分析するものであれば先ほど紹介したProseの他にも、「Function of beauty」(ファンクションオブビューティー)、国内では、ユーザー自身が約2万通りのカスタマイズから選ぶシャンプー&コンディショナー「mixx(ミクス)」などがあります。
    また、専門知識を持ったスタッフからのアドバイスを受けることができる点でいうのであればFABRIC TOKYOやHims & Hersなどが挙げられます。 
  • コミュニティ型
    オウンドメディアや専用のSNSなどを活用して、特定のブランドについて理解を深めることができるコミュニティを構築していきます。
    SNSだけでなく、リアルイベントを通じて商品や特定のブランドについて理解を深めていく取り組みなどもあります。
    オウンドメディアではGlossier、リアルイベントではEVERLANE、過去の取り組みではCasperなどもここに挙げられます。

まとめ

D2Cは企画・生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず消費者と直接取引するビジネスモデルですが、そのビジネスモデルを生かす施策を打つことがD2Cのポイントです。
ここで重要になってくるのが、「顧客体験を高めることでブランドロイヤルティを強化する」ということです。
このための施策として、ユーザーに対してサービスを「体験」させたり、顧客のデータから「パーソナライズ」したサービスを提供したり、SNSを利用した情報の発信だけでなくブランドについて理解を深める「コミュニティ」を構築したりすることで、顧客体験を高めてブランドロイヤルティを強化させていると言えるのではないでしょうか。

 

弊社におけるD2Cの取り組み

弊社では株式会社アイレップとの協業により、マーケティングコミュニケーションのコンサルティング、製造まで一貫して対応するサービスを提供しているだけなく、同社が運営するデジタルマーケティングをテーマとしたメディア DIGIFUL(デジフル)での弊社取締役吉田のインタビュー、ウェビナーなど精力的にD2Cに関する活動を行っております。

DIGIFULに当社取締役吉田のインタビュー記事が掲載されました
株式会社アイレップが運営するデジタルマーケティングをテーマとしたメディア DIGIFUL(デジフル)にて、当社取締役吉田のインタビュー記事が掲載されました。 「テクノロジーでブランドを作り上げる、D2Cカンパニーとしての新しい挑戦」 ぜひご高覧ください。
プレスリリース公開:アーツアンドクラフツ、購買体験の質を高めるD2Cサービスを開始
~アイレップとの協業により、マーケティングコミュニケーションのコンサルティング、製造まで一貫して対応~https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000013986.html​昨今、企業が消費者と直接つながりモノやサービスを提供するD2C(Direct to Consumer)が注目されるなか、ECサイトで販売する企業だけでなく、実店舗を持つ企業のD2C領域への事業参入も加速しています。また、OMO(Online Merges with Offline)※1の取り組みも増え、個人の嗜好やニーズに対応した商品開発やものづくりの重要性も高まる状況下で、一貫性あるブラ...
アイレップ主催ウェビナーにて当社取締役吉田が講演いたします
株式会社アイレップ主催のオンラインセミナー「D2Cビジネスを成功に導く最新事例&戦略ウェビナー」におきまして、当社取締役 の吉田が講演いたします。セミナー詳細 2020年12月2日(水) 14:00〜15:00 「D2Cビジネスを成功に導く最新事例&戦略ウェビナー」 詳細・お申し込みはこちら 本ウェビナーは、アーツアンドクラフツ株式会社が運営するWELL新宿三丁目スタジオにて開催されます。 

D2Cのお悩みについても、弊社では随時受け付けております。

 

参考
ECのミカタ「デジタルD2C市場は2025年に3兆円規模へ」
FASHIONSNAP.COM「NY発アイウエアブランド「ワービー・パーカー」がファッショニスタに支持される5つの理由」
MORILOG「2年目で売上100億円の衝撃。マットレスD2C「CASPER」の勝ちパターン」
eventmarketer「CASPER DREAMS UP A MOBILE NAP TOUR」
Agenda note「FABRIC TOKYOの成長と失敗。オーダメイドスーツのD2Cは、なぜ成功したのか」
FABRIC TOKYO HP
TO NINE BLOG「原価も工場もすべて見せる『透明なブランディング戦略 ー EVERLANE』」
Bicoastalista「San Francisco: The Best Party in Town」
note「〜Glossier〜【NY発D2Cコスメ】」
D2Cコスメブランドの雄・Glossierから学ぶSNSコミュニケーション戦略
INTO THE GLOSS
Prose HP
カスタマイズ・シャンプー〜デジタルシフト未来マガジン〜
Forbes「医療D2Cの米Hims & Hersが上場 創業3年で評価額16億ドル」

藤本光佑

アーツアンドクラフツConsulting & Solution事業部/アナリスト。得意分野は決済事業、IoT、エネルギーなどの事業戦略の提案や、それに伴う調査