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マーケティング会社とは? 提案書から本物かどうかを見分ける方法

はじめに

 テクノロジーの発達に伴い、あらゆる消費者行動にデジタルが介在するようになった。その結果、事業会社の業績とデジタルの結び付きは強くなり、デジタルの役割は重要なものへと変わっていった。それと並んで、広告代理店という業種が台頭し始める。当時の広告代理店は、主にWeb広告に主軸を置き、事業を拡大していく。Google検索の上位表示を狙うSEO対策や、ユーザーの検索ワードに沿って広告を掲載するリスティング広告。自社HPCV率向上を図る導線改善といったサービスが挙げられる。しかし、近年では消費者のITリテラシーが向上したことや、多くの企業が同様の取り組みを行っていることから、上記のサービスを行うだけで、効果が出るものではなくなっており、より本質的な点について検討することを求められるようになった。

 それに伴い、広告代理店もWeb施策のみならず、マーケティングまで範囲を拡大し、包括的なサービス提供を行うためにケイパビリティ強化に取り組み始める。しかしながら、このケイパビリティを獲得するのは非常に難しく、広告代理店のままないしは、マーケティング会社と謳っているものの、実際はリサーチ会社や広告代理店であるといったケースが多く見受けられる。筆者も広告代理店出身であることから、なぜそのケイパビリティを広告代理店が得られないのか、経験を基に紹介していく。また、マーケティングを外部に委託しようとしている担当者の方へ、本物のマーケティング会社の見分け方を一例紹介したいと思う。

 

広告代理店の実態

 筆者は、新卒で広告代理店に入社した。コンサルティング会社に憧れはあったものの、中堅の大学卒である筆者では、当時手の届かない職業であった。大学のゼミで、経営戦略やブランド戦略など戦略系を学んでいたこともあり、少しでもそれに関わる仕事がしたいと思い、Webコンサルタントという職業に応募したのが、きっかけである。当時の広告代理店の多くは、SEO対策が主な提供サービスであった。外部リンクを多く張り、Google検索の上位に表示させる施策である。次にリスティング広告やアクセス解析などが、サービスの主軸へと移行していくのだが、テクノロジーの急速な進化により、広告業界のボリュームは非常に大きくなっていった。また、PCでの作業がメインであったことも多少関係あるかもしれないが、ベンチャー企業でかつ、新しい業界で急速に売上を伸ばしているなどからか、働き方も大手の企業とは異なるケースが多かった。

 そのような環境の中で、広告代理店に所属するメンバーの評価体系はどうなっていたかというと、「粗利」至上主義であった。粗利を求めることが悪いとは全く思わないが、筆者の入社した広告代理店では、営業であろうと・コンサルタントであろうと「粗利」が社内評価で重要な指標となっており、新規顧客を獲得するか・既存顧客を獲得するかに主軸が置かれていた。そのため、毎月どのようにして数字を達成させるのか・既存顧客からどのようにしてアップセルをもらうのかのストーリーを考えることに時間を多く使い、早朝には録音研修といってコミュニケーションの仕方や営業のストーリーについて、スキルアップを行う取り組みがなされていた。

 決して、このような取り組みが悪ということではなく、筆者が申し上げたいのはマーケティングの観点がこの広告代理店には、さほど無かったことである。営業に強化していたこともあったが、その他の代理店であってもマーケティングの観点が多くは無いと感じていた。当時の業界では、まずマーケティングの全体像から入るのではなく、Google AdWordsの使い方やAnalyticsの見方など、運用から学ぶケースが多かった。そして、それらを学んだ後にWebコンサルタントは、20~30社の顧客を抱えて運用していくこととなり、本来求められているマーケティングとしての観点を失ったまま、Web施策の運用を行っていく。また、効果測定すべき指標は多岐に渡ることも兼ねて、当時外部リンクやリスティング広告を行っているだけで、効果が出ていた時代であったため、経営指標とリンクせずともそれなりに事業拡大を可能としてしまった。そして、大手もカウンターとなるマーケティング部門はWeb施策を検討/実行する部隊として考え、プロダクト開発部門や経営企画部と一線を引く形となってしまったと思われる。

 

提案書からマーケティング会社であるかどうか見分ける方法

 本来のマーケティング会社では、顧客像の把握をないがしろにするケースは少ない。しかし、広告代理店などは、このあたりをさらっと終わらせる傾向にある。なぜなら、顧客を理解するケイパビリティが欠けているからである。もしくは、案件の依頼性質上、そもそも論となるような本質的な部分には触れられない。基本的には、ヒアリングシートによって顧客単価や粗利などの把握・他社との差別化ポイントなどをヒアリングし、それに沿って広告文やキーワード選定などを行っていく。概観を理解するためには、非常に重要であるが、顧客を深く理解し、マーケティング戦略まで落とし込むためには、やはり顧客分析を深く行う必要がある。(参考: https://www.arts-crafts.co.jp/post-7774/)

 この点については、事業会社のマーケティング部でも見落としがちであると思う。例えば大手化粧品会社が、コスメECに商品を掲載しており、ECでの広告戦略立案支援を依頼されたケースを紹介したいと。もちろん年間の売上高や広告予算はすでに決まっており、その中でECサイト内において、●●億の売上を期待しているので、それに合った広告戦略を立案して欲しいというものだった。戦略部分は大手の総合広告代理店が担っており、その方針に沿って広告施策を検討するといったものだったが、降りてきたものは目標数値と予算、そして推し商品・キャンペーン商品のみだった。

 規模が大きくなると、トラフィック量を増やすことに注力されがちであるが、施策に入る前のSTP分析/RFM分析などが大きく施策の成果を左右するといっても過言でないと思う。何の商品は、リピート率が高いのか。リピーターは初回に何を購入して、次に何を購入するのかなど、顧客を深く理解し、マーケティングの方向性を定めてから広告施策に落とし込むことが重要である。

 おそらく、別の部門にて把握したはずのSTP分析が他部門に浸透していないこともある話だが、(よくあるのが、ブランド部とマーケティン部の間に共通認識が無い)自社の顧客を理解できていない状態で、施策を検討してしまうと、それは新規顧客を増やすことなのか・客単価を向上させたいのか・それともリピート率を向上させたいのかといったように、何を目的とした施策なのか、分からないままスタートし、結果的に他社も含めた伝言ゲームにより、さらにその施策の意図がぼやけ、結果的に失敗へと繋がっていく。

 以前、HPリニューアルについても述べたことがあったが(参考: https://www.arts-crafts.co.jp/5824-2/)、既存HPからの改善や現状の広告施策からの改善案だけでなく、本質的な部分(新規顧客が課題なのか・既存顧客が課題なのか・パッケージデザインが課題なのか・商品棚の位置が課題なのか)について現状・課題を把握して、それに対して打ち手を講じるようなステップにて進めていくことが重要である。そのため、マーケティング会社へ依頼をしたい場合には、現状把握から戦略構築の部分がどこまで具体的に提示されているのかを確認してもらえればと思う。現状の施策に対する課題から改善案を提示するものではなく、何を改善すべきなのかそれによって何が改善され、経営にインパクトをもたらすのか、それを何の広告施策で改善を図るのか、このようなストーリーが無いものには、注意していくべきだろう。

鈴木裕哉

アーツアンドクラフツ Consulting & Solution事業部/シニアマネージャー
新卒で広告代理店に入社。Webコンサルタントを経て、2015年当社に入社し、C&S事業部の立ち上げに参画。多岐に渡る業種、分野のプロジェクトを経験し、戦略から実行まで支援をしてきた。クライアントの期待値を超えることを前提とした、コンサルティングを常に心掛けている。


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